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一時間三題噺  作者: 蒼亥
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「旅行」「幽霊」「虚構世界」

「夏休みだー!!」

テストが終わり、俺たちは学業から一時的に解放される。

「どうする?何するよ!」

「旅行行こうぜ」

俺、中島、吉田の三人は後先を考えない性格だ。やると決めたら進む。そんな性格だった。

「あ、そういえばこの島行ってみない?」

「なんかあるん?」

「ほら、この前アニメが終わった聖地」

「あー、面白そうだな。」

「よし、そこに決めた」

決まってからははやかった。僅か3日で必要なものを集め、その週のうちに島へと旅行に行くことにした。

今回の旅行は1泊2日。

今年が学生最後の夏休みなのもあって、今回だけじゃなく、あと2回くらいは旅行に行こうと考えていた。

「おー!良い景色!」

「おー!坊主。この島は始めてか?」

「はい。そうです。」

島へは船で向かっていた。俺たちの話が近くにいた人にも聞こえていたそうで話しかけてきた。

「ここはあまり面白いモンはねぇがゆっくりしていってくれ。」

「はい。実は今期やっていたアニメがここが舞台だって聞いたので面白そうだしいってみようって来たんです。」

「そうだったのか。…楽しんでってくれや。」

「はい!」

「あ、そうだ。忘れてた。」

そう言うやいなや、さっきまでの気楽な雰囲気と違い真剣な顔つきで話しかけてきた。

「夜の街には繰り出すな。虚構世界に連れてかれるぞ。」

「え?それはどういう…」

「俺は忠告したからな。」

そう言うと、彼は船舶から去って行った。


「見ろよ!まじで同じじゃねぇか!」

俺たちは島に着くなり、旅館に荷物を置き、当たりを散策することにした。

島はあまり大きくはなく、二日もあれば全部回ることも問題なかった。

「それにしても…」

何処の景色を見ても、アニメと遜色がなく、実はアニメじゃなくて実写でしたか?といわんばかりに似ていた。

この島であったことをアニメにしたのだろうか?

という違和感を覚える。まぁ、登場人物がどう考えてもイラストだったのでそんなことはあり得ないと思うが…


「ごちそうさまでした。」

「お粗末様でした。」

夜になり、観光を切り上げて旅館に戻り、夕食を食べた。

ここは1泊3000円くらいの宿で飯に関してはあまり期待していなかったにもかかわらず、とても美味しく、とても満足した。

「そうだ、お客様。」

「はい?」

「今後、朝まで外に出るのをお控えください。虚構世界に連れてかれますので」

「えっと…それはどういう…」

「それでは失礼いたします。」

そうして、船で聞いたことと同じ言葉を残して去って行った。



「肝試し行こうぜ。」

夕食を終えた後、風呂に入り一時間ほど喋っていると中島がそう提案してきた。

「いや、外に出るなっていわれたばっかだろうが…」

「でもでも、あそこまで言われたら逆に気になるだろうが…」

「まぁ、確かに」

中島と吉田は結構乗り気だが、俺は不安だった。忠告、虚構世界。

旅館内部にWi-Fiがないのもそうだ。なんだかここは別世界のような気がする。

まぁ、そんなわけ無いか…

「んー、じゃあ行くか…」

俺はしぶしぶ了承して夜の町に繰り出すことにした。


「んで、何処散策する?」

「ん?…んーそうだな…新しい場所ってのも迷いそうだし、灯台いって帰ってくるぐらいにするか」

俺たちは懐中電灯を持ち、歩く。

何故懐中電灯を持っているかって?

この島には電灯がないのだ。まるで、夜に外に出歩くなんてあり得ないといわんばかりに。

しばらく歩いていると懐中電灯の調子が悪くなってきた。

「あれ?おかしいな…」

「元々電池悪かったっけ?」

「いやぁ…新品のものにしたはずなんだけどな…」

そうして、まぁ、調子悪かっただけかななんて思いながら灯台のほうに歩いて行くと全員の懐中電灯が消えた。

「は?」

「あれ?」

そして、

ヒタ、ヒタ、ヒタ…と明らかに自分たちとは違う足音が聞こえ始める。

「おいおいおいおい…」

「に、逃げるぞ!」

俺たちは旅館の方には向かわず、いや、迎えず無我夢中で走り出す。

明らかにヒタヒタという足音は増えていき、後ろを振り向くことが出来なかった。

次の日に行こうと考えていた場所まで向かうくらいには走っていた。

「虚構世界って何だ?」

「ていうかコレ、アニメそのものじゃねぇかよ!!!」

ここの聖地となったアニメはホラー系統で、夜の街に出ると自分に似た幽霊に出会い、それに出会うと身体を乗っ取られ、元いた魂は神、幽霊、怪異が住んでいる虚構世界に連れて行かれるというものだった。

そのアニメは昼も夜も関係なくそれが出歩いていたが、主人公たちのおかげでその存在は夜の世界のみ存在するようになる。

だとすると、

「やばいやばい。帰ろう!旅館の方に!!」

「う、うわぁぁぁあああ!!」

振り返るとそこには、中島と同じような姿をした…ドッペルゲンガーのような存在がいた。それは中島を取り込み始める。

「吉田!!逃げよう!!」

「ぁ…あぁ…」

腰が抜けている吉田を無理矢理引っ張り上げ、旅館をめがけて走り出す。その間も、足音は響いており、無我夢中で走る。

無我夢中で走っていると

前に人影を見つける。おれは助かったと思い、それに話し始める。

「すみません!助けてください!友人がなにかわからないものに襲われか…」

最後まで話すことはなかった。そう、それは吉田だったのだ…

じゃあ、つかんでいるこの手は誰のもの??

「違う…前のそれは…ドッペルだ…」

え?と振り向いた瞬間。それは振り向いた先の吉田に襲いかかる。

俺は心の中で吉田に謝り、旅館へと急ぐ。

急ぐ。急ぐ。急ぐ。

旅館に着いた後は、すぐに部屋に戻り、布団の中に潜り込む。

見つからないよう、部屋の電気もつけず、

ヒタ、ヒタ

足音が近づく。

部屋の前で止まる。

俺はガタガタと身体を震わせながら心の中で「はやくされ、はやくされ」と唱える。

そして、ヒタヒタという足音は遠のいていく。

ほっと一息つき布団を剥がすと目の前に俺がいた。

「ぁ…ぁ…」

そうして俺は…いや、私は?僕は?…まぁ、なんでもいいか

そうして俺は目の前が真っ暗になった。


朝、目が覚めると近くに吉田と中島が寝ていた。

「なんだ。夢だったか…」

ほっと一息つき、友人二人を置いて朝飯を食べにいく。

「今日も楽しめると良いなぁ…」

なんてね。


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