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第三十一話


 ナツのチームは決して個人が強いというわけではない。

 ただ、それでも連携がしっかりしていた。


 ナツが中心になってみんなを導いているのがわかる。

 頑張って声をあげ、みんなを導き――だが相手が悪かった。


 バレー部の人がいるようで、どうにも相手の方が技術面で上だった。

 最後はナツのサーブミスで負けてしまった。

 

 試合が終わり、チームメイトとそこそこに話をしたあと、ナツがこちらへとやってきた。


「先輩に見られていたせいで負けてしまいました」

「悪かったな貧乏神で」


 ナツは少し落ち込んでいるように見えた。


「気にすんな。その分部長やアキの試合が見れるんだ。前向きに考えていこうぜ」

「……なんですか先輩? そんなに私に見てほしいんですか?」

「別にそういうわけじゃないが。ま、暇つぶしくらいはしてやるよ」


 俺がナツの肩を叩く。

 珍しく落ち込むなよ。おまえにその表情は似合わないからな。


「わかりました。応援しますね」


 ナツが笑顔を浮かべ、バスケの試合が行われているほうへ向かう。


「それじゃ、私も見ているわね。頑張りなさいね二人とも」


 部長はくすりと笑い、ナツに並ぶ。

 アキとともにコート側へ向かうと、ちょうど試合が終わり俺たちの番となる。

 チームメンバーの四人もすでに集まっていたが、少し緊張している様子だ。


 そりゃそうか。

 動いているアキを見たいということでこれまでの試合とは比較にならないくらい人が集まっていた。こいつは完全にパンダだな。


「む、宗川くん……だ、大丈夫かな?」


 久しぶりに苗字で呼ばれ、一瞬反応が遅れる。

 そちらにはチームメイトのオタクくんたちがいた。

 ……彼らと少し話したが、サブカルチャーにはかなり詳しい。俺のようなにわかでは対抗できないほどだ。


 そういうのもあって、多少親密度はあがっていて、彼らが不安そうにしているのがよく分かった。


「練習通り、マークから外れることだけ考えてくれれば大丈夫だ。あとはアキが勝手に点とってくれるからな」

「う、うん」

「あと、ディフェンスはある程度強気でやっちまって大丈夫だ。審判もそう細かくみてないからな」


 実際のバスケと違い、細かいルールはないとアキも言っていたからな。

 そこまでしっかりやっていると一日で試合が回しきらないという理由もある。

 こくこくとみんなが聞いている。


「とりあえず……途中の交代予定は――」


 交代予定の一人に指示を出しておく。

 そうすりゃ、体力を気にする必要もないだろうからな。

 その子が頷いているのを確認すると、相手チームと話をしていたアキが戻ってきた。


「よし、みんな。頑張ろうねっ」


 アキの爽やかな微笑に、全員が慌てた様子で頷いている。

 試合が始まる。初めのジャンプボールをやるのはアキだ。

 アキの身長は175だ。対して、相手の身長は180を少し超えたくらいだ。


 しかし、アキのジャンプ力がすさまじい。その程度の差をやすやすと制し、俺のほうにボールをはじいた。

 受け取った俺はすかさず、近くにいた仲間にパスを出し、少し前に進んでからもう一度もらう。

 そのときにはアキがいた。


 相手はアキとボールを目で交互に見ていて、隙だらけだ。俺が適当にゴールに向かってシュートする。弾かれたボールをアキがつかみ、そのままレイアップシュートで決めた。


 相変わらずうまい。

 相手ボールとなり、そこから攻撃となるのだが、パスが出された瞬間にアキが動く。

 ディフェンスからボールを奪い、そのままシュートする。


 印象付けは十分だった。相手のマークが複数になる。

 そこからは俺が中心になってボール回しをするだけ。


 マークされていない仲間にパスを出せば、あとは仲間たちも決めてくれる。

 ずっと同じ角度からのシュート練習ばかりをしていた彼らは、その場所からのシュートなら、ディフェンスさえいなければ決められるくらいになっていた。


「ナイス、林くん!」

「あ、ありがとっ」


 そしてアキはチームメイトの名前も全員覚えている。シュート決めた子、外した子にそれぞれフォローする声かけも行っている。

 完璧な男だ。


 試合はほぼこちらが一方的に攻め続けての勝ちとなる。

 やっぱこいつチートだわ。


 RPGで言ったら途中離脱するサポートキャラみたいなもんだ。

 ドラク○5で言ったらパ○スだ。それじゃあ死ぬか。


「すげぇな秋!」

「おまえ一人でめっちゃ活躍してるじゃねぇか!」

「いやいや、みんながうまく動いてくれてるからだよ」


 クラスメートに囲まれたアキがもみくちゃにされている。

 さっきのアキ凄かったな。

 さすがに、気合が入っていた。これならマジで優勝余裕だろうな。


 俺が軽く伸びをしていると、エリがやってきた。


「お疲れ様。ユキ君見事な活躍だったね」

「俺が? 一点も決めてないんだが?」

「だって、パス回し凄いうまかったじゃん。ずっと誰もマークされてない子にパス出してたし」

「そうでもない。たまたまだっての」

「えー、そうなの?」

「ああ。それにアキが暴れてくれたおかげで動きやすかっただけだ」


 べた褒めしてくるエリの対応に少し困る。

 だって、周りの男子生徒たちが羨ましそうに見てくるんだからな。


 そして彼らの目には闘志の炎が燃えている。

 ……活躍すれば、俺もエリさんにお近づきになれる! そんなことを考えているのかもしれない。


「おまえ、これ計算してるのか?」

「え? 何が?」


 エリはぺろっと舌を出した。……こいつ俺が考えているよりもしたたかな奴だな。


「そんなに優勝したいのか?」

「うん。勝負事で負けたくないからねっ」


 理由は結構純粋なんだな。嘘をついているようには見えなかった。

 俺が視線を彼女から外すと、こちらを見ているナツがいた。その隣にいた部長は眉根を寄せている。


 アキが女子に囲まれているのが気に食わないという様子だ。それをそのまま素直に伝えたらいいのに。

 俺はエリから逃げるようにさっとそちらに向かう。


「一回戦突破、おめでとう」

「アキが暴走してたからな」

「決勝目指すなら体力温存しておいたがほうがいいわよ? さすがに、全試合全力は無理でしょうしね」

「わかってる」


 ……まあ本人は球技大会に向けて走りこんでいたけどな。

 なぜ知っているかというと、毎朝俺の部屋までご丁寧に迎えにきやがったからだ。迎えに来るなら幼馴染の女の子がいいよ……そんなことしてくれる人に覚えはないが。


 というわけで、俺も久々に体を作り直した。短期間ではあるが。

 一応俺も、優勝して親友のサポートをしてやりたいという気持ちがあるからな。


「それじゃ、私は試合があるから先に戻るわ」

「もうか?」


 まだ時間まであったと思うが。

 ひらひらと部長が手を振って去っていき、俺の前にナツが現れた。


「おめでとうございます先輩」

「ああ」

「けど、一点も決めてないですね」

「もともとそういう作戦だ。俺はあくまで影薄くして、アキを目立たせるっていうな。そうすりゃみんなアキを警戒するだろ? そうしたら、他の子たちも動きやすくなる」


 アキ個人としても、みんなで楽しみながら勝ちたいらしい。

 しかし、ナツは少し不満げである。


「私は先輩がシュートを決める場面も見てみたかったですね」

「それならあれだ。放課後とかいっぱい決めてやるぞ?」

「いやこういう大事な場面のがみたいんですよ。けどまあ、優勝しないとですもんね」


 ナツにはアキの決意について勝手に話している。

 もちろん、ナツは誰にも口外しないことを知っているからな。


「ああ。それより部長次の試合までまだ時間あるよな?」

「気を遣ってくれたんじゃないですか?」

「なんのだよ。部長、一人でどこでどう時間つぶすんだ?」

「……トイレでソシャゲ?」


 とりあえず、一人にするとかわいそうなので探しに向かった。

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