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第二十話



 四人がそろったところで、いつも通りの部活動が始まる。

 とはいえ、今日はもともと全員で何かしようというわけではない。

 ただただ、部室に四人集まって駄弁りながらそれぞれ好きなことをしている感じだ。


 部長は珍しく、まったくゲームはせずラノベを読んでいる。何か好きな作品の新作なのかもしれない。

 俺はスマホでポチポチとソシャゲーを。ナツもスマホを弄り、アキだけはテレビゲームをのんびりとやっていた。


 ゲームをやっていたアキが、セーブのロード画面にあわせて伸びをする。

 そのまま椅子に背中を預けるように伸びをした彼が、こちらを見てきた。


「みんなでオンラインゲームみたいなのやりたくない?」


 ぴくり、と反応したのは部長だ。

 彼女の表情はどこか険しい。

 オンラインゲーム、か。


 あれはコミュニケーションを必要とするゲームだからな。

 レイドバトルとか、集団でダンジョンに挑むとか……コミュニケーションしたくない俺たちからすれば、絶対にやりたくないゲームである。

 

「あれはゲームではないわ」


 いやそこまでは同意できない。

 オンラインゲームも基本ソロでできるものもあり、俺も楽しめることが多い。

 アキも部長が否定するのは想像していたようだ。けど、予想外すぎるバッサリ具合に頬を引きつらせていた。


「そこまで言うのかい?」

「ええ。あなた副部長なんだからそのくらいの判断はしてもらわないと困るわ」

「いや、そんな判断できないよ。いいじゃないか、みんなでわいわいやりながらゲームできるんだよ?」

「……この部だけでやれる範囲なら、まあいいけれどね」


 四人だと確かにメンバーとしては悪くないだろう。


「そっかー。何か四人でできるゲーム探しておこうかな……。四人だといいかんじに役割分担できそうだしね」

「そうね。アタッカー、タンク、ヒーラーの三つくらいに分かれるのよね?」

「そこはゲームにもよるね。タンクやヒーラーがいらないようなオンラインゲームもあるからね。けど、もしも選べるなら何がいいの?」

「アタッカーかしら?」

「確かに。部長らしい」

「私らしい? なんだか馬鹿にされている気がするのだけど」

「そんなことないよ。猪突猛進だね、って言いたいだけだよ」

「やはり言い方に引っかかる部分があるわね。そういうあなただってアタッカーなんじゃない?」

「いやいや、僕は昔やっていたゲームでタンクだったから、タンクかな? あれは結構奥が深いからやっていて楽しいんだよ」


 そういえば、昔からアキはMMORPGとか好きだったな。

 俺も誘われたことがあるが、部長と同じ理由で断ったな。


「それじゃあ俺がヒーラーってところか」

「いえ、先輩に癒されるよりは私のほうが似合っていませんか?」

「そうね。私もユキにヒールされるより、ナツに回復してほしいわ」

「僕も」


 ふふん、とナツが胸を張る。

 ……男のヒーラーだっていいじゃないか。世が世なら差別で訴えられるからな!


「そんじゃ俺がアタッカーか。……そういえば、部長。この前部長のお父さんの会社が記事にあがってたけど、なんかVRゲームの開発してるとかなんとか。しかも、今話していたようなオンラインゲームに近いものみたいなんだよな?」


 俺の言葉に部長が頷いた。


「ええ。広い範囲を利用した実際に体を動かして楽しむものね。ただ、どうなるかはちょっと分からないわね。ベータテストとかもやっているから、あなたたちもやってみたいかしら?」


 俺たちがそろって顔を見合わせる。みんな期待するように目が輝いていた。


「え? マジで? それでデスゲームが始まったりしない?」

「するわけないでしょう。没入型ではなく、あくまでヘッドマウントディスプレイをつけるタイプのものなんだから」

「けど、それってよっぽどうまくやらないと、体力かなり使いそうだよな?」

「そうね。それを含めて、色々試しているみたいね。目指すはSA〇みたいな世界らしいけど……たぶん無理ね」

「あのレベルのVRはいつになったらできるんだろうな……」


 俺が死ぬまでに開発できはしないだろうか。


「それじゃあ、明日の放課後にでも用意しておきましょうか?」

「よっしゃ。アキとナツは大丈夫か?」

「うん。僕も用事は特にないかな」

「教室で散々誘われていたみたいだけどいいのか?」

「まあ、向こうは時々付き合ってるからね。今はゲーマーとして、参加させてもらうよ」


 アキは頷いたので、次にナツを見る。


「ナツもいいのか? 友人関係色々あるんじゃないのか?」

「私も大丈夫です。付き合うべきタイミングの見極めはできますからね」

「……なにそんなのあるの?」

「なんかわかりませんか? こう、今一緒に行かないと今後二度と誘われないな、みたいなときっていうのは分かりますね」

「……あるのか?」


 部長を見ると彼女は腕を組んだ。


「わかるとおもうかしら?」

「僕はわかるかな。人って何度も断ると、もう誘わないってなるときが来るんだよね。そうなる前に、きちんと一緒にいっておく必要があるんだよ。もしも誘われなくなったら、こっちから声をかけるのも一つの手段だね」


 というアキのありがたい言葉に俺と部長は顔を見合わせ、頷く。

 なるほど。すでに俺たちは誘われることがない段階に到達したんだろう。

 まあ、俺の場合、それでもアキが誘ってくるから部長に比べると置かれた状況はかなりいいんだろうが。


「それじゃあ、ぼちぼち帰るか?」


 俺が荷物をまとめたところで、部長が俺の方を見てきた。


「ぼっちのあなたをまじえて、ぜひとも聞きたい話があったのよ」

「なに? ていうか、俺は一応アキというクラスメートがいるんだが?」

「うるさい。……今年の球技大会。個人でできる球技がないのはすでに知っているわよね?」

「いや、球技大会なんていつも余り物にしか参加してないから知らないんだが……ていうか、真っ先に気にするところがそこかよ……」


 うちの部長の目の付け所に泣きそうだ。

 アキもナツも同情の目を向けると、いよいよ部長は泣き出しそうだった。


「い、いいからっ! あなたは何に参加する予定なのかしら?」

「アキ、俺は何に参加すればいいんだ?」

「バスケでいいんじゃないかな? 得意だよね? 運動全般」

「まあな。というわけで、俺は問題ない」

「ずるいわよ! 私は友達いなくてどの球技に入っても扱いに困らせるっていうのに!」


 部長が今にも泣きだしそうな声をあげる。

 俺たちは顔を見合わせ、温かい目を返した。

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