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一件落着!

エドワーズ視点です。

 しばらくすると、たくさんの人たちが俺たちのもとへ駆け寄ってきた。


「ベロニカ~よがっだよ~」

「ユ、ユリア!? 落ち着いてください!」

「ベロニカちゃん、本当にごめんなさい……」

「あまり気にしないでくださいな。私はヴィオラが笑っている顔が見たいですわ」

「……うん」

「……よかったな。もう少し早く伝えられたらよかったんだが」

「いや、ありがとう。俺焦っていたから」

「? カイ何かしたの?」

「別に? ユリアは気にすんな」

「何それ酷くない!? ちょっと待てー!」


 話をしているうちに警備隊が中に入って、あの男を捕縛してくれた。後ろ手にして連れてこられた男は、俺を睨み付けていた。


「なぜだ……ベロニカは僕のなんだ……」

「え? 何まだ何か言ってるの?」

「ええ……」

「ねえねえハミル、この人どうするの?」

「……え?」


 ハミルって、さっきベロニカが言ってた人か? あの男含めて3人同時に告白してきたって聞いたけど。


「じきに親御さんが来るから大丈夫だよ。……って、噂をすればもう来たんだ」


 遠くからものすごい勢いで走ってきているのは、どうやらクラウス商会会長と会長夫人のようだ。

 彼らは俺たちのところに走ってくると、その勢いで土下座をした。


「この度はうちの者が大変なことをしてしまい、誠に申し訳ございません!」

「お嬢様にした数々の仕打ちは聞かせていただいております。取り返しがつかないことをしてしまったことは重々承知しております。何でも致しますので、何卒お許しください!」


 あまりの必死さに、俺は逆に彼らが哀れに思えてきた。それもそうか。一商会の者が他国の公爵令嬢を傷つけたとなれば、どうなるかなんて目に見えているし。


「……顔を上げてくださいまし」

「え……?」

「今回のことは、あなた方のせいではありません。だから、私が商会をつぶしたりするということはありません」

「私たちは、許されるのですか……?」

「初めからあなた方には怒ったりしていませんもの」

「ありがとうございます、ありがとうございます……!」


 夫妻はその場で泣き崩れてしまった。オロオロとするベロニカにまた癒されていると、またあの男が喚きだした。


「何で父さんと母さんは謝っているの? 僕はただ彼女を取り返そうとしただけなのに」

「お前、まだそんなことを言うのか!」

「だって本当のことを言っているだけだし」

「もういい! お前は勘当する! どこへだって行くがいい!」

「え!? 何でそんなことになるんだよ父さん! 跡は誰が継ぐんだよ!?」

「ジルベールに継がせます。あの子ならお前とは違い、立派な跡継ぎになってくれることでしょう」

「そんな……」

「まあ、放浪することすらきっと無理だがな」

「何でだよ?」

「警備隊の皆さん、長らく引き留めてしまい申し訳ありません。もう話すことはありません」

「分かりました。連れていけ!」

「はい!」

「え、ちょっと! 放せよ! 僕をどこに連れて行くんだよ!」

「次に会うときは改心しているといいが。まあもう2度と会うことはないだろうな」

「父さん! 母さん! ベロニカーー!!」


 あの男は叫びながら警備隊に連れて行かれた。きっと数年は向こう側だろう。


「……さあ、街に戻ろうか」

「はい」


 * * * * *


 街に戻り『アイリス荘』に帰ってくると、大きな歓声に迎えられた。


「……?」

「お帰りなさい! ベロニカおねえちゃん!」

「え? リリーちゃん?」


 歓声は『アイリス荘』にいた客や看板娘ちゃんたちからだったようだ。戸惑いながらベロニカを立たせると、リリーちゃんと呼ばれていた女の子はぎゅっとベロニカに抱きついた。


「おねえちゃん、ひどいことされなかった? 大丈夫? よしよしする?」

「ふふ、ありがとうリリーちゃん。でも大丈夫ですわ。よしよしはこの人がしてくれたから」


 え、俺!?


「そっかぁ、じゃあおねえちゃんは元気?」

「ええ、もちろん」

「よかった~」


 しばらくすると奥から女将も出てきた。


「ベロニカさん! 無事でよかった……」

「イザベラさん。心配かけて申し訳ありません、この通り、帰ってまいりましたわ」

「本当にごめんなさい。もっと注意しておくべきだったわ…

「気にしないでくださいまし、イザベラさん。なんとか解決しましたし、いいではありませんか」


 俺はぼんやりと、笑っているベロニカの横顔を見つめた。


(よかった。本当によかった……)


 それ以外は考えられなかった。あと少しでも遅ければ、ベロニカを失っていたかもしれない。そう思うと、とてつもない安堵感に包まれた。

 ……そろそろ連れて行けないかな?


「……ベロニカ、部屋戻りたい」

「? ……ああ、そういうことですのね」

「どうかしたの? ベロニカさん」


 俺は急にベロニカに抱きつかれた。

 ……ええ!? どうしたのベロニカちゃーん!


「エドワーズ様がやきもちを焼いてしまったので、そろそろ部屋に行きますわ」

「ああ、そういうことね。ほどほどにして頂戴ね」

「な……だ、大丈夫ですわよ!」


 ああ、ベロニカが顔真っ赤にしてる。可愛いなぁ……。


 部屋に戻った俺たちは、しばらくくっついていた。さっきも抱っことかしていたって? 今まで会えなかったからベロニカが不足してんの。俺も何か予定があるわけじゃないからずっと一緒にいられるし。

 ずっとくっついていると、俺たちの部屋のドアがノックされた。


「やっほー、そろそろ落ち着いた?」


 ユリアたちだった。






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