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愛しい人。

エドワーズ視点です。

「エドワーズ、様……?」

「……!」


 ドアを開けた先にいたのは、ずっと会いたかった愛しいベロニカと、


 ……この世で一番憎いストーカーであろう男がいた。


「……おい、ベロニカを返せ」


 自分でも驚くほど低く冷たい声にその男は一瞬たじろいだが、突然耳障りなことを言い始めた。


「はは! お前がベロニカの婚約者だとかいう奴かい? 悪いけど、ベロニカはもう僕のものなんだ。僕の運命の人なんだから邪魔しないでくれよ。可哀そうに、僕のベロニカはまだお前に洗脳されているみたいだから僕を拒絶するんだ。でも大丈夫。これから永遠に僕と2人きりで愛し合うんだから、洗脳なんてすぐに解けるよ。だからさっさと出て行ってくれないか。あ、もしかしたら2人きりじゃなくなっちゃうかもね。きっと可愛いだろうなぁ」

「貴様ベロニカに何をする気だ……!」

「何をって、ただ愛し合うだけじゃないか」

「……一応聞いておくけど、って聞かなくても分かるな……」


 よく見なくても、ベロニカの頬には涙の跡がいくつもあった。恐怖に歪む顔を見た俺は頭の中で何かがぷつんと切れた。

 とりあえずベロニカを抱きしめているこいつに近づいて思い切り顔面を殴りベロニカから引き剥がし、ベロニカを力強く抱きしめた。そいつは派手に床に転がりテーブルに頭をぶつけて呻いていた。


「すまない……助けに来るのが遅くなって。怖かっただろう?」

「エドワーズ様……」


 ベロニカは俺の腕の中で震えていた。しばらく抱きしめながら頭をそっと撫でていると、やがて彼女は泣き出してしまった。俺の服をぎゅっと握る彼女を見て、こんなに怖がらせていたあの男に、そしてもっと早く助けに来られなかったのかと自分にも腹が立った。


「何で……ベロニカ、ベロニカは僕のものなんだよ……? 何でそんな奴のところにいるの……?」


 ……口、縫ってやろうか。


「ベロニカは俺の婚約者だ。お前ごときがベロニカの名前を呼ぶな」

「うるさい! 僕たちのことを何も分かっていないくせに! 部外者が口を出してくるなよ」

「部外者はお前だ。第一、ベロニカが嫌がっているのが分からないのか?」

「それは、ベロニカが洗脳されているからだ。お前から離れて僕とずっと一緒にいたら、ベロニカは解放されるんだ」

「……ベロニカ、もう行こうか」

「はい、エドワーズ様……って、え!?」


 この目障りな男の相手をするのも疲れたしここから去りたかったが,まだベロニカから離れたくなかったのでそのまま抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。


(おーおー、顔真っ赤になってる。可愛すぎるだろ)


 今まで2人きりになったときは結構イチャイチャしていたつもりだけど、お姫様抱っこは確か初めてだったな。どうしようベロニカが可愛い。というかこれ以上ベロニカをこいつの目にさらしたくない。こんなところさっさと出よう。


「ま、待てよ! ベロニカ、ベロニカは僕のでしょ? 目を覚まして」

「いい加減にしろよ。そもそもベロニカは物じゃないし、お前の恋人でもねーから」

「うるさいうるさい! たかが婚約者のお前に分かるわけないだろ!」

「……たかが、ね……ベロニカ」

「? 何でしょうか、エドワーズ様」

「……俺のこと、好き?」

「……!」


 ベロニカは更に顔を赤くして、にっこりと笑った。


「はい、エドワーズ様。好きですわ」

「だってさ。俺とベロニカは婚約者である以前に恋人同士だから」

「違う、違う! お前のせいだ! お前のせいでベロニカは!」

「……いい加減にしてくださいまし」


 ……え? ベロニカ?


「ずっと黙っていましたが、私たちを侮辱するのも大概にしてくださいまし。ヴィンセント・クラウス」

「……! どうしてその名前を!」

「調べさせていただきました。あのとき一緒にいらっしゃった残りの方はそれぞれフランシス・エイベル様とハミルトン・アールグレーン様。フランシス様はエイベル侯爵家嫡男で、ハミルトン様はアールグレーン侯爵家当主……ですわよね?」

「……その通り、だよ」

「そういえば、あなたはクラウス商会の跡取りだったかしら? でも、きっとそれもなくなりますわね」

「どういうこと?」

「それは……こういうことですわ」


 すると、外が急に騒がしくなってきた。男の顔が一気に青褪めたのを見て、俺は皆がやっと来たのだと気付いた。


「エドワーズ様。外に出ましょう?」

「ああ、そうだな」


 男を放置したまま、俺はベロニカを抱いて外に出た。よく知っている人たちが走ってきているのが見えた。






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