その人たちは。
前半ヴィオラ視点、後半ユリア視点です。
私達に話しかけてきた男性は、フランと名乗りました。後からやってきた男性はそれぞれハミル、ヴィンスと言うそうです。
それで、ハミルさんはドロシアちゃん、ヴィンスさんはベロニカちゃん、そして……
フランさんは私に、告白したらしいのです。
……あの、え?
とりあえずその日は少しお喋りをするだけに留めて、『アイリス荘』に帰ることにしました。
「……びっくりしましたわね」
「そう、だね……」
「というか、いつの間に私たちのことを知っていたんでしょうね……」
「たしかにそれは疑問ね」
まさか、ユリアちゃんを探しに来たのに告白されるなんて。
そもそも私たちは貴族ですし、婚約者や結婚相手を自分で好きに選ぶことなんてできないのですけれど……。
「まあ、しばらくは保留、と言う風に言っておきましょうか。次に会うことがあればの話ですが」
「そうね」
なんだかまだ少し理解が追いついていません……。
「だいぶ早いけれど、今日はもう休みません?」
「賛成~」
* * * * *
「……ヴィオラたち、解散しちゃったね」
「そうみたいだな」
せっかく張り切って尾行しようとしていたのに、ちょっと残念です。
「……ん? ねえカイ」
「何だ?」
「さっきの男の人たちの後、付けてみない?」
「俺は別に何でもいいけど」
私たちはその人たちの追尾を開始しました。
「なあ、やっぱり難しいのかな……?」
「それでも頑張るとか言ったのはお前だろ? まだまだこれからだ。拒絶されたわけじゃないんだし」
「そう、だよな……」
「と言っても、オレも頑張らないとすぐに忘れられちまいそうだな……」
えっと、なんかやたらと落ち込んでいる人は……
「フラン、だったか? その横で励ましてるのがハミルって言う奴で、黙って会話を聞いてるのがヴィンスだったはずだぞ」
「ありがとう」
えーでもなんか意外と普通そうな人たちでびっくりしている自分がいます。何せヴィオラとドロシアの元婚約者があんな人たちでしたからね……でもベロニカはエドワーズ様がいますし、ヴィンスさんでしたっけ? は申し訳ないけれど諦めてもらわないと。
(でも。もしあの人たちが本当にいい人たちだったとして、本当にヴィオラとドロシアのことを好きになってくれているのなら、私は……応援したいな)
ヴィオラたちはきっと貴族として生き抜いていくでしょう。婚約者がいないというのは貴族社会で浮いてしまう原因に十分なり得ます。だから、いずれは新しい婚約者を見つけなければなりません。ならば、ちゃんとヴィオラたちを好きになってくれたあの人たちを、応援したいと思いました。まだ会ってもいませんが。そしてヴィンスさんは諦めてください。
「あ、お帰りなさいおねえちゃん!」
私はしばらく散歩をした後、『アイリス荘』に戻りました。リリーちゃんがお出迎えしてくれました。今日もリリーちゃんは可愛いです。
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