西の国に来ました。
ヴィオラ視点です。
ユリアちゃんに再会できた日の夜、私たち3人は少し夜更かしをしてお喋りをしていました。
「ユリアちゃん、元気だったね。よかった」
「まあ予想は出来ていましたけれど。外で見たときは一瞬分からなかったぐらい街に溶け込んでいましたわね」
「ユリアは貴族っぽくしていたらちゃんとそう見えるけど、庶民っぽくしていたら全然分からないのね。不思議」
「……でも、ユリアちゃん」
「……うん」
「やっぱり、寂しそうだったね」
「……ええ」
ユリアちゃんはすごく元気そうです。いえ、実際元気なのでしょう。少なくともユリアちゃん自身はそう思っているのだと思います。
でも、明らかに寂しそうな表情をしていました。そのせいか私たちには、ユリアちゃんが無理に笑っているように思ってしまうのです。きっと、本人は全然気付いていませんが。
「ねえ、明日はどうする?」
「そうですね……今日も軽く散策はしましたけれど、もう一度街を歩いてみません?」
「そうね。ユリアは……街中を連れ回したら辛いかもしれないから、私たちだけで行こう」
「うん、分かった」
町中は恋人たちがたくさんいますしね……少しでもジークハルト様を連想させてしまうのはよくないでしょう。私たちですか? みんな吹っ切れてますよ。更に言うと、理由は何であれ私たちは婚約破棄された身です。やはり外聞が悪いのか、あれからしばらく経った今もみんな婚約者は出来ていません。
でも私たちはそのことに焦りを感じたりはしていません。婚約者があんな人だったからか、みんなあまり婚約者がほしいとは思わないみたいです。私もベロニカちゃんやドロシアちゃんと一緒にいる方が楽しかったですし。
(あの日、2人と話してたんだよね。ユリアちゃん元気かなって。……体の方は元気だけど、心の中はそうじゃないんだろうな……)
やっぱり、ユリアちゃんが心配です……。
「こんにちは、お嬢さん方。見慣れない顔ですね」
「……こんにちは」
3人で大通りから伸びている小道を歩いていると、不意に声を掛けられました。年齢はよく分かりませんが若い男性で、人当たりの良さそうな雰囲気でした。
しかし、女性3人組に声を掛けるなんて怪しすぎです。ドロシアちゃんは私たち2人の前に立ち、挨拶を返しました。
「あ、すみません。怖がらせるつもりじゃなかったんです」
「……何の用ですか」
「綺麗なお嬢さん方に声を掛けるのに、理由がいるのですか?」
「要するにナンパね」
「そんな言い方しないでくださいよ……口説こうと思ってたのに」
「……え?」
……今、この人なんて言いました?
「そろそろ出てこないとタイミングなくなるけどいいのか?」
「うう……でも、僕なんかが前に出たら……」
「頑張れ、僕も頑張るから」
……なんか、2人増えました。
「「「お願いします! 僕の恋人になってください!!」」」
……あの、誰が誰に言っているんでしょうか……?
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