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まさかの結果になりました。

「あ、おねえちゃん、おにいちゃん、お帰りなさい!」


『アイリス荘』に戻ると、もうリリーちゃんは先に帰ってきていました。受付のナナさんと話していたようです。


「ただいまリリーちゃん……って、あれ?アンナちゃん?」


 リリーちゃんの隣には、さっき大通りに行ったときに会ったアンナちゃんがいました。


「ママのお仕事がもうすぐ終わるから、ここで待ってるの」

「ママのお仕事ね……ん? ママ?」

「あ、そういえばおねえちゃんには言ってなかったっけ。ナナさんは、アンナのおかあさんなんだよ」

「え、嘘!?」


 全然知らなかったです。そういえばよく見てみなくても、ナナさんとアンナちゃんは髪の色や顔立ちが結構似ていますね。


「リアさんすみません。私の娘がご迷惑をおかけしてしまっていたようで」

「いえいえ、そんなことないですよ。リリーちゃんも楽しそうでしたし」

「ねえねえママ、お仕事終わった?」

「あ、ちょっと待っててね。あとこの書類整理したら今日は終わりだから」

「うん、分かった」


 ナナさんの仕事が終わるまで、私はリリーちゃんとアンナちゃんと一緒に部屋でのんびり待つことにしました。ジークは自分の部屋に戻ったようです。


「……クイーン(スッ)」

「……っ、キング(スッ)」

「ダウト」

「ああ!」

「アンナ、これ何枚……?」

「10枚ぐらいだったかしらね。残念アンナちゃん、かなり分かりやすかったよ」

「リア姉が言ったんじゃん!うわあ……」


 案外ナナさんの仕事が長引いてしまっているようで退屈になってしまったので、3人でダウトをしていました。こういうときのために作っておいたんですよ、トランプ。結構大変だったのですが、一度作ってしまえばいつでもどこでも遊ぶことができるのでかなり重宝しています。

 前世でもいろいろな人とトランプをしていました。言葉が通じなくても何とかなるということが分かった体験でした。

 ちなみにこの世界の実家(?)で試しに侍女とトランプをしてみたら、強奪されました。楽しすぎるから街の特産品にするとか何とか言っていました。なので今私たちが使っているトランプは2代目なのです。よりきれいに作ることができたのでよかったです。

 ときどき悲鳴が上がりながらも楽しくトランプで遊んでいると、部屋のドアをノックする音が聞こえました。入ってきたのは、少し楽な服装に着替えたらしいジークさ……ジークでした。


「あれ、ジーク。どうしたの?」

「いえ、あ、ンン……その、リアはまだ夕食を取っていなかったな、と思って。良かったら一緒に行かないかと言いに来たんだが……それ何だ?」

「これ? トランプっていうの。いろいろ遊び方があるんだけど、今はダウトっていうのをしていたの」

「へえ……なあリア、僕も混ぜてくれないか?」

「うん、いいよ。じゃあまずはルールと説明をするね」


 -3分後-


「……5(スッ)はい、次おねえちゃんね」

「……6(スッ)」

「ダウト」

「何で! 分かるの! 何かしてるでしょ!」

「別に何もしてないよ。勘だよ、勘」

「嘘でしょ……これでもう4回目なんだけど……」

「リア姉、お疲れ様」

「うう、アンナちゃんがそんなことを……」

「はいはいおねえちゃん、これ回収してねー」

「リリーちゃん!?」


 なぜでしょう、ジークにダウトのルールを説明して一緒にやったら、一番の経験者であるはずの私がものすごく押されるという状況に陥りました。


「……10」

「ジャック。上がり」

「ダウト!」

「残念。ちゃんとジャックだよ、リア」

「もうやだ……」


 これで負けるの何回目でしょうかね……。


「ジークだけダウト言うの禁止!」

「横暴だなあ」


 今日は無理でも、ちゃんといつかは勝ってみせます!


 * * * * *


 4人で楽しく(?)ダウトをしているとナナさんの仕事が終わったので、ナナさんとアンナちゃんは家に帰りました。『アイリス荘』から1分ぐらいのところにあるらしいです。家と職場が近いということは良いことだと前世の友達が言っていたのを思い出しました。その友達は片道だけで2時間以上もかかるところで働いていたらしいです。私ならそこまでして働きたくはないですね。何かその仕事に憧れる要素があったのでしょうか。

 話が逸れました。

 リリーちゃんは「おかあさんのところに行ってくる!」と言ってどこかに行きました。とりあえず大丈夫そうです。


「さて、僕たちもご飯食べに行こう。そろそろお腹空いてきたでしょう?」

「うn「ぐぎゅるるる」……」


 恥ずかし! もう大きくなったのに人前でこんなに大きなお腹の音を鳴らしてしまうなんて。

 顔が徐々に熱くなっていくのが分かり俯いていると、頭の上から笑い声が聞こえてきました。


「……?」

「ふふ、そんなにお腹が空いているんだったら、尚更早く行かなくちゃ。それとも、僕とは嫌?」


 なんかジークって自分を若干卑下しているような気がします。何でそんな風に言うのでしょうか……?


「ううん。それよりジーク、あんまり自分を否定的に言わないで。私ジークと一緒に何かするの、嫌じゃないよ」

「……っ、分かった」


 何だか少し泣きそうな笑顔が、私の心に引っかかりました。


「よし。じゃあ行こう、ジーク」

「はい……あ、うん」






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