……ただいま!
「ねえヒルダ、ちょっといいかな?」
「ん、何?」
「宿屋とかってもう決めてあったりする?」
「いいや、これから探そうと思ってるよ」
私たちは特に何も問題なく西の国に着きました。あ、身分証はまた前と同じ『リア』のものを使いました。平民として作ったのはこれしかないので。お姉様……改めお姉ちゃんの身分証を見せてもらったら、やはり偽名で、『フィア』と言う名前でした。
「まあ普段の呼び方を変えてもらったりしてるわけじゃないけどね。いちいち身分証を確認されるような場面なんてそうそう起こらないもの」
「僕はいつもフィーって呼んでるから関係ないけどね~。ユリアちゃんはどうしてほしい? 呼び方変える?」
「別にどっちでもいいかな~」
「そっか」
エディお兄ちゃんとはもう大分仲良くなりました。だけど、私はちゃんと空気が読める子なので基本はお姉ちゃんの後ろにいます。お姉ちゃんとエディお兄ちゃんはすごく仲良しで、気が付いたらいつも手を繋いでたりくっついたりしています。かなり長いこと一緒にいるはずですけど、ラブラブでいいですね~。
……なんか、ちょっと寂しくなってきてしまいました。早くジーク戻ってこないかな……。
「ねえ、まだ宿屋決まってないんだったら、ちょっと行きたいところがあるんだけどいいいかな?」
「いいよ。迷子にならないでくれよ」
「大丈夫よ。じゃあ行ってくるね」
そして……やっと、戻ってくることができました。
私は懐かしい建物の前に立ち、その扉を勢いよく開けました。
「こんにちは~!」
私がそう声を掛けると、奥からバタバタという足音が聞こえてきました。
中に入って待っていると、
「おねえちゃーん!」
やっぱりリリーちゃんが出てきました。
そのまま飛び付いてきたリリーちゃんをその勢いで抱き上げました。
「久し振り、リリーちゃん。元気にしてた」
「うん! でも寂しかった……おねえちゃんも元気?」
「もちろん。ようやくこっちに来れたの」
「あら、リアさんじゃないの。久し振りね~ちゃんと食べてるの?」
「イザベラさん!」
後からイザベラさんも出てきました。かなり慌てているみたいで息を切らしています。
「ん? リアさん少し大きくなった?」
「え? そうですか?」
「若干かしら。でも私と目線が近くなっている気がするわよ」
「そうですか? ありがとうございます」
そんな話をしていると、不意に後ろから声を掛けられました。
「あれ、リア姉?」
「あ、アンナちゃんじゃない。久し振り~」
「いや久し振りって、いきなりいなくなっちゃったからびっくりしたんだよ?それでまたいきなり戻ってくるし」
「なんか、ごめんね?」
「別にいいけど。それより、あの男の人は一緒じゃないの?」
「え? ああジークね。今、ジークはいないの」
「何で?」
「仕事よ。外国に行かなくてはならなくて」
「そっか。で、今度はどれぐらいここにいるの?」
「まだ何とも言えないかな。連れはいっぱいいるから、というより私が連れの1人みたいな感じだったんだけど」
「その人たちはどこにいるの?」
「街の広場に……って、え?」
「やっほー。暇だから追いかけてきたよ」
外にはヒルダとお姉ちゃんとエディお兄ちゃん、カイその他の行商の人たちがいました。
「あら? もしかしてリアさん、この方々は……」
「ここを紹介したくて。ヒルダ、どう?」
「とても素晴らしい宿屋だと思うよ。何で今まで知らなかったのか分からないぐらいだ」
「ですって。今空いてる部屋はいくつありますか?」
「3つ隣り合ってるところがあるわよ」
「じゃあそこを使わせてくれ」
「はい」
こうして、懐かしいこの『アイリス荘』にもう一度泊まることになりました。
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