なぜ、ここにいるのですか……?
「カイ、まだ? 早くしてよ」
「もうちょっとゆっくりしててもいいじゃねえか。馬車が来るのもあと20分ぐらいあるんだろ?」
「そうだけど、時間がずれるかもしれないじゃない。それに、これ逃したらもう行けなくなっちゃうんだから」
「はいはい分かったよ、ちょっと待ってろ」
ここから西の国へは普段は自力で行くしかないのですが、今回はたまたま行商が隣の町まで来ているようで、隣町までいつもと同じような乗合馬車に乗って行き、その行商にくっついて行くことにしました。
ん? 行商について行けるのかって? 大丈夫ですよ、その行商、私の知り合いなので。
旅をしていたときに別の町で出会ったんですよね。そのときもその行商の人たちにくっついていて、その代わりに私がしばらくご飯を作っていたんですよ。行商の人たちはあまり料理ができないらしく、いつも乾燥させた食品ばかりを食べていたのでした。お袋の味的なのを振舞ったらすぐに懐きました。ご飯の力は偉大です。最近は宿屋を使うことが多いから全然料理していないけれど、久し振りにドカッと作りたいですね。
「にしても、お前の人脈すげえのな」
「気がついたらこんな風になってたのよ」
「へえ。で、その行商は本当に来るんだよな?」
「大丈夫よ。行商は変なのもあったりするけど私の知り合いは信用できるから」
「おう」
難なく乗合馬車に乗り、隣町まで行くことができました。
行商が来るのは3時間後なので、何かで暇つぶしをしましょうか。
「あ、ユリア。ちょっとこっちに来てくれ」
「ん? 何、カイ?」
「これ美味そうじゃね? つっても俺は食わねえけど」
「あ、本当。すみません、これ1つください」
「まいど~」
カイが見つけてくれたのは、小さめのイカ焼きのようなものを売っている店でした。
「……ん! え、待って想像以上にめっちゃ美味しいんだけど!」
「ありがとうなお嬢ちゃん」
ちゃんとタレみたいなのに漬けてあって、焼き目もいい感じについていてなかなか美味しいです。前世ではあまりイカ焼きは好きではなかったのですが、これなら何個でも食べられそうです。
「うう、もうちょっと早くに来ればよかったかも。またいつか絶対来よう」
「そうかよ。っと、そろそろじゃないのか?」
「そうだね。行商用の広場があるから行こう」
「分かった」
* * * * *
私たちが広場に行くと、そこには懐かしい顔が並んでいました。
「……ってあれ? ユリアじゃん! おっ久し振り~!」
「久し振りね、ヒルダ。他のみんなはどうしたの?」
「ちょっと買い物に行ってくるってさ~。それにしても久し振りだね~元気にしてた?」
「ええ、もちろん。ヒルダは?」
「見ての通り元気そのものさ」
「確かにそうね」
「それより、今日は何だい?」
「ちょっと一緒に乗せてもらえないかなと思って。またご飯作るわよ?」
「マジ!? 待ってて、みんなが帰ってきたら考えるわ。つってもみんな大喜びすると思うがな」
「ありがとう」
「いいってことよ」
ヒルダは若くして行商のリーダーとして世界中を回っている人です。人望も厚く、とても頼れるお姉さんなのです。
「お、そうこうしているうちにもう帰ってきたな」
「え!? ユリア、何でここにいるの!?」
「お久し振りです~」
この行商には15人程度いるのですが、買い物に出ていたのは私がそこそこ仲良くしてもらっていた3人と……
「な、な、何で……」
「……久し振りね。ユリア」
3人と一緒にいたのは、
お姉様でした。
評価、ブックマークを下さった方ありがとうございます。
読んでくださりありがとうございました。




