……何だか気分がすっきりしません。
前半ユリア視点、後半エドワーズ視点です。
「……ア……リア、ユリア!」
「ん……?」
「やっと気がつきましたわね」
「あ……」
今、何をしていたんでしたっけ……? そうだ、歴史の授業をしていたんでした。
「もう授業は終わりましたわよ。大丈夫ですの?」
「うん、平気」
「具合悪い? 医務室、一緒に行こうか?」
「大丈夫だよ、ヴィオラ。心配しないで」
「何だったら私の研究に付き合ってもらってくれないかしら?」
「……それはパスでお願いします」
「冗談よ、半分」
(((半分……!?)))
友人達とは変わらず仲良くしているのですが、何というか、どこかだるいような感じが続いています。メリハリのない日々というか、平凡すぎるというか。
(さすがにあの乙女ゲームに3期はなかったはずだしな……いっそジャスミンがどこかに出没してくれないかな。大迷惑だけど)
放課後になり、私が校舎から出て馬車のあるところに行こうとすると、後ろから誰かが走って来る音がしました。
……至近距離まで来た瞬間、私は1歩左にずれました。
「っておわぁぁ!? 何するんだよこけるところだったじゃないか!」
「いや知らないし。自業自得でしょ」
「そんな……ユリアさんがそんなヒドイ人だったなんて……」
「……気持ち悪」
「いや真顔で言うな流石に傷つくぞ」
「で、何の用なの? 早く帰りたいんだけど」
「まったくひどいなぁ。友人が元気ないから親切で優しくて格好いいボクが励ましてあげようと思ったのに……」
「帰りますさようならあとベロニカに愚痴ります」
「待って、待ってくれすまんふざけすぎた」
……フレッドさん、もといエドワーズ・フリント侯爵子息です。
あの後からやたらと絡んでくるようになったんですよね、この人。もとからチャラ男だと思っていたのでドン引きしたりはしなかったのですが、なぜか出くわす確率が高い。
というかこの人ジークと同い年だからもう卒業してますよね? 何で学園にいるんでしょうか……また叔母様に聞きたいことが増えてしまいました。
「……まあその、あれだ。元気出せよ」
「別にフリント侯爵子息様に心配されるようなことではありません」
「おいおい……この際だから言っておくけどな、最近お前のいないところで結構話聞くぞ」
「……え?」
「そういえばお前、表情隠せなくなったのか? 前に会ったときより大分考えが顔に出てる、気がする」
……デビュタントのときに会ったのかもしれませんね。私はそのときのことを何も覚えてはいませんが。
「……まあ、お前は自分のやりたいようにやればいいよ。ちょっと無茶なことでも周りは許してくれる……かもしれない」
「どういうこと?」
「そのままの意味さ。溜め込みすぎていきなり爆発するよりは、早いうちにすっきりさせとけってこと」
「……よく分からない」
「いや、お前なら分かる。今分かんなくても、絶対に思い出す。そんなに前のことじゃないんだから」
「……」
「何かあったらちゃんと言えよな。言いたくないことだったら別にいいけど。俺ここに来たときは学園長の執務室かどっかにいると思うから」
「ありがとう」
「いいってことよ。じゃあ、そろそろ帰りな。遅くなりすぎると侯爵が探しに来るかもな」
「そうだね。ばいばい」
「あ、ちょっと待て」
「? 何?」
私は、頭を撫でられました。ジークとは違った、ポンポンとした撫で方でした。お父様にされるような。
「ほら、行けよ」
「……う、うん。それじゃあね」
少し小走りで馬車に向かい、従者と御者に変な目で見られながら馬車に乗りました。
* * * * *
「……ははっ。こりゃバレたらジークハルトにどつかれるな」
俺は親友であり主人である男の婚約者を見送った後、学園の校舎に寄りかかり夕日を見ていた。
「まったく、よくやるよ。あの子をあんな風にしちまったんだから」
初めはジークハルトとユリアの姉の計画に不安しか感じていなかった。果たして本当にそんなことができるのか、成功するのか。第一ユリアがジークハルトに惚れる保証はどこにもなかったし、そもそもユリアがどんな少女なのかもほとんど知らなかった。
「だけどさジークハルト、ちょっとユリアちゃんにアドバイスしちまったから、何かあったらよろしくな~」
俺は遠い地にいる親友にそう言って、学園を後にした。
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