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ちょっと仲良くなりました。

 大通りに出ると、そこには本当にたくさんの人がいました。


「屋台……?」


 どうやらお祭りの要素もあるみたいで、日本でよく見ていた屋台にそっくりなものが道の端に並んでいました。


「何か気になるものでもありましたか?」

「あ、えっと、そうじゃなくて、ただびっくりしたっていうか」

「なるほど。確かに、他の国にはこのような形の店はないでしょうし。数十年前にこの国に様々なものを伝えたという方がいるのですが、その方が伝えたものの1つらしいですよ」


 屋台とか食文化、などでしょうか。もしかするとその方は、日本人だったのかもしれませんね。会ってみたかったです。


「あれ、リリーちゃん?」


 近くから女の子の声がしました。振り返ってみると、そこにはショートヘアの活発そうな女の子がいました。


「あ、アンナ!」

「ん? リリーちゃん、お友達?」

「うん、同い年なの。ねーねー、アンナと一緒に遊んできちゃだめ?」

「いいよ、程々のところで帰っておいで」

「やったあ!アンナ、行こう!」

「うん!」


 リリーちゃんとアンナちゃんは、手を繋いでどこかに走っていきました。いつも遊んでいるところなどがあるのでしょう。


「元気ですねえ。私にはもうあんな体力ないですよ」

「とか言って、ジークさんそれなりに体動かす方でしょ?」

「さてね。それより、私たちもそろそろ動きましょう。何か目を引くものなどがあれば、遠慮なく言ってください」


 もう何年も前のことだからそれほど覚えていないけれど、屋台の種類も日本とかけ離れているというわけではないようで、むしろ焼き鳥やフランクフルト、金魚すくいなどにとても似ているものがたくさんありました。


「リアさんは何が食べたいですか?」

「えっと、じゃああれがいいです」

「じゃがバタですか。ちょっと待っててください」

「え? あ、ちょっと……」


 私の制止も聞かずにじゃがバタの屋台に行ったジークさんは、そこそこ大きめのじゃがバタの袋を持って戻ってきました。


「はい、どうぞ。熱いので気をつけください」

「あの、お金は……」

「いいですよ。丁度私も食べたかったので、半分こしましょう」

「でも、う!?」


 いきなりじゃがバタを口に押し込まれました。


「いいって言ってるでしょう。それとも、やっぱりいらなかったとか?」


 またジークさんの頭に犬耳が……。


「もぐもぐ……そういうことじゃ、ないですよ。ただ、私もお金はちゃんと持ってるから、それで」

「ふーん……あ、ふふっ」

「どうかしましたか?」


 するとジークさんは私の口元に手を伸ばしました。はい?


「付いてましたよ」


 え、ジークさん、私の頬にじゃがバタのカケラ付いてたんですか、って、なな、何で食べたんですか!?


「あわわ……」


 なんか落ち着こうと思ったら逆に慌ててしまっているみたいで、顔がどんどん熱くなってきてしまいます。


「(ボソッ)可愛い……」


 ジークさんが何か言っていたようですが、それどころじゃないぐらいにまだ熱いです。


「リアさん、顔上げて?」

「はい?」

「口を開けてください」

「ま、待って」

「リアさん、ほら、あーん」

「あーんって、私子どもじゃ……もぐ」


 また口に、っていうかあーんって、あーんって……。

 また、よく分からない気持ちが込み上げてくるようです。


「美味しいですか?」

「(コクコク)」

「ふふ、よかった。他には何かみたい屋台はありますか?」

「ジークさんは何かないんですか?」

「私は特に……というか、何で『ジークさん』なんですか」

「え?」

「何でさん付けなんですか」

「え、だって」

「できればさん付けしないでほしいのですが……いえ、さん付けはなしです。それから敬語もなし」

「は、はあ……分かり、分かったよ、ジーク。あ、敬語はジークもなしだからね?」

「もちろん。じゃあリア、少し歩こうか。いろいろ話したいし」

「うん」


 それから私とジークは屋台を回って食べ歩きをしたりしながら、日が暮れるまでおしゃべりをしていました。






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