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それぞれのその後。

 あれから数ヶ月が経ちました。

 驚くほど何もない、平穏な毎日を過ごしていた私たちは、次の春を迎えていました。そう、私たちが学園で過ごす最後の年がやって来ました。

 あと1年を学園で過ごし卒業した後は、みんなそれぞれの道に進んでいきます。家を継ぐ人、結婚する人、婚約者を探す人、あるいは働く人。外国に行く人もいます。

 ですが、この国は18歳が成人です。学園に在学中に成人して、家のために学園に来れなくなる人も少なからずいます。なので、申請すれば卒業試験を早めに受けることができます。と言っても、もちろん卒業試験を受けるときにまだ習っていない内容もたくさんあり、受かる人は多くはないのでほとんどの人は1年間学園にいます。

 レイモンド侯爵子息たち3人は、一応2ヶ月の自宅謹慎ののちに学園に復帰しました。しかし周囲の彼らに対する目は絶対零度で、メンタルが豆腐な3人は卒業試験をする申請をして受けていましたが、結果はボロボロ。こっそり学園長である叔母様に聞いてみたらほぼ0点だったとのことです。


「このままだと普通に卒業するのも怪しいわね~」


 と苦笑していました。教えてもらったお礼に叔母様が気になっていたというチーズケーキを渡しました。めっちゃ目がキラキラしていてちょっと可愛らしかったです。

 ちなみにあの人……ルーク・フリント侯爵子息は『自主退学』しました。まあおそらくフリント侯爵が退学させたのでしょう。あのようなことをしたのですから。

 私は未だにあの恐怖を鮮明に覚えています。襲われたこともそうですが、ジャスミンに対するあの異様な執着……いずれまた何かしでかすのではないかと思っています。というか彼女はルーク・フリントの存在を認知していたのでしょうか? 攻略対象に

 エドワーズは私に会う度に謝罪をするようになりました。別に彼自身は何も悪くないのですが……。

 というか、私の中で彼はまだ『エドワーズ』ではなく『フレッド』なんですよね。ときどき忘れてしまうことがあります。

 そうだ、私たち5人の話もしましょうか。

 まずヴィオラ。彼女はあの婚約破棄騒動で一番傷ついたであろう人ですが、あの後立ち直ることもできて、よくみんなで遊びに行っています。そしてなぜかみんな、ヴィオラにぬいぐるみをプレゼントします。でもこれは仕方がないんですよ。お人形さんみたいで可愛くて、クマのぬいぐるみとかいろいろ持たせたくなるんですよ。


「私ももうすぐ大人だよ?」


 とか言いながらも貰ってくれる辺り本当に優しい子です。今はまだ婚約者は決まっていませんが、そのうちいい人が見つかるでしょう。今度こそ、ヴィオラを幸せにしてくれる人を見つけないとですね。


 ドロシアも婚約者に裏切られた悲しみはしばらく消えなかったようでしたが、ある日たまたま立ち寄った研究所で薬学にとても興味を持ち、学園に通いながら勉強するようになりました。卒業後すぐに研究所に入ると決めたようで、結婚はしなくていいと言っていました。


「何だか馬鹿みたいに思えてきてしまったのよ、あの騒動で。私や私の家ははそこまで結婚に固執しているわけでもないし、相手がいないなら無理に結婚する必要もないんじゃないかと思ってね」


 そう言った彼女は、とても爽やかな表情をしていました。彼女らしい選択だと思いつつも、どこかで彼女を支えてくれる人が見つかればいいなと思ってしまいます。


 ベロニカと私は特に今までと大きく変わったことはありませんが、1つ言えるのは、婚約者がより甘くなったような気が……。

 2人だけでお茶をしていたときに今の生活について話したことがあったのですが、


「あの後、エドワーズ様が以前より優しい気がするんですの。優しいというか何というか、会う頻度も高くなりましたし、その、スキンシップが多くなったというか……」


 要するに、より甘やかしてくれるようになったんですね。あの『フレッドさん』にそんな一面があったなんて知りませんでした。今度会ったらいろいろ聞いてみたいですね。


「ユリアはどうなんですの?」

「私? ああ……帰ったら高確率で遊びに来てるかな」

「そうなんですの」

「たまに私がお邪魔するときもあるんだけど」

「王城に?」

「ええ。陛下も王妃様も優しくて、いつも歓迎してくださるの」

「よかったですわね」


 ベロニカは終始微笑んでいました。彼女もあの騒動に巻き込まれた1人なので、こうして何も起こらない日常が戻ってきて本当によかったです。

 え? ジェシカを忘れているって? やだなぁ最後に説明するつもりだったんですよ。私たち5人の中で一番変化が大きかった人ですから。

 ジェシカは……


 外国へ旅立ちました。


 あ、ジェシカが何かをやらかしたとかじゃないですよ? ジェシカはあの後いろいろ考えて家族とも話し合った結果、留学することになったんです。

 この春から旅立つことになり、一応卒業直前までとはなっています。ですがジェシカが希望すれば延長することができるとのことで、いつ帰ってくるかはまだはっきりしていません。友人との別れは寂しいですが、ジェシカの留学が上手くいくように応援したいと思います。

 そうして私たちは、学園最後の年を過ごしていました。

 3ヶ月が経ち、夏休みが始まる頃になりました。


 ジークと、しばらく会えなくなりました。






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