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私たちのパーティー。

 パーティー当日。私はピンクのフリルがふんだんに使われているドレスを身に纏い、いつもの3人にエスコートされて会場に入った。

 私達が足を踏み入れた瞬間、一斉にその場にいた人全員の視線が向けられた。正直あまり居心地は良くなかったけれど、これは仕方のない事だから、と堂々と立っていた。

 学園長の挨拶がもう少しで始まるらしいが、興味もないからみんなとおしゃべりをする。いつもと同じように、いや、今日はいつも以上に大切にしてくれている。


 しばらくそうしていると、急に話し声が途切れた。なんだろうと思っていると、どうやら学園長の挨拶が始まるらしかった。


「皆さん、ご機嫌よう。本日は日頃の努力を存分に発揮するとともに、3学年の親睦を深めて下さい。またこの会場内では、あなたたちが社交界に出たならばどのように振る舞うのがよいのか、考えて行動して下さい」


 最後にそう締めくくると、学園長は舞台を降りた。まあ形だけのそういうことにはちっとも興味なんてなかったし、話をしている間はご飯を食べていた。

 楽しくおしゃべりを続けていると、ダンスの時間が始まった。

 座学はずっと寝ていたけれどダンスだけは好きだったから結構得意だ。とは言っても、その辺にいるような人たちとは踊らず、気が付いたら3人と何度も踊っていた。とても楽しい時間が過ぎていき、この後、このパーティーで何が起こるのかも忘れてしまいそうになるくらいだった。


「ジャスミン、明日のパーティーで、僕たちは幸せになれるよ。全部解決できるから、そのときは、僕と一緒になってくれないか?」


 昨日、私は寮に戻る前にエリックに言われた言葉だった。私はエリックに特別大きな愛情を注いでいるわけではない。というか誰かにそんな大きな愛情を注いだことなんかない。わざわざそんなことをしなくても、みんなは私を愛してくれるから。

 それに、私は今回逆ハーエンドを狙っているんだから。エリックだけにしちゃったらそれも失敗しちゃう。

 でも、私はそれに頷いた。そして今ここにいる。

 ダンスの時間もあと少しで終わる……そんなときに、それは始まった。

 エリックは私の腰を抱き、オスカーとティルスは私たちを挟むようにして立った。

 それをダンスホールのど真ん中でやるものだから、音楽は止まるしダンスもみんな止めちゃうし。というか、こんな状況になってもジークハルトとエドワーズは来てくれない。この場にはいるはず。なのに何で来ないの……?


「「「お前との婚約を破棄する!」」」


 あ、始まったようです。ここからは演技派のジャスミンで行きましょう。


「あの、エリック様、婚約破棄とは、一体……」

「フン、白々しい。貴様の今までの行いから考えれば当然のことだろう」

「何を、おっしゃっているのですか……?」

「まだとぼけるつもりか、いい加減にしろ。貴様のせいで何度ジャスミンがその可愛らしい顔を涙で濡らしたことか!」

「エリック様、私には何のことか……」

「私を名前で呼ぶな!」

「……」


 エリックの婚約者はヴィオラ・レガート。気が弱いから今も押されている。


「……どういうつもりだ、ギルバード」

「どうもこうも、俺様の運命の人が現れただけのことだ。邪魔なお前にはとっととどこかに行ってほしいからな」

「こんなことをして、許されると思っているのか……!?」

「許されるとも。運命の人だからな」


 オスカーは……根は優しいんだよ。頭はついて行っていないけど。


「……ティルス、なぜ」

「僕は、守りたいものができたんですよ。僕じゃないと、ジャスミンは守れない」

「それが常識に反していることでも?」

「なら僕がその常識を変えます」

「……いつからそんなことを考えるようになったのかしら……」

 ……自分に酔うのはほどほどでお願いします。


「……レイモンド様。なぜ、婚約破棄をするのだとおっしゃるのですか……?」

「まだ白状しないか。いいだろう。この場にいる全員に知らしめてやろうではないか。お前が今までしてきたことをな!」


 そしてエリックは、『彼女たちがしてきたいじめ』を暴露し始めた。

 物が盗まれて壊されていた~とか、水を掛けられた~とか、後は階段から突き落とされたこととかを言っていた。

 周りもその話を信じてくれたようで、だんだんと悪役令嬢たちに非難の目が向けられるようになった。

 だが、ここで私たちは思わぬ反撃をされることとなった。


「……突き落とされたの、私ですけど」


 そう静かに行ったのは、他でもないユリアだった。彼女は私たちを、いや、私を睨んでいた。


(……!)


 彼女は更に続けた。


「階段から突き落とされたのは私です、と申し上げたのですが何か?」

「貴様、こいつの肩を持つ気か? 今なら聞かなかったことにしてやる。私たちとジャスミンに謝罪しろ!」

「謝罪をする理由がありません」

「謝罪しない理由がどこにある!? 貴様はジャスミンを傷つけたのだぞ!」


 3人は私のために怒ってくれている。だけど、私はもう何も考えられなくなっていた。


(どうしよう。もう、嘘がもたないかも……)


「ではお聞きしますが、ジャスミンさんはいつ、どこで、誰に階段から突き落とされたのですか?」

「なぜそんなことをいちいち言わなければならないんだ!」

「答えることができないのですか?」

「ジャスミンが泣いていたんだぞ! それで十分だろう!」


 すぐそこで繰り広げられている口論をどこか遠くで起こっているもののように捉え、考えた。


(やっぱり失敗してしまったんだ。どこかは分からないけど、きっと選択肢を間違えたんだ。やり直さないと……)


「どうせ、階段から突き落とした以外のジャスミンに対するいじめも、貴様らがやったのだろう! ジャスミンに謝罪しろ! そうだ、このパーティーは学園主催のものなんだ。学園にも貴様らの悪事をきっちりと報告するからな!」

「だから……」

「その必要はありませんよ」

「え……?」


 目の前には学園長が……そして、数ヶ月姿を見ることさえ叶わなかったジークハルトがいた。






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