狂い続ける世界。
私は数週間いじめの演技を続けた。3人はずっと私のことを心配し続けてくれていたけれど、結局ジークハルトとエドワーズが私のことを見てくれることはなかった。
(かなり努力したし、ジークハルトとエドワーズが近くにいるところでやってくことも結構あったのにな……まあいいや。ジークハルトたちの方は諦めて、3人に集中しよう)
正直なところ私は一番ジークハルトが好きだったのだけれど、なぜか避けられているので仕方がない。
3人はそのうち、四六時中私のそばにいるようになった。別に私が彼らに頼んだわけじゃないけれど、私が『いじめられてい
る』とこぼし始めたからかな。文字通り一緒にいてくれるから退屈はしなくなったのだけど、ちょっといじめられてる演技をしにくくなっちゃった……。
いつもそばにいてくれなくてもいいんだよって言ったら、逆によりへばりついてくる。最近ではもう大分諦めて放置気味になっていて、向こうから話しかけられたら笑顔で返すというのに落ち着いてきたように思う。
というか、なかなか状況が変化しなくてイライラしてきたから、悪役令嬢たちに直接攻撃しちゃった。まあ今のところは足引っ掛けるとか、トイレで水かぶせるとか、死ぬ危険なんて1つもないことしかしてないから大丈夫よ。万が一ヘマをやっても、3人がきっと私のことを助けてくれる。
(これは仕方のないことなんだから……なかなかシナリオも進まないし、キャラが勝手な行動ばかりするからヒロインである私が調整するためにやっているんだから)
私はいつものようにそう考えながら、学園の中を歩いていた。
やがて私のしていることに感づいてきたのか、少しづつ周りから人が減っていっているように感じてきた。
(気のせいよ、気のせい。私はヒロインなんだから、そんなことしたらゲームの世界が壊れちゃうし。もし本当にそうだとしたら、きっと無理矢理言うことを聞かせている人がいるのよ。そう、ユリアよ! ユリアならそういうことでもきっとする。というかユリア以外にあり得ない。みんなに無理矢理言うことを聞かせるなんて、許さない!)
私は今までやってきたことでは足りないのか、と思い、ついに、決してすることのなかったことをしよう、と決心をした。
階段から、突き落とす。
こうでもしないとユリアは目を覚まさない。ユリアが目を覚まさなければみんなも言うことに従うしかない。そうしたらこの世界はずっと歪んだまま。だったら、最大の原因であるユリアをどうにかすればすべてが解決する。
私はそれから綿密に計画を立てた。とは言ってもいつどのタイミングで突き落とすか、と言うだけなのだが、結構する日にユリアがどこの階段を使うかなんて分かるはずもない。その場で臨機応変に対応することにした。
そして、その日がやってきた。ユリアを『階段から突き落とす』日が。
奇しくも、彼女は放課後仕事に追われていて何度も階段を行き来していた。仕事が終わったであろう時間帯に自然な感じを装って後を付けた。
突き落としたその瞬間、ユリアの目が『私』を捉えたような、そんな感覚がした。
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