とんでもないモノたちを発見してしまいました!
『アイリス荘』を出た私たち3人は、ジークさんの勧めで市場に向かうことになりました。
今日は良く晴れていて暖かいので、外にはたくさんの人がいました。
「おねえちゃん、おねえちゃんは他の国ってどれくらい行ったことがあるの?」
「うーん、そうね……7つは行ったと思うけど、多すぎてもうあまり覚えてないかな」
ちなみに1つ目と5つ目の国で追っ手に見つかりそうになりました。さすがに結構焦るんですよねバレそうになると。危なかったです。
「すごい……どの国が一番楽しかったの?」
「一番か、一番楽しかった国は、2つ前に行った南の国かな。私がいたときに丁度国のお祭りをしててね、いろんな催し物にも参加させてもらったの」
「そうなんだ、リリーも行ってみたいなあ」
「もうちょっと大きくならないと、お父さんとお母さんが心配するかもね」
「むう……」
「一人旅もいいですが、ときどき募集している団体旅行で行くのもまた面白いですよ。いろいろな人と関われますし」
「そうなんだ。早く大人になりたいなあ」
3人でおしゃべりしながら歩いていると、10分くらいで市場に着きました。
「……すごい、こんなに大きいのね」
「この街は観光で来る人や商人などがたくさん出入りするので、市場がかなりあるんですよ。なかでもここの市場は有数で、国の中でも有名なんですよ」
「そんなに……今日だけで回れるかしら?」
「エリアが細かく分かれているので、また今度来ましょう」
「今度?」
「都合がつけばで構わないのですが……お嫌ですか?」
……なぜでしょうか、ジークさんにシュンとした耳と尻尾が生えているような気がします。
「いいですよ」
「そうですよね、やっぱり無理で……え? いいんですか?」
「ダメなんですか?」
「い、いえ、そういうことではないんです。ありがとうございます」
……なぜでしょうか、ジークさんのにピンとした耳とフリフリしてる尻尾が生えているような気がします。
「おにいちゃん、おねえちゃん、今日はどこに行くの?」
「そうですね、2番街はどうでしょう。一番いろいろな種類の店が集まっているところですよ」
「じゃあ2番街に行こー!」
2番街は本当にいろいろなお店であふれていました。
服を扱っているお店の隣には八百屋さんがあるし、その隣には骨董品のようなものを売っているお店がありました。
そして市場の中を30分くらい歩いていると、ふとあるお店に目が留まりました。
2人に声をかけてから店に入ると、目の前に私が生まれてからずっと探し求めていたモノたちが並んでいました。
「いらっしゃいお嬢ちゃ「お米だあああ!」……こりゃけったいなお客さんだねえ」
お店にはお米ひとつ取ってもうるち米だけじゃなくてもち米もあって、その中でもいろいろな品種のお米があるみたいです。ようやくお米が……お餅も食べられる……!
その他にもお味噌に醤油、お酢、みりんなど、私が発狂しそうになるくらいの勢いで探し回っていたモノたちが、って小豆と大豆もあるの!? 醤油とか別の物で作るんじゃないかって心配していたんだけど、本当にちゃんと醤油なのね、きっと。
「お嬢ちゃん、うちの物は気に入ってくれたかい?」
「はい!」
「そうかいそうかい。うちはそこまで人が来るわけじゃないけど、こんなに喜んでくれるお客さんがいてくれたんなら、旦那も喜ぶだろうよ」
「旦那さんがこのお店を?」
「ええ。もう5年も前にあの世に行っちまったけどねえ、どうしてもこの店は残してほしいってね、旦那は最期まで言ってたのさ。旦那は、お嬢ちゃんが来ることを知っていたみたいな口ぶりだったよ」
「そうなんですか、旦那さんに感謝しないといけませんね」
「旦那のことだ、きっと聞いとるさ」
そして私は、その店にあった物をほぼ全種類買いました。大満足です。ちなみにお店にいたおばあちゃんはジュリーさんだそうです。
「また来ますね、ジュリーさん」
「ああ、ありがとうね」
* * * * *
お店の外に出ると、2人が困ったような笑顔で待っていました。
「おねえちゃん、すごい量だね……」
私の両手には6つの大きな紙袋がありました。
「重いでしょう、持ちますよ」
「え? あ、ありがとう」
私が右手に持っていた3つの紙袋をスッと取ると、ジークさんはふわりと微笑みました。なんだかよく分からない気持ちになりました。
「さあ、行きましょう。そろそろ始まりますよ」
「おねえちゃん、早く―!」
私たちは市場の散策を終えて、大通りに向かいました。
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