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学園に戻ってみると。

 休養を終えた私は、久し振りに学園に行くことになりました。


(婚約破棄騒動の後、何だかんだでまだ1回も学園に行っていなかった気がする……あの後どうなったんだろう)


 彼らが大人しく連行されていたらいいのだけれど、悪あがきでもしていてトラブルを起こして行っていたらどうしよう……などと考えてしまいます。彼らの頭はきっとネジが吹っ飛んでいるので、思考を理解するのは多分一生不可能です。


「お嬢様、気を付けてくださいね」

「それは何についてかしら? ベル」

「もちろん、学園の備品を壊さないでくださいね、という意味ですよ」

「失礼ね、それはもう大分昔の話じゃないの」

「お嬢様はいつまでも変わられないようなので」

「まったく……そろそろ行くわ。また次の休暇に」

「はい、お嬢様。行ってらっしゃいませ」


 お父様は放置してきました。多分大丈夫でしょう。多分。


「何かあったらすぐに連絡をしなさいね」

「はい、お母様」


 お母様は侯爵夫人にしてはよく動いているので会話をすることはあまりないのですが、私や兄、姉を大切にしてくれていました。姉は、もういませんが。


「誰かに嫌なことをされたらすぐに周りに言うんだぞ」

「もう小さな子供でもないんだし大丈夫よ、お兄様」

「でもユリアが小さいときは……」


 このちょっとヘタレっぽいところがあるのはお兄様です。そこそこ歳が離れているのですが、小さい頃はよく遊んでもらっていました。はっきり言って妹バカです。私が何をしてもにこにこしているので、逆に私が怒るくらいです。


「じゃあ、行ってきます」


 こうして私は、また学園に戻りました。まあ寮暮らしではないので今日も帰ってくるのですが。


 * * * * *


「やっと、着いた……」


 久々の学園の朝は、一見いつもと変わらないようでした。しかし。


「「「「「「「ユリア様!!!!!」」」」」」」


 ……誰、みんな。

 私が馬車のドアを開けた瞬間、外にいた最早誰が誰かもまったく分からない方々が一斉に集まってきました。みんな何かを口々に言っているようですが、多すぎて何を言っているのか何も聞き取れません。


「あの、お集まりいただいたところ大変申し訳ないのですが、私、教室の方に向かいたいのです……」


 私が少し抑え気味の声でそう呟くと、教室までの道がぱっかりと分かれました。

 ……なんかありましたねこういうの。

 私はいたたまれない気持ちになりながら馬車を降り、教室に向かいました。


「ユリア様!」

「ユリアさん!」

「ユリア!」

「ユリアちゃん!」


 ……ああもう知り合いとか友達は不特定多数の中に紛れないで! 聞き覚えのある声だけど分かんなくなってきてます! というかそもそもこのユリアコールは何なのですか!?

 朝から体力を無駄に削られた私は、何とか教室に辿り着きました。


「「「「「「「ユリア様!!!!!!」」」」」」」


 ……教室には、ユリアコールを同じようにするクラスメートがいました。


(誰、黒板にでっかく『ユリア様』って書いたの……)


 久々の学園なのに、今日は疲れそうです。






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