彼の思いは。
次に目が覚めると……。
「おはよう、ユリア」
……私がよく見たことのある笑顔が目の前にありました。
「って近い近いー!!」
本当に、あと10cmもあるかどうかぐらいの距離にジークの顔があって、私の起きてすぐの眠気も全部吹き飛んでしまいました。心臓に悪すぎます……!
「あ、顔赤くなった。恥ずかしいの? 可愛いなぁ」
「ば、ばかぁ……というか何でこんな朝早くに私の家にいるの? お父様とお母様は……」
「昨日に全部聞いてたんだよ。ユリアが襲われたって……」
「あ……」
私は布団から体を起こしました。ジークは私の膝の上に頭乗せて、しばらくじっとしていました。
「はあ……ごめんね? 怖かったでしょ? 僕が一緒にいれたらよかったのに……」
「大丈夫だよ、ジーク」
「大丈夫なわけあるか!」
「え?」
珍しく……というより、ジークがこんなに声を荒げたのは初めてでした。バッっと顔を上げた彼は、泣きそうになって、いえ、本当に目に涙を浮かべていました。
「ユリアに何度も怖い思いをさせてしまっているのに、僕はそのとき、いつも何もできていないんだよ? 僕は君の婚約者なのに、君の恋人なのに……」
「ジーク……」
「本当に、ごめん。僕は「ジーク」……え?」
ジークがあまりにも辛そうにしているので、思わず彼の言葉を遮ってしまいました。
「私はジークがいてくれて本当によかったと思っているんだよ? ジークは私が傷ついたときにいつも傍にいてくれるもの。ジークがその場にいたとかいなかったとかは関係ないの。私のことをこんなに大切に思ってくれている、それだけで十分すぎるくらいなんだよ」
「でも……」
「私は、ジークがいるから怖くても大丈夫なんだよ。ジークは必ず私を助けに来てくれるって分かってるから」
「ユリア……」
ジークは感極まったような表情をしていました。私をそっと抱きしめたジークの肩は震えていて、私の肩口が少し冷たくなってきているのが分かりました。
「ユリア、こんなに頼りない僕だけど、まだ好きでいてくれてる?」
「何言ってるの。私はジークのことを頼りないなんて思ったこと一度もないよ? 私、ジークが大好きだよ」
「本当に?」
「もちろん」
「ありがとう……」
ジークは少し嗚咽を漏らし始めました。私のことをこんなに大事にしてくれるのは彼ぐらいなのではないでしょうか。
「そういえば、何でジークは私をこんなに大事にしてくれるの?」
「好きだから」
「例えばどこが?」
「うーん、困ったな……まず優しい。可愛い。話をしてると楽しくなる。笑顔が可愛い。あと面白い。気遣いができる。可愛い」
「……もういいよ」
何で可愛いばっかりなんですか……。
「安心してね。僕がユリア以外を好きになることは絶対にないから。もしそうなったら、僕に何をしてもいいから」
「何もしなくていいようにしてよね」
「当たり前だよ」
不意に笑いが込み上げてきました。どちらからともなく笑いだし、落ち浮いたのは大分経ってからでした。
「ねえユリア、今日はもうずっと家にいるよね?」
「そうだね~流石にこんなことがあった次の日に、外に出ようなんてならないし」
「僕も一緒にいてもいい?」
「お父様がいいって言ったらね」
「やった! ありがとう」
その後1分でお父様のところへ行き許可をもらったジークは、この日1日トイレとお風呂以外私から離れることはありませんでした。
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