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任せてしまいましょう。

 私が自室へ戻った頃には、若干外が明るくなっていました。


(……今日は、寝よう……)


 眠ろうとしているところに襲われて、わけが分からないことを言われ、私の体力はほとんど残っていませんでした。

 本能のままベッドにダイブしようとしたその瞬間、部屋の扉が慌て気味にノックされました。

 少しだけ嫌だな……と思いながらドアを開けると、案の定そこには寝間着姿のお父様がいました。


「おはようユリア。朝早くにすまないね。突然のことなのだが、ユリアは此奴について何か知っているのか?」


 そう言ったお父様が掲げたのは、やはりルークでした。

 ちなみに私たちが見たときはまだ普通だった彼が気絶させられていました。彼の様子を見るに、廊下をずっと引きずられていたのでしょう。まあかける情などありませんが。


「おはようございます、お父様。実は、夜中にこの方が部屋に侵入してきまして……」

「何だと!? ユリア、怪我はしていないのか? なぜもっと早くに起こしてくれなかったんだ……」

「お父様が気持ちよくお休みのところを邪魔するのはよくないと思いまして」

「そんなことは気にしなくていいんだよ。今度こんなことがあったらすぐに言っておくれ。まあ二度と起きてほしくはないが」

「分かりました」


 お父様は一呼吸置き、また話を始めました。


「というか、此奴はなぜ我が家に来たのだ? 見たところフリント侯爵の次男坊のようだが……ユリアは此奴と接点があったのか?」

「いえ、私も初めてお会いしました。先ほど話を聞いてみたのですが、どうやらチェリス子爵令嬢を大変慕っているようで。私が彼女に危害を加えたと言いよく分からないことを呟いていましたよ」

「何? まだそんな根も葉もないようなことを言う輩がいたのか。お前がそんなことをするはずがないのに」

「分かりませんよ? 女の嫉妬は時に己を歪めますもの」

「お前がそんな子ではないことを、私がよく知っているよ。私の、大事な娘なのだから」


 ……どうしてでしょう、なぜだが急に胸が苦しくなってきてしまいました。

 どうしようもなくて慌てていると、お父様が私をそっと抱き寄せました。いつ振りか分からないお父様の抱擁にとても驚いてしまいました。


「私はお前の親なのに、辛い思いをさせてすまない。いつかこの家を出るときが来ても、お前は私の可愛い娘だよ」

「お父様……」

「最近はどこかの殿下に取られっぱなしだからな。ここにもちゃんと頼れる人がいるってことを認識してくれないとな」


 そう言ってお父様は、いたずらっ子のように笑いました。


「さあ、お前は昼までお休み。一睡もできていないのだろう? 隈がひどいぞ。昼食の時間になったら起こしに来るから、ゆっくり眠りなさい。此奴は私が処理するから」

「……はい」


『処理』っていうのが少し気になりましたが、お父様ならきっと上手くやってくれるでしょう。お父様の手に負えないならジークが飛んでくるでしょうし。後はお父様の言うとおり任せてしまいましょう。


「じゃあ、お休み。ユリア」

「お休みなさい」


 静かになった部屋はすっかり明るくなっていました。けれど、私の眠気はそんなものでは全く吹き飛ぶ気配がありませんでした。

 私はさっきやり損ねたので、今度こそ自分のベッドにダイブしました。いつでもふかふかなベッドは私をすぐに夢の中に連れて行ってくれます。


(……と、風邪引かないようにしないと……)


 だんだん薄れていく意識の中で毛布を手繰り寄せて頭までかぶり、そこで私は完全に眠ってしまいました。






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