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反撃です!

(……え?)


 私は、自分の目を疑いました。でも、確かにここにいてもおかしくはない……でもどうして……?


「……フレッド、さん……?」

「やっほー、ユリアちゃんだったっけ? 久し振りだね~」

「どうしてここに……?」

「ん? それはね……」

「エドワーズ様」


 ……え?


「久し振り、ベロニカ」

「それほど久し振りでもないじゃないですの」

「まあそうだね~この間会ったとこだね」


 ……ん?


「……あの、ちょっと話について行けていないといいますか……」

「ユリアちゃんには隠してたからね~特に意味はなかったんだけど。というか、ユリアちゃんこっちに帰ってきてから僕と1回会ってるよ?」

「え?」

「……やっぱり気付いてなかったか」


 ちょっと待ってください、今目の前にいるのはフレッドさんで、でもベロニカはエドワーズ様って呼んでて、仲良いみたいで、私が帰ってきてから会ったことがある、んですか……?


「……あぁ!」


 思い出しました! そういえば割と最初の方にベロニカの婚約者って紹介された人いました! 名前は確か……。


「……エドワーズ・フリント侯爵子息……?」

「おぉすごいね~思い出したの」

「全然気付きませんでした……」

「だろうと思ったよ」


 じゃあ『フレッドさん』は一体……?


「『フレッド』は、僕が外で色々するときの名前だよ~。僕はジークハルト殿下の側近だから、何かと動くことが多くてね~」

「僕も気を使わないでも大丈夫だからって、ついいろいろ連れ回しちゃうからね」

「はぁ……」

「ユリア、ごめんなさい。エドワーズ様に止められていて」

「そうだったの」


 なんかもう、びっくりの連続です。


「そろそろこれも終わらせようか?」


 珍しく真面目な顔をしたフレッドさん改めエドワーズさん? 様? が、レイモンド侯爵子息たちに向かって言いました。


「……様とかやめてね」

「……何で分かったんですか」

「顔に書いてあったよ」


 そんなことは置いておいて。


「まずレイモンド侯爵子息、オスカー伯爵子息、ロバート伯爵子息に聞く。何か言いたいことはあるか?」

「わ、私は、ジャスミンを守っただけで……」

「守っただけ、だと?」

「彼女はいじめられて傷ついていた。そんな彼女を見捨てろというのか!?」

「……チェリス子爵令嬢がいじめられていたことの証拠は?」

「え? そんなものなくても……」

「いじめられている、ということが嘘だとは疑わなかったのか?」

「どういう、意味ですか……」

「どういう意味も何も、チェリス子爵令嬢が嘘をつき、自分にすり寄ってきていただけだとしたら?」

「そんな、ひどいですエドワーズ様!」


 ……いきなりやたら甲高い声が聞こえてきました。声の持ち主はやはり、ジャスミンでした。


「エリック様たちは、私を守ってくれていたんです!」

「では、実際に受けたいじめの例でも聞こうか」

「れ、例……ですか?」

「当たり前だ、証拠がなければ意味はないのだからな。それとも、話せないのか?」

「……教科書を、ボロボロにされました」

「それは誰から?」


 ジャスミンはなんと……というかやはり私を指差しました。


「ユリアちゃんはこれについてどう思う?」

「いや……教科書ボロボロにされたの私だし……」

「嘘よ、そんなの嘘よ……!」

「他には?」

「ヴィオラはノート等の私物をぐちゃぐちゃにされた、ジェシカは廊下で水をかぶせられた、ドロシアは足を何度も引っかけられた。ベロニカは大事にしていた物を盗まれて壊された。私はこの間、階段から突き落とされた」


 周りが騒然としました。私たちはあまりこれらのことを周りに言っていなかったので衝撃だったのでしょう。でも、ちらほらと「私、ジャスミンさんがいじめてるの見たことあるよ」とか言う声が聞こえてきます。やっぱり見られていたんですね。


「違う……違う……! こんなのおかしい!」


 ……おっと、ジャスミンがそろそろ限界のようです。


「何でシナリオ通りに動かないのよ! 何でヒロインの私に攻撃するのよ! 悪役は私のために消えてちょうだいよ!」

「え……? ジャスミン、何を、言って……」

「ああ本当に無駄なことをしたわ。もう1回やり直さないと。ていうか運営に苦情入れとかないと。ヒロインにしてくれるのはいいけど、もう少し簡単にしてくれないと進まないじゃない! 面倒な性格の奴ばっかりで嫌になるわよ」

「……」


 ゲームと現実の区別がついていなかったようですね。まあ元々の彼女の性格にも問題はあったのでしょうけれど。

 一連の流れを見ていた学園長が、ようやく口を開きました。


「チェリス子爵令嬢は停学処分です。自宅に帰り己の行いに向き合いなさい。レイモンド侯爵子息、オスカー伯爵子息、ロバート伯爵子息は2ヶ月の自宅謹慎を命じます。連れて行きなさい」


 学園長はそれだけ言うと、この場を去ってしまいました。

 ジャスミンと3人は衛兵に外に連れて行かれました。


「……終わった、の?」

「終わったよ、ユリア。よく頑張ったね」


 何だかもう、本当に、疲れました……。


「ユリアちゃん、ありがとう。私1人じゃ、何もできなかったから」

「いいんだよヴィオラ。私たち友達でしょう?」

「うん!」

「まあ私は当分婚約者はいらないかな」

「ジェシカ、もう16なんだし、それほど時間があるわけじゃないんだよ?」

「ならば余計にだな。もっと自分のために時間を使いたい」


 ジェシカはとことん前向きです。


「ユリア、今度困ったことがあったらすぐに言ってね。私にできることは何でもするから」

「ありがとうドロシア」

「それにしても驚きましたわ。まさかユリアとエドワーズ様が面識があったなんて」

「それは私もびっくりしたよ」


 やっと、落ち着いてみんなで話せるようになりました。


「じゃあ、そろそろ僕たちは抜けようか。少し外で休もう?」

「そうだね」


 会場から出ると、穏やかな風が吹き抜けていきました。



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