意外な人の登場でした。
「……は?」
私が思わず零してしまった言葉に、レイモンド公爵子息たちはポカーンとしていました。
ええい、こうなったら誤魔化すのも無駄ですし、そろそろ反撃しましょうか。
「階段から突き落とされたのは私です、と申し上げたのですが何か?」
「貴様、こいつの肩を持つ気か? 今なら聞かなかったことにしてやる。私たちとジャスミンに謝罪しろ!」
「謝罪をする理由がありません」
「謝罪しない理由がどこにある!? 貴様はジャスミンを傷つけたのだぞ!」
「私がいつジャスミンさんを傷つけたのか教えてくださいませんか?」
「貴様は階段から落とされたのは自分だと嘘をついたのだ! ジャスミンは辛い思いをしていたのに、それを否定したのだぞ!」
「……私は、事実を申し上げただけです」
「戯言を。そこまでジャスミンを傷つけたいのか!」
「ジャスミンを傷つけるってんなら、女だろうと容赦しねぇぞ!」
「ジャスミンを傷つけないでください」
いやいや、ほんとにあなたたち大丈夫ですか?
「ではお聞きしますが、ジャスミンさんはいつ、どこで、誰に階段から突き落とされたのですか?」
「なぜそんなことをいちいち言わなければならないんだ!」
「答えることができないのですか?」
「ジャスミンが泣いていたんだぞ! それで十分だろう!」
「……」
いけません。思考が停止してしまいました。
「ちょっと待ってくださいまし。ジャスミンさんが泣いた、だけですの?」
「何か問題があるか?」
「あるかも何も、それでは証拠が1つもないでしょう?」
「はあ? ジャスミンが泣いていた、これ以上の証拠がどこにあるというのだ?」
……呆れて何も言えませんでした。泣いていたのが証拠? どれだけ頭お花畑なんですか……。
「どうせ、階段から突き落とした以外のジャスミンに対するいじめも、貴様らがやったのだろう! ジャスミンに謝罪しろ! そうだ、このパーティーは学園主催のものなんだ。学園にも貴様らの悪事をきっちりと報告するからな!」
「だから……」
「その必要はありませんよ」
「え……?」
さほど大きくないけれど凛としている声が、会場内に響きました。
「……が、学園長……」
誰かが、そうつぶやきました。ですが、これで終わりませんでした。
「はあ、学園長に先を越されてしまったな」
「ジーク……ハルト殿下?」
「ふふ、何でそんな他人行儀なの? いつもみたいにしてたらいいのに」
「どうして……?」
「ごめんね、学園長と話し込んでて、来るのが遅くなっちゃった」
「何で、学園長と?」
「ああ、それはね」
滅多に見ない『王子様』っていう感じのジークは、レイモンド公爵子息たちを一瞬見てから話しだしました。
「僕、知っていたんだ。こうなること」
「え?」
「側近から聞いていたんだよ。今日のパーティーでやらかすってね」
なんとびっくり、ジークは最初から知っていたようです。
「前々から学園長はそこの3人の素行が目に余ると感じていたそうでね、だけど処分を下すための決定打となる事例がまだなかったから、あえて放っておくことにしたそうだよ。そのせいで、ユリアやユリアの友人の令嬢方に辛い思いをさせてしまい、申し訳ない……」
「……まだ、整理できていないところもあります。ですが、私たちはもうある程度割り切れています。なので、謝らないでください。第1王子殿下」
「ヴィオラ……」
突然の登場でしたが、少し穏やかな気持ちになりました……が。
「おい! 無視をするな!」
……完全に無視してました。
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