中二病が炸裂していました……
シーン。
あまりにも唐突過ぎる彼らの宣言に、その場にいた全員が固まってしまいました。
「おい! 聞いているのか!?」
誰も何も言葉を発しないので極まりが悪くなったのか、若干赤くなったレイモンド公爵子息がまた叫びました。
「……はい。あの、エリック様、婚約破棄とは、一体……」
「フン、白々しい。貴様の今までの行いから考えれば当然のことだろう」
「何を、おっしゃっているのですか……?」
「まだとぼけるつもりか、いい加減にしろ。貴様のせいで何度ジャスミンがその可愛らしい顔を涙で濡らしたことか!」
「エリック様、私には何のことか……」
「私を名前で呼ぶな!」
「……」
おっと、いけません。びっくりしすぎてヴィオラだけに相手をさせてしまいました。こうなることはみんなが予想していましたが、やはり実際に告げられると悲しく苦しいのでしょう。ヴィオラは今にも泣きだしそうになるのを必死に堪えていました。
「……どういうつもりだ、ギルバード」
「どうもこうも、俺様の運命の人が現れただけのことだ。邪魔なお前にはとっととどこかに行ってほしいからな」
「こんなことをして、許されると思っているのか……!?」
「許されるとも。運命の人だからな」
……いや普通に大丈夫ですか? 運命の人って、あなた何歳ですか……中二病拗らせちゃいましたか。お疲れ様です。
ていうか冷静ですね、ジェシカ。元からほとんど気にしていなかったからでしょう。
「……ティルス、なぜ」
「僕は、守りたいものができたんですよ。僕じゃないと、ジャスミンは守れない」
「それが常識に反していることでも?」
「なら僕がその常識を変えます」
「……いつからそんなことを考えるようになったのかしら……」
この方も相当ですね……あれですか、みなさん揃って中二病になっちゃいましたか。
ドロシアは……もしかしたらヴィオラ以上に傷ついているかもしれません。パッと見ただけでは分からないかもしれませんが、ドロシアの表情が今まで見たことがないくらい悲痛に歪んでいました。
「……レイモンド様。なぜ、婚約破棄をするのだとおっしゃるのですか……?」
「まだ白状しないか。いいだろう。この場にいる全員に知らしめてやろうではないか。お前が今までしてきたことをな!」
レイモンド公爵子息はまた叫びました。そして『ヴィオラの悪事』を語り始めました。
「まず貴様は、編入してすぐのジャスミンに対し冷たくした。そしてジャスミンの持ち物を奪ったり壊したりした!」
……ん?
「ジャスミンは私たちに助けを求めた。誰にも助けてもらえず、毎日が辛いと泣いていたのだ。私たちはジャスミンを守るためにずっとそばにいることにした。にもかかわらず、逆上した貴様は更に彼女をいじめたのだ!」
……はあ。
「彼女の私物に手を出すばかりか、貴様は他の女子生徒とともに暴行を加えた! 廊下で頭から水をかぶせたり、わざと転ぶように足を引っかけたりしたことも知っているんだからな!」
……なんか、どこかで聞いたことがあるような。
「そして酷いときには階段から突き落とした! 保健室に運ばれたジャスミンは恐怖に震えていたのだぞ!」
……あのー。
「……突き落とされたの、私ですけど」
あ、やば。思わずポロっと言っちゃいました。どうしましょうかね……。
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