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準備は大事です。

 みんなで、反撃しようと決めたその翌日。

 私たちは夜のパーティーのための準備を進めながら、証拠やその他いろいろなものをあちこちから出してきました。会場にはもちろん持って行けるはずがないので、侍女にお願いして、合図をしたら持ってきてもらうように頼みました。

 あ、いつもは侍女はいませんよ? こういうときだけ家から来てもらうことになっています。


「お嬢様、今日はどのドレスにいたしましょう?」

「うーん……好きに決めていいよ」

「かしこまりました。ではこちらにしましょう」


 侍女に、持ってきてくれたドレスの中から1着選んでもらいました。ほぼ黒のワインレッドのマーメイドドレスでした。……いや悪役感。真っ黒じゃないからまだいいですけど、私別にスタイルそこまでよくないから着こなせるかな……?


「アクセサリーは……この間第1王子殿下から頂いたものにしますか?」

「そうね。ネックレスとイヤリングをもらったから、それを付けるわ」


 実はジークからアクセサリーをときどきもらっていたのです。もとから持っているものもあるし別にいいと言っても、


「いいから、きっとユリアに似合うから」


 ってそのまま押し切られてしまったのです。まあ本人がいいなら……とありがたくもらったのですが、何だか怖くて今まで付けたことがありませんでした。


(だってこれ、明らかにめっちゃ高いものだし……)


 こういうものはこういうパーティーなどで付けるものなのでしょうし、ありがたく使わせてもらいましょう。


「はいお嬢様、目をつむってくださいね」

「うぅ……」


 あー始まってしまいました。化粧ですよ化粧。そんなことしたってほとんど変わらないでしょうに、する意味はあるのでしょうか。まあ浮くのも嫌なのでされるがままになっておきますが。

 ……にしても、化粧とかされてる間って暇ですよね。


「お嬢様起きてください」

「ね、寝てないよ」

「いいえ、寝かかっておりました」

「寝てないんだし……」

「はい、髪も結いましたよ。これでもうほとんど準備完了です」

「ありがとう。そうだ、少しジークのところに行ってくる!」


 ジークにこの変わり様を見てほしくて、私は部屋を飛び出しました


 ドガッ!


「……あれ?」


 なんか聞こえてはいけないような音がしたような……。

 もしかしてと思い下を見ると、ジークと目が合いました。


「……何してるの?」

「君に会いに来たら、君じゃなくてドアが迎えてくれたようで」

「ご、ごめんね……」

「大丈夫だよ。これくらい平気」


 よいしょ……と立ち上がったジークは私を頭のてっぺんからつま先まで見て、微笑みました。


「すごく似合ってるよ」

「あ、ありがとう……」


 まだこんな甘々なジークには慣れません。


「あ、ネックレスとイヤリング、付けてくれたんだ。嬉しいな」

「え、ああ、うん」

「可愛いな……」

「!?」


 待って、ここは家でも『アイリス荘』でもないの……!


「おっと、そろそろ僕は行かなきゃいけないんだ。また夜に会うかもね」

「うん。ありがとう」


 * * * * *


「ではお嬢様、行ってらっしゃいませ」

「ええ。あとでよろしくね」

「はい」


 侍女にはあとで来てもらうので、一度みんなで集まることにしました。

 会場から少し離れた場所で待ち合わせをしていたのですが、待ち合わせの15分も前に来てしまったので、流石にまだ誰もいませんでした。


(今日はパーティーは楽しんで、その後だな。あまり大事にするのもよくないし、って、そういうややこしいことは無理だな。ベロニカに任せよう。それよりも、私はゲームの強制力などがないか見ておかないと。ちゃんと逃げられないようにするんだから)


 そのように頭の中で思考を繰り広げていると、視界の先が僅かに暗くなりました。顔を上げると、頼もしい友人達がいました。


「さあユリア、行きますわよ」






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