ヴィオラに話を聞いてみました。
そういって右手を挙げたのは、ヴィオラでした。
ヴィオラは少し躊躇いながら、話し始めました。
「昨日、とは言っても、最近エリック様はほとんどの時間をジャスミンさんと一緒に過ごしていらっしゃるので、昨日に限られる話ではないのですけれど……」
この時点ではっ倒したくなりますね。可愛いヴィオラにこんな悲しそうな顔をさせるなんて……! まあここは落ち着いて話を聞きましょう。
頑張って言葉を探しているようなヴィオラに、ジェシカが声を掛けました。
「ねえヴィオラ、最近ずっと続いていることとかはある?」
「続いていること、ですか……お昼休みは中庭のベンチでお話ししていらっしゃるところをよく見かけます。最近は中庭には行かないようにしているのでどうか分かりませんが、きっと……」
ヴィオラはそこで一度黙ってしまいました。当然でしょう、婚約者がそんなことをしているところなんて、見たいはずがありません。
「それと、昨日気付いたのですが、エリック様がジャスミンさんと歩いていらっしゃるときに、腕を組んでいらっしゃったの」
「……!」
私は驚きのあまり言葉を失ってしまいました。腕を組むというのは周りが引くぐらい仲のいい夫婦がすることで、婚約者であってもする人はまずいません。ましてや未婚の、婚約者でもない男女がこんなことをするなんて、非常識もいいところです。
更に、貴族の場合女性側はとてもはしたない人というレッテルを貼られてしまいます。
「……随分と馬鹿なことをするようになったのね、レイモンド公爵子息は」
ため息をつきながらドロシアがそう言いました。
「それと、エリック様は挨拶をしてくれなくなりました……私が声をかけてもほとんどお話をしてもらえないのです……」
「なんてこと……」
ベロニカが思わず、といった様子で呟きました。
私たちがみんな黙りこくっていると、ジェシカが手を挙げました。
「そういえば前に、ユリアがジークハルト殿下からジャスミンさんとチェリス子爵家がどうとか言っていなかったか? あれはどうなったのか聞いていたりしないか?」
「ああ、それね。まだみんなには話していなかったわね。別に口止めはされていないからここで話すわ。簡潔に言うと、やっぱり養女になったわ」
「……予想通り、か。だからといってあくまでも子爵家。私たちの婚約者ではよほどのことがない限り釣り合わないと思うのだが……まあジャスミンさんは何をするか全く分からないからな……」
ジャスミンさんは編入した後2週間ぐらいしてチェリス子爵家の養女になりました。チェリス子爵家には女児がいなかったので案外すんなりいったようです。
「本当に、双方何をしているのか……そうだ、ティルスのことも聞いてもらえる? 最近大分私に対する態度が冷たいというか、まるで他人みたいにするのよ」
ドロシアが我慢ならない、といった表情でそう言い出しました。
「じゃあ次はドロシアね。ヴィオラ、話してくれてありがとう。辛かったらいつでも私たちを頼ってね? みんな友達なんだから」
「……うん。ありがとう、みんな」
ヴィオラは弱々しくうなずきました。今すぐにでも行動を起こしたいのですが、ここはまだ大人しくしておいて、みんなまとめて一気に行動にしましょう。
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