いろいろと想定外です。
次の日の朝目が覚めると、身動きが取れませんでした。
「……んん?」
何とか頑張って寝返りを打ってみると、すやすやと眠っているリリーちゃんが私に抱きついていました。
試しにほっぺたをつついてみると、「うにゅ……」とか寝言を言って私にすり寄ってきました。リリーちゃんはいつでも天使ちゃんです。
いつもなら街に着いた翌日でも朝早くから街に繰り出すのですが、今日はもう少し寝ていましょうかね。かわいく眠っているリリーちゃんを起こすのもちょっと可哀想ですし。
-5時間後-
「ん……あれ、私……」
次に目が覚めたときには、すっかりお昼になっていました。下の階が少し騒がしいので、丁度お昼ご飯の時間なのかもしれませんね。
さすがにこれ以上寝ているわけにもいきませんしお腹も空いてきたので、まだ寝ているリリーちゃんを起こそうとしました。すると、突然部屋のドアが乱暴にノックされました。
私が返事をする前にドアを開けて入ってきたのは、クマさんでした。
「おう嬢ちゃん、ようやく起きた「しーっ」あ? 何だ?」
「うにゅ……おねえちゃん?」
「あーもうリリーちゃん起きちゃったじゃないですか」
「何で俺が責められなきゃなんねえんだ。だいたいもう昼完全に過ぎてっからな」
「はいはい」
「ったく……とりあえずもう起きろ。腹減っただろ」
「あれ、お昼って付いてました?」
「リリーのついでだ。いらんなら別にいいが」
「ねーねー、私おねえちゃんと一緒がいい」
「よしいただきます」
「早っ。じゃあ着替えとか終わったら、下に降りてこい。俺は厨房で準備してっから」
「「はーい」」
さーてと、リュックから着替えを出しましょうか。
まあ私の服なんてほとんど全部地味なブラウスとスカートですけど。本当はTシャツにジーンズがいいんですが、当然この世界にジーンズなんてないし、Tシャツもあるかどうか分かりません。かといって自分で作ることもできないので早々に諦めました。
「よし、着替え終わりっと。……そういえばリリーちゃん、着替えって持ってきてた?」
リリーちゃんは首を横に振りました。ですよねー、昨日枕だけはしっかり抱えてましたけどねー。
私の服を貸そうにもサイズが大きすぎるしどうしようか……と思っていると、今度は控えめなノックが聞こえてきました。
「はい」
「すみません、お部屋に入っても構いませんか?」
「あ、おかあさん!」
「え、リリーちゃんのお母さん?」
入ってきた人は、窓際で本を読んでいるのが似合いそうな女性でした。
「イザベラと申します。もうご存知かと思いますが、リリーは私達の娘です」
「私はリアです」
「リアさんですね。どうぞよろしくお願い致します。それはそうと、私はリリーの服を持ってきたのですが……」
なんかイザベラさんの目がキランと光ったような気がしました。その、獲物を見つけた動物みたいな感じで。
「申し訳ございません。すぐに戻って参ります!」
そう言うが早いか、イザベラさんは風よりも早く廊下を走っていってしまいました。
「い、イザベラさん!?」
「おかあさんときどきこんな感じなんだよ……」
「そ、そっかあ……」
-2分後-
帰ってきたイザベラさんは、いろいろな……え? 何故にそんな大量の服を、しかも結構ひらひらの……なんか箱がたくさんあるんですが、く、靴なんですか……。
「さてリアさん、会ってすぐで悪いんだけど、ちょっと私のわがままに付き合ってもらえないかしら? (ニッコリ)」
なんか口調まで変わってるんですけど!?
「は、はいぃ!」
「おねえちゃん、諦めるの早い……」
-1時間後-
「よし!なかなかいい感じになったわね。やっぱりこれが一番似合うわ。リアちゃん、どう?」
「つ、疲れた……」
「おねえちゃんかわいい!」
「そう? ありがと」
もともと着ていた地味ーなブラウス&スカートをはぎ取られた私は、真っ白ですごくふわふわしたレースのワンピースを着せられました。どこかに引っ掛けて破きそうです。腰で結ばれているリボンが少し苦しい気もします。
更に小ぶりなネックレスを付けられ、赤いパンプスを履かされました。ヒールは粘って3cmぐらいにしてもらいました。
髪もショートヘアだけど、何だろう、三つ編みじゃないけど、なんか編まれてます。どうなっているのかさっぱり分かりません。
ちなみにリリーちゃんも私とお揃いの格好になっています。とは言っても、危ないのでネックレスはしてませんし、赤いバレエシューズのような靴を履いています。鏡の前でくるくる回っているリリーちゃんはかわいいです。
「さて準備もできたことだし、下に降りましょうか。そうそう、今日は夕方から前の通りでちょっとした催し物するらしいから、2人で行ってらっしゃい」
「おねえちゃん、後で行こう!」
「うん」
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