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僕とユリア。

「リア!!」


 目の前が真っ赤に染まっていくようだった。

 リアは僕に気付いてこちらを見ていた。彼女には似合わない今にも泣き出してしまいそうな表情をしていた。


(リアに、何をした!?)


「あぁ? 何だテメェ。おいおまえら、とっととこいつを放ってこい」


 リアを抱えている男がそう指示を出すと、周りにいた男たちが僕に襲いかかってきた。手には何らかの刃物が握られていた。


「ジーク!!」


 突然リアが僕の名前を呼んだ。きっと僕のことを心配してくれたんだろう。でも、それは必要ないんだよ。


(僕は、強いから)


 実際僕は強い。子供の頃からずっと格闘技などを学ぶことを義務付けられていたからだ。ある程度なら護衛なしでも大丈夫なのでは? と思うぐらい本格的にやらされていた。

 もちろん相手を傷つけないように倒すこともできる。だから……


(よし、これで終わりか)


 一瞬で相手全員を無力化することができた。

 男から解放されて倒れ込みそうになるユリアを抱きとめ、小さな背中を優しくさすった。


「リア……ごめん。こんなことになるなんて思いもしなかった」


 気が付けば、僕はユリアに謝っていた。


「・・・リア、もう大丈夫。だから、泣いていいよ」

「え・・・?」

「そんなに泣くのを我慢してる顔しないでよ」


 しばらくぎゅっと抱きしめていると、ユリアは静かに嗚咽を漏らし始めた。本当に怖かったのだろう。小さな子供のように泣き、僕に必死にしがみついていた。

 僕はユリアが落ち着くまで、ずっと抱きしめていた。


 * * * * *


 それから、ユリアが熱を出して寝込んだり、病み上がりで脱走しようとしたり、いろいろあった。

 そうやってまた穏やかに過ごしていたある日、またあの馬鹿親父が帰還命令を出しやがった。

 今度はユリアもこの場にいるから、相談することにした。


「ユリア、君が僕と一緒にいることはフレッド以外知らない。だからこれからもどこで何をしていてもいい。だけど、とりあえず今後のことをぼんやりとでいいから考えてみてくれないかな? 国に帰ったらいつまで隠せるかも分からないし」

「あ、それなんだけどね……私、帰ることに決めた」

「……え?」


 ユリア? どうして……?


「私、本当は貴族にはなりたくない。できることも少なくなるし、行動もある程度は制限される。だから、こうして街で暮らすことが夢だったの。だけど、そのせいで結構家がややこしくなるかもしれないって思って……私が家出したのは見ず知らずの王子様を姉の代わりにって婚約者にさせられそうになったからっていうのが大きいし、その問題は、その、解決したし……」


 ……ということは、ユリアは僕だから国に帰ってもいい、と……?

 それがたまらなく嬉しくて、またユリアをぎゅうっと抱きしめてしまった。


「よかったの?」

「うん、もういいかなって。諦めちゃった」

「ほんとに嫌なら無理しなくていいんだよ?」

「大丈夫。ここまで来たらもう私が頑張らなくちゃ」

「そう、じゃあこれから一緒に頑張ろうね?僕のお嫁さん」

「……!?」


 僕の可愛いユリアは今日も幸せそうに笑っている。






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