ユリア……!
僕は夜明け前に国を出た。一刻も早くユリアに会いたかった。精神的にいろいろと削られたし、ユリアに変な奴が近付いていないとも限らないからな。
「……おい、いつまで寝てるんだ。早く帰るぞ」
1人だけは絶対に暴走するからせめてフレッドは連れて行けと、父上やその他の面々がうるさかった。誰が暴走するって言うんだ失礼な……と思ったが早く終わらせたかったから渋々了承したのに、本人がこれではどうしようもないではないか。
ちょっと雑に起こしていると何やら呻き声が聞こえてきた。チ、やり過ぎたか。
「ま、待て、それ以上やったら別の意味で意識が飛ぶ……」
「あ? 本当に遅いぞ。早く帰りたいんだよ、あと3分で出るぞ」
「3分!?」
「1、2、3……」
「分かった分かった準備するから!」
フレッドを急かして宣言通り3分後に出発した。
また行きと同じように馬を代えながら飛ばしに飛ばして街に帰った。不運なことに今日は土砂降りだったが、今度はフレッドもついて来れたようだ。
僕は早くユリアに会いたい一心で『アイリス荘』に行った。
……だが、僕はそこで頭の中を直接殴られたかのような衝撃を受けた。
「リアちゃんが、帰ってこないんです……」
絞り出すようにそう告げた女将は今にも泣き崩れてしまいそうだった。
詳しい話を聞くと、ユリアはこの雨の中出かけたらしい。女将には散歩をすると言っていたようで、すぐに帰ってくるだろうと思っていたのにいつまでも帰ってこなくて、どうしようかと慌てているところに僕が帰ってきた、という流れだったそうだ。
僕は何も考えることができなかった。その事実を受け止めることで精一杯で、しばらくは何をすればいいのか分からなかった。
僕は女将や周りにいた人たちにユリアを探しに行くと伝えた。それしか選択肢などなかった。ユリアが今ここにいないことがたまらなく不安だった。
もう既に街の人たちが探し始めてくれていたようで、後は路地裏などを探し回ればいい状態だった。レインコートを雑に着直して『アイリス荘』を飛び出した。
僕は嫌な予感がしていた。
この街にもやはりスラムとまではいかないでも治安のよくない場所はあり、その中にいる人は……穏やかとは言い難いようだった。
もちろん彼らだという確証なんてないし、普通にしていたはずの街の人が急に犯罪をすることもある。だがこの街ではあまりにもスラム出身者の犯罪が多すぎるから、そんな奴らがユリアに接触しているかもしれないと思うと本当にぞっとする。
(頼む、ユリア、無事でいてくれ……!)
町中を走り回り、どれくらいが経っただろうか。不意に近くから男女の声が聞こえた気がした。
(男は複数か? ……誰かが叫んでいる!? まさか……!)
僕は瞬時に思考を展開し、声が聞こえた方向に走って行った。そこで僕が見たのは……
「リア!!」
男に乱暴に担がれてどこかに連れ去られそうになっているユリアだった。
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