インパクトがすごいです。
『アイリス荘』の一階にリリーちゃんと降りてみると、来たときよりも人がいました。
「おねえちゃん3時間くらい寝てたんだよ? 全然起きてこなくてびっくりしたの」
「そっか。道理でなんだか頭がすっきりしてるのね」
窓の外を見てみると、辺りはオレンジ色に染まっていました。
(私かなり寝ていたみたいだけど、部屋取れるかしら? まあ別に取れなくても構わないんだけどね)
そのような考え事をしていると、いつの間にかリリーちゃんは受付の人と話をしていました。
「ナナさん、さっきのおねえちゃん起きたからおとうさんのとこに行ってもいい?」
「んー、今はキッチン忙しくて危ないから、私が呼んでくるわ。ちょっと待っててねリリーちゃん」
受付のお姉さん__ナナさんは1階の奥に歩いていました。
そして少しした後ナナさんと一緒に出てきた人は……ヒグマでした。
「……なあ嬢ちゃん、客に言うのもあれかと思ったんだが、今なんか酷い事考えてなかったか?」
ぎく。ナ、ナンノコトカ、ワカリマセンネ……。
「き、気のせいですよ。うん、気のせい気のせい」
「はあ……もう慣れてっからいいけどよ。てかこんなもんどうでもいいっつの。俺はグリーズ。一応この宿屋の主人だ」
(グリズリーじゃないの……)
「それよりも嬢ちゃん、今日はどうすんだ?」
「一人部屋って空いてますか?」
「おうよ。つか空けといたから」
「本当ですか」
「こいつが空けて空けてってうるさかったからな」
そう言うとグリーズさん……はリリーちゃんの頭を豪快に撫でました。
「なあ嬢ちゃん聞いてくれよ。リリーがな、嬢ちゃんが目を覚ますまでずっとそわそわしてたんだぜ」
「えっ、おとうさん!? だ、だめ!」
「よっぽどしゃべりたかったんだろうな」
「うう……」
「そうなの? リリーちゃん」
「……うん」
真っ赤になって小さく頷くリリーちゃん。かわいすぎて思わず抱き締めてしまいました。
「ふふ、おねえちゃんちょっと苦しい」
「そういうところもかわいいなあ」
かわいいリリーちゃんに癒されていると、グリーズさん……クマさんでいいか。クマさんが口を開いた。
「な? ウチの子めちゃくちゃかわいいだろ? 親としては変な奴に攫われたりしないか心配で心配で……」
……ええっと、クマさんってもしかして。
「(コソッ)リリーちゃん、お父さんどう思う?」
「(コソッ)ちょっと面倒くさいの……おつかい行くときも後ろからコソコソついてくるし」
……親バカなクマさんなんですね。なかなかに濃いキャラしてますねー。まあ確かにリリーちゃんはかわいいから、日本に比べると治安がいいとは言い難いこの世界では、仕方がないのかもしれないですね。
「っていうかいつまで一人でしゃべってるんですか」
「リリーが結婚相手を連れてきたりなんかしたら俺は……は! んん!! えー、それで、嬢ちゃんはウチに泊まるんでいいんだよな?」
「とりあえず一週間でお願いします」
「そしたら朝メシ付きで金貨4枚……と言いたいところだが、いらねえ」
「え!?」
「これはただ単に俺の直感でしかないんだがな、嬢ちゃんは、なんか違うんだ。俺らとは」
「……」
「後々この違和感が何かわかったときに俺がいろいろ考えちまうかもしれねえしよ。だからいらねえ」
「いいんですか?」
「リリーの相手でもしてくれたらそれで十分だ」
「じゃあ、お世話になります」
「おうよ。そういや嬢ちゃん、名前は?」
「リアです」
「リアか。まあ、これからよろしくな」
* * * * *
その後私は何故か晩ご飯をもらって(「賄い余ったから食っとけ」byクマさん まさかのカレーでした。美味しかったです)、さっき寝かされていた部屋に戻ってちょっとだけ荷ほどきをしていました。ちなみにリリーちゃんも一緒です。
「すいませーん、リリーちゃんを借りてもいいですか?」
「ああ!? ウチの娘はやらんぞ!」
「いやそれ子どもが結婚相手連れてきたときのセリフでしょう……」
「ねーねーおとうさん、おねえちゃんのところで寝たい」
「リリー……!?」
そんなやり取りがあったのも20分ぐらい前です。
背負っていたリュックの中から着替えを出して湯浴みをした後は、なんだかんだで疲れていたので早めに寝ることにしました。
自分の枕を持ってきて寝る気満々なリリーちゃんとベッドに入り、目を閉じました。
「おねえちゃん、おやすみ」
「うん。おやすみ、リリーちゃん」
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