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国に帰った……のだが。

 その後、僕は本気で馬を飛ばして祖国に帰った。本来なら馬車で4日ほどはかかるところだったが1日半で済んだ。

 入国審査官は僕の姿を見て驚いていた。まあ自国の王太子がほぼ何も持たずに自分と馬だけで帰ってきたら驚くか。もちろんすぐに通してもらった。

 そのまま王宮を目指して馬を走らせた。この国の王太子である僕が言うのも何だが、あまり大きくはない国だから王都には割とすぐに行ける。その日の夕方にはもう王宮についていた。

 ちなみにフレッドは途中でリタイアしたから置いてきた。まあそのうち帰ってくるだろう。


「おお、ようやく帰ってきたかジーk「父上、何の用ですか!?」……分かった、分かったから首を絞めないでくれ……ぐえ」


 あ、やり過ぎた。まあいいか。お、丁度いいところに弟発見。


「あ、兄上!? お帰りなさい……って父上!?」

「ああ、悪いがちょっと部屋に連れて行ってくれないか?」

「ええ……」


 小柄な弟にはちょっと申し訳ないが、時間がないので押し付ける。


「そうだ、宰相はどこにいる?」

「宰相……ですか? 今は執務室にこもっていると思いますよ」

「ありがとう。じゃあまた後でな」


 僕は考えるよりも早く執務室に全力で走った。もちろん王宮内でそんなことをしたら咎められる……普段ならば、だが。

 僕のただならぬ様子に通りすがりの人は皆驚いていたが、すぐに道を開けてくれた。

 半ばドアを蹴破るようにして執務室に突撃した僕を迎えたのは、苦笑いを浮かべた宰相だった。


「お帰りなさいませ、王太子殿下」

「宰相、何の用だ!? いきなり帰ってこいなどと!」

「落ち着いてください。実は私もすべてを把握しているわけではないのです」

「はあ?」

「まあ、平たく言うと陛下の独断です」

「あーあー……」


 嫌な予感はしていたが、父上、周りの人にちゃんと話そう……


「で、宰相も大まかなことは知ってるんだろ?」

「はい……」


 少し分かりにくかったが、簡潔にまとめるとこうだ。


 婚約者の問題をどうにかしろ。


 ……いや、父上、僕がなぜ国を出たのか忘れたのか?途端に頭が痛くなってきた。


「宰相、僕はこれで失礼します。ちょっと父上のところになぐ……聞きに行ってきます」

「ほどほどにお願いしますよ」


 * * * * *


「父上ー!!」


 父上の部屋に行くともう父上が復活していた。早すぎてちょっとドン引きした。

 僕はニッコリと笑いながら父上のいるところに歩いて行った。


「どういうことか、説明していただけませんかねえ?」

「よし、一旦落ち着け。落ち着いてくれ「早く、説明、してください」分かった分かった」


 やっと話す気になったか。早く帰りたいから手短にお願いしますよ父上。


「その……だな、お前ももうそろそろ婚約者の問題を片付けなければならんと思ってだな……」

「はい? 僕が何のために昨日まで国外に出ていたか覚えていますか?」

「そりゃもちろん覚えておるよ。だが、あまりにも遅いと今度は国中の貴族たちが黙ってはいないだろう?」

「見つけましたよ」

「……ん?」

「見つけたんです、ユリア嬢を」

「なんと!」

「僕は本当にユリア嬢以外と婚約するつもりはありません。だから、父上は変なことしないでくださいね?」

「……う、うむ、分かった」


 何だかこんなに必死になって帰ってきたのが馬鹿みたいだ。手紙にはさも国の一大事かのように仰々しく書くものだから何事かと思ったら、まさかこれだけだったとは。


(まあいい、とにかく今日は流石に休まないとな。明日の朝すぐにでも帰ろう)


 急に疲れがどっと押し寄せてきた。僕は何とか自分の部屋に辿り着き、そのまま眠りについた。








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