これからのこと……は一旦置いておきましょうか。
「どうする、って?」
不思議そうな顔をして、ジークは私に聞きました。
「私がここにいることが知られたんだもの。流石にこのまま放っておくことはないでしょう? 私を連れ戻す、とか」
「ん? 僕は特に何もするつもりはないんだけど……」
「……え?」
「いや、国としてはいなくなられたら困るから帰って来てくれた方がありがたいんだけど、僕個人としてはリアの自由にしてくれたらいいんじゃないかなって思うんだ。僕もここにはジークハルトじゃなくてただのジークとして来ているから」
「あ、そっか」
「それでも国にバレちゃったらどうなるか分からないから、一応覚悟はしておいた方がいいんじゃないかな」
「……」
「まあ立て続けにいろんなことがあったから、ちょっと休もう。それから、これからどうしたいか考えてほしいな」
「……分かった」
これからどうするか、ですか……まさかいきなりこんな風にバレるなんて思っていませんでしたから、正直まだ混乱しています。
「じゃあ僕たちは部屋に戻るよ。何かあったらすぐに言ってね」
「うん」
そういえば後ろの方にフレッドさんいましたね。珍しく完全に空気になっていましたけど。
(あ、ジークに聞けなかったな、あの手紙のことでも、また眠くなってきた……)
私はまたベッドに潜り込み、眠りにつきました。
* * * * *
翌朝目が覚めた私は、お腹に直撃を喰らいました。
「おねえちゃーん、うわあああん……」
何が起こったのか寝惚けた頭で確認すると、リリーちゃんが私にダイブしてきたようでした。いくら小さくても、流石に苦しい……。
「あらあらごめんね、リアちゃん。まだ多分寝てるからって言っても聞いてくれなくって」
「イザベラさん! ごめんなさい、何も言わずにしばらく空けちゃって」
「ううん、平気平気。それより、ジークさんたちから聞いたわよ。ほんとに心配したんだから。帰ってきたら熱で意識もないし、リリーがどれだけ情緒不安定だったか」
「そうだったんですか? 本当にごめんなさい……」
「まあ元気になって良かったわ。でも、まだしばらくは安静にしてないとぶり返すかもしれないからね?」
「はーい」
寝る前にジークにも安静にしろと言われていたのを思い出して、少し笑いそうになりました。それだけ、私のことを気にかけてくれる人が増えた、ということでしょうか。なんだかくすぐったいような、暖かい感じがします。
「あと、しばらくはリリー離れないと思うから、ちょっと相手をしてあげてくれない?」
「あ、分かりました」
「リリー、あんまりリアちゃんを困らせちゃダメよ?」
「リリーおねえちゃんを困らせてなんかないもん!」
「……はあ。ま、しょうがないと思ってあげてちょうだい」
「大丈夫ですよ。リリーちゃんは私にとって妹みたいな子ですから」
「! おねえちゃーん!」
突然リリーちゃんが私に抱きついてきました。はあ、癒されます……。
「ふふ、本当に良かった。じゃあ、リリーをお願いね」
「はい」
イザベラさんが部屋を出た後、リリーちゃんはしばらくの間私にスリスリしていました。
「どうしたの? リリーちゃん」
「リリー、すっごく寂しかった……おねえちゃんがいないと、すごく寂しいの。帰ってきたときも、お部屋に連れていかれるおねえちゃんがすごくしんどそうで、怖かった」
「そっか……心配、させちゃったね。ごめんね、リリーちゃん」
「もう、大丈夫?」
「うん。さっき安静にしてって言ってたけど、もう大丈夫だよ。体力がなくなってるから、もうちょっと休んでてってことだから」
「良かった、おねえちゃん……」
ああ、本当に離れてくれそうにありませんね。仕方のない事と言えばそれまでなんですけれど。こんな小さい子を心配させてしまったんですから。
「おねえちゃん、大好き!」
「ん? どうしたの、急に。でもありがとう。私もリリーちゃん大好きだよ」
「えへへー」
まあ、考え事は後回しにして、今はゆっくりしましょうか。これからいつ休めるか分かりませんしね。
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