表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/98

彼の正体と、過去を知りました。

「……『殿下』?」


 フレッドさんは、一体何を言っているのでしょうか……。


「フレッド、お前……」


 しばらくの沈黙の後、ふうっとため息をついたフレッドさんは何かを諦めたような顔をしていました。


「ゴメン。でも、そろそろいい頃合いなんじゃねえの? いつまでもこのままっていう訳にもいかねえだろうし」

「それはそうかもしれないが……」

「どのみちまた帰らなきゃならねえんだし、今のうちに喋っといた方がお前のためだと思うけどなあ」

「……」


 ジークは少しの間逡巡した後、口を開きました。


「僕は……僕の本当の名前は、ジークハルト・ベルネディア」

「……?」

「君の故郷、ベルネン王国の王太子だよ」

「……えぇ!?」


 * * * * *


 あるところに、ベルネン王国という国がありました。

 その国には王子が3人いましたが、1番上の王子以外は王にはなれないだろう、と3人の父である王は考えました。2番目の王子は頭は誰よりも良かったのですが社会の変化に弱く、3番目の王子は人を動かすよりも自分が動くことが好きだったからです。

 また王は、それぞれに見合った婚約者を幼少期から付けていました。公爵家など位の高い家の令嬢たちで、王は我が子のように令嬢たちを可愛がっていました。

 ですがある日、王は偶然1番目の王子の婚約者が使用人と駆け落ちしようとしていることを偶然知ってしまいました。

 王は悲しみました。幼い頃からずっと見守ってきた令嬢が、あの貴族令嬢の鏡のようだった令嬢が、まさかそんなことを考えていたとは、と王はショックを受けました。

 初めは何とか説得しようと考えていた王でしたが、王は自分が令嬢の幸せを邪魔してしまうのは、どうしても許せませんでした。なぜなら王は、駆け落ちをした自分は、1番それについてよく分かっていたからです。

 令嬢がどうしても決意を変えないので、1番目の王子の婚約者をどうしようかと王は悩みました。そんなときに、1番目の王子が王にあることを相談しました。


「自分の婚約者の妹君がほしい」


 初めにそれを聞いた王はとても驚きました。そしてそれから、その妹君には少し申し訳ないが、国の安定を保つにはこれが1番いい答えなのだ、と心の中で言い訳をしながら1番目の王子の婚約者を変えるために動く日々が続いていました。

 トラブルがなかったと言えば嘘になりますが、なんとかまずは姉の方の婚約を解消することができたことにほっとした王は、数日後使者の持ってきた情報に凍りつくことになりました。


「妹君が、家出……!?」


 そんな馬鹿な、妹君は少々お転婆なところはあったが、そのようなことをする令嬢ではないはずだ!

 そう考えても、実際妹君は既に国中どこを探してもいませんでした。使者が伝えてきた頃にはもう国境を越えていたのだろうというのが皆の考えでした。


「……いなくなった?」


 妹君を婚約者に、と望んだ1番目の王子は、信じられないといった様子でその報告を聞いていました。

 重い空気の中、王子は突然笑い出しました。周囲にいた人たちがぎょっとするのも構わず笑った後、王子は誰に聞かせるというわけでもなく言葉を漏らしました。


「だったら、迎えに行かないとねえ……?」


 * * * * *


「これで分かった? ユリア・コゼット侯爵令嬢」

「……いつから、気付いていたの?」

「いつからだろう、最初は気付かなかったよ。だんだんユリアじゃないかな? って思って」

「そんな……」


 今までバレずにやってきていたのに、ここにきてばれてしまうなんて思いもしませんでした。ていうかジークが第1王子だっただなんて全然気付きませんでした。


「ジーク、ううん、ジークハルト。1つだけ、聞きたいことがあるの」

「何でもどうぞ」


 私は1つ呼吸を置いた後、彼に問いました。


「私を、どうするの?」




評価、ブックマークを下さった方ありがとうございます。

読んでくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ