天使が降臨しました。
とりあえず落ち着いたところで、これからの計画を立てなければいけません。
まあ当てもなくただ逃げてその先の街を楽しむだけなので、せいぜい荷物の確認ぐらいですかね。
というか、もうこれ3回目なんですよね。全く、いい加減自由にさせてくれればいいのに。
「今度は西の国に行ってみようかな」
西の国はいい観光スポットが多いって聞くから楽しみです!
* * * * *
一週間、ときどき馬車に乗ったりひたすら歩いたりして、ようやく西の国の入り口に着きました。
入国審査官に身分証明書を見せ、何事もなく西の国に入ることができました。あ、身分証明書は私自身の物ですよ。国を出る直前に作った平民用のものですけど。名前もちょっと変えて『リア』にしています。万が一近くに彼らが居たらバレちゃうので。
「うわあ……」
1週間前まで滞在していた国は交易の中継地で、市場も多くて賑やかな所だったけれど、この西の国はとても上品というか、洗練された雰囲気です。
まだお昼ですが、先に泊まるところを探しましょうか。道行く人たち一人一人に声を掛けたら、誰かは家に泊めてくれるでしょうかね。別に野宿もできますけど。
しばらく辺りを歩いていると、少し気になる建物を見つけました。
『アイリス荘』
この宿屋は結構いろんなところで有名らしく、この西の国に来て止まらなかったら絶対損!って同じ馬車に乗っていたおばさんが言っていたところです。
この宿屋の素晴らしいところは、まず外観ですね。宿屋には珍しく、貴族の家の庭のように沢山の花が咲いているようです。
次に、掃除がとても行き届いているらしいです。一度泊まれば他の格安の宿屋には泊まれなくなってしまうほど綺麗のだとか。私は何も気にならないですけど。
そして……
「おねえさん、いらっしゃいませ」
ものすごく可愛い看板娘ちゃんが、迎えてくれました。これはおばさん言ってなかったですよ……。
* * * * *
気が付くと私は、知らないベッドの上にいました。
いや別に何かをしていた訳ではないんですよ。さっきまでぐっすり寝ていたみたいなんです。
思いっきりのびをしたりしていると、部屋のドアが控え目にノックされました。
「おねえさん、起きてますか?」
……そこで私は一気に全てを思い出しました。
私は、この宿屋の看板娘ちゃんを見た瞬間、あまりのかわいさに倒れてしまったのです。
「起きてますよー」
ドアの外に向かって言うと、さっき見た女の子が部屋に入ってきた。
ちなみにこの女の子は12歳くらいの子で、栗色の髪と瞳をしていました。
何度でも言いましょう。ものすごく可愛いです。
「おねえさん、大丈夫?」
ああ、心配そうに私の顔を覗き込んでくることのかわいいことかわいいこと。また倒れそうです。
「うん、大丈夫。ごめんね、心配かけちゃったね」
思わず女の子の頭をなでなでしてしまいました。めっちゃ嬉しそうです。
「そういえば、お名前何ていうの?」
「私はリリー」
「リリーちゃんね。私はリアだよ」
「……リア、さん? リアおねえさん?」
「呼び方は好きなのでいいよ」
「……おねえちゃん!」
「ん、分かったよ、リリー」
私がそう言うと、リリーちゃんは「えへへっ!」と笑いました。
ああもうどうしよう。一週間ぐらいしたらまた次の街に移動するつもりだったんだけれど、ちょっとだけこの街を離れたくなくなってきてしまいました。どうしてくれるんですか馬車のおばさん。この世にこんなにもかわいい子がいたとは……!
※彼女は今テンションがおかしくなっています。
リリーちゃんのかわいさに悶えていると、クイックイッと袖を引っ張られました。
「おねえちゃんおねえちゃん、おとうさんがね、おねえちゃんが起きたら一緒に降りてきてって言ってたの」
「あ、そうだ。まだ何もしてなかったんだ……」
ふらっと入ってきたかと思えばチェックインも何もせずに倒れて、部屋を丸々一つ陣取るお客(?)……ものすごく迷惑ですね……。リリーちゃんのお父さん__この宿屋のご主人に謝らないとですね……。
「おねえちゃん、もう眠たくない?」
「うん?大丈夫だよ」
リリーちゃん、私が宿屋の前で寝落ちしたと思ってたのかな?かわいいなあ。
「じゃあ行こっ! こっちだよ」
私はリリーちゃんの小さな手に引かれて、『アイリス荘』の一階に降りました。
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