助けて……!
薄暗い路地裏で恐怖で動けなくなっていた私に、その人影__3人の男が下卑た笑いを浮かべてこちらに向かってきます。
少しずつ後ずさって逃げようとしますがうまく足が動かず、すぐそこに男たちが迫ってきていました。
「よお、お嬢ちゃん。こんなところでナニしてんだあ?」
1人のリーダー格の男がニタニタと笑いながら、私に近づいてきて話しかけてきました。その手には・・・
(は、刃物……!?)
恐怖で真っ白になった頭をなんとか働かせて、後ろを向いて走りだしました。
後ろから追いかけてくる気配がして、私は傘をその場に捨てて雨に濡れるのも構わずに逃げました。ですが……。
「ホラお嬢ちゃん。そんなに慌ててどうしたんだあ?」
(しまった……!)
いつの間にか回り込まれていたらしく、走って行った先に男たちの仲間らしい男がいました。
本当にどうしよう、完全に逃げ道がなくなってしまいました・・・こんなときに限って1人だし……こんな雨の日に外になんか出るんじゃなかった。そう後悔しても、もう遅すぎました。
「おいおい逃げんなってよお、ちょっとオハナシしようぜえ?」
「!? 何、痛い離して……!」
いきなり男のうちの1人に強く腕を掴まれ、思わず涙が出そうになりました。怖い、痛い、誰か……。
「暴れなかったら何もしねえからよお、ちょっとばかし俺らに付き合ってくれよ」
「やめて……離してよ!」
男に腕をねじり上げられ、痛みと恐怖で気絶してしまいそうです。いや、むしろ気絶した方が、痛い思いをせずに済むのでしょうか……。
(誰か……助けて……)
そして、そのまま諦めかけていた私は、ある出来事を思い出しました。
それは、私の前世の記憶。高校生のときの記憶でした。
(そう、私は、ストーカーに遭っていた)
最終的に警察に突き出すことができたけれど、それまでの日々は地獄でしかありませんでした。
登校するときも、下校するときも、塾に行くときだって、そいつは私のいる先々に必ずいました。
そして度々、家のポストに私が映った写真が入れられていました。それも1枚や2枚ではなく、数十枚が。
それでも、直接対面していなかったときはまだましでした。
いつだったか、下校のときに友達と別れて1人であるいていたところ、私はそいつに尾行されていました。
思い返せば、あれほど『怖い』と思ったのはあれが初めてでした。逃げなければいけないと、頭で考えるよりも先に感じていました。
どれだけ走ってもそいつとの距離は開くどころか狭まる一方で、あと少しで捕まってしまう……というところでなんとか交番に駆け込むことができました。
(あのときは私も良くなかった。親ぐらいには相談すれば良かったのに、ずっと隠していたから。でも今は違う。何でこんなよく分からない人たちの言いなりにならなきゃいけないの。そんなの、絶対嫌!)
恐怖よりも込みあがってきた怒りの方が大きくなり、気が付くと私は、きつく私の腕を掴んでいるの腕を思いっきり噛んでいました。
「ってえ、なにすんだゴラァ!」
急に怒り出したその男は暴れだしました。
(戦うなんて絶対無理。早く逃げなきゃ!)
身をひるがえして走り出した私に驚いたのか、ほんの少しだけ男たちは固まっていました。
「オメエら何ボーっと突っ立ってんだ! さっさと追え!」
「「は、はい!」」
そのほんの少しの時間は、私と男たちをかなり引き離してくれました。
(このまま、表の通りに出たら……!)
するとそのとき、水溜りに足を取られて転んでしまいました。
すぐに立ち上がって走ろうとしましたが、襟を掴まれて動くことができませんでした。
「かは……!」
「フン。てこずらせてくれたじゃねえか、嬢ちゃんよお。この礼は後でしっかりさせてもらうからなあ?」
首が締まって、思うように息ができません。
(嫌だ。嫌だ。誰か……)
私は、残り僅かの力を振り絞って、叫びました。
「誰か、助けてー!!」
いきなり叫んだ私に驚いていた男たちは、私を抱えてどこかに行こうとしました。ですが、それは叶いませんでした。
「リア!!」
その声は、なんだか泣きそうなぐらいに震えていて、でも力強い、私の大好きな声でした。
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