私のおねえちゃん。
リリー視点です。
わたし、リリーの朝はそこそこ早いの。おとうさんとおかあさんのお手伝いをしなくちゃいけないし。
いつもみたいに起きたら、まずは部屋を出てすぐにある洗面所で顔を洗う。次に着替えて髪をとかす。最後に着ていた服を大きなかごに入れて、お父さんとおかあさんと一緒に朝ごはんを食べる。
今日も朝起きてすぐはそんな感じで、いつも通りだったの。だけど、ちょっと珍しいことがあったの。
『アイリス荘』に泊まっているお客さんの一人のジークさん……おにいちゃんが朝早くにいきなり出発するって言いに来たの。
何で? って聞くのはダメだっておかあさんに言われてたし、おにいちゃんも言ってはくれなかったから結局いきなりになった理由は分からなかった。けど、わたしはどうしても気になることがあったの。
おにいちゃん、なんだか辛そうだった。
わたしはずっとおとうさんとおかあさんのお手伝いをしてきたからいろんな人にあったことがあるけど、おにいちゃん、分かりやすいぐらいに辛いって顔してた。
でもわたしにはその理由はどれだけ考えても分からないし、おかあさんにきいても、
「リリー、それは2人がどうにかしなくちゃ」
とか言って教えてもらえなかったの。わたしは理由が知りたかっただけなのに……。
その後しばらくしてお客さんがそろそろ起きだした頃かなっていうときに、おねえちゃんが起きてきたんだけど、おねえちゃんも、ちょっと元気がないみたいだった。
おにいちゃんとおねえちゃんは出会ってからずっと仲良しだし、昨日も一緒にお散歩してたぐらいだし、喧嘩したからっていうこともないだろうけどな……やっぱり何でかは分かんない。
おねえちゃんは、おかあさんからおにいちゃんがもう出発したことを聞いたら、すぐにおにいちゃんを探そうとしだしたの。でもおにいちゃんは相当知られたくなかったみたいで、どこの誰に聞いても何も分かんなかったって。
わたしもおにいちゃんのことを知らないか聞かれたけど、本当に何も知らないから素直にそう言うしかなかった。おねえちゃんの力になれないのがちょっとだけ悲しかった。
「……おねえちゃん、いる?」
「リリーちゃん?」
「うん」
「どうぞ。入っていいよ」
街に出て聞き込みをして帰ってきたおねえちゃんは、やっぱりいつもと比べて静かで元気がなかった。見間違いじゃなかったみたい。
「おねえちゃん、元気ない?」
「え? そう?」
「今日、朝からちょっとしょんぼりしてるよ?」
「そっか……確かに、ちょっとしょんぼりかも知れないね」
おねえちゃんは、どうしても何も話してはくれないみたい。
しばらくわたしもおねえちゃんも黙っていた後、急におねえちゃんがわたしを抱きしめたの。
「……おねえちゃん?」
「ごめんね。でも、嫌じゃなかったら、ちょっとだけ抱きしめさせて……」
おねえちゃんに抱きしめられるのは嬉しいしそれは構わないんだけど、おねえちゃんの腕が微かに震えているのが分かって、より心配になっちゃったの。
「おねえちゃん、リリーはおねえちゃんのこと大好きだから、おねえちゃんがしてほしい事なんでもするよ!」
「ふふ、どうしたの? リリーちゃん。でもありがとう」
おねえちゃんはそう言って、笑って頭を撫でてくれた。
「えへへ、おねえちゃんが笑った~」
「え? ああ……そういえば、ずっと笑ってなかったかも。心配してくれたの?」
「うん。おかあさんもおとうさんも、みんなで心配してたんだよ」
「そうなんだ。後でごめんなさいしなくちゃね」
よかった。おねえちゃん、ちょっとだけ元気になったみたい。
「リリーちゃん、きょうはもう、ずっとごろごろしよう?」
「うん!」
たまにはおねえちゃんも、ゆっくり休んでね。
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