2ヶ月ほどたったある日のことでした。
私とジークはその後も一緒にいるようになり、気が付けば2ヶ月ほどたっていました。
遠くまで出かけることもあれば『アイリス荘』で1日中おしゃべりをする日もあり、いつの間にか私の生活の中にジークがいることが当たり前になっていました。
あ、もちろんリリーちゃんとも遊んでいますよ。構ってあげないと拗ねちゃいそうですし。今ではすっかり妹のように懐いています。ときどき出掛けたときに買ってきたお土産をあげるととても喜んでくれるんですよ。やっぱりリリーちゃんはかわいいです。
話が逸れました。
それにしても、ずっと1人の方がいいと思い1人で何でもしてきた私が、誰かといることが楽しいと思うようになっているなんて考えてもいませんでした。
前世のときから1人でいるときが1番好きだったし、そのせいもあってバックパッカーという方法で旅行をするようになりましたしね。今世の子供の頃でも友達などは作らず朝から晩まで図書館によく籠っていましたし。
あと、ジークやリリーちゃんだけじゃなく他の人であっても、一緒にいても面倒だとか思わなくなりました。以前の私ならどんな人でも同じように面倒に思っていたはずなのですが、人間って変わるんですねー。
特にジークは一緒にいても大丈夫どころか一緒じゃなかったらどこに行ったのかとても心配になるようになってしまいました。まあ基本一緒にいるのであまり関係ないのですが。
それと不思議なことに、最近ジークと一緒にいると胸が締め付けられるような感じがします。でも辛くはなくて、むしろ心地いいような、訳の分からない状態がずっと続いています。この胸の痛みは、いったい何なのでしょうか。
「リア? また考え事でもしているの?」
「んー、ちょっとね」
「あんまり考え込むと疲れるからほどほどにね。困ったら僕に遠慮なく相談してね」
「ありがとう」
流石にこれはジーク本人には相談できませんね……しばらくは1人でいろいろ考えてみますか。もやもやしっぱなしというのは落ち着かないですし。
「おねえちゃーん、遊びに来たよー」
「あ、リリーちゃん。ていうかさっきお母さんの所に行くーって言ってたばっかりだけど、帰ってくるの早かったね」
「頑張ったよ!」
「そっかあ。じゃあ今ここに3人いるから、ってあら? アンナちゃんもいたの?」
「こんにちは~」
「4人だったらいろいろできるけどなあ、何がしたい?」
「「七並べ!」」
「好きだねー。ちょっと待っててね、準備するから……どうせなら今日は倍にしてやってみようか」
「出た! おねえちゃんの倍にするバージョン」
「カード落とさないようにね」
そうして今日も一日が過ぎていきます。そして私は、変わらない日常に何らの疑問も抱いていませんでした。だから私は、気が付きませんでした。
* * * * *
ある日目が覚めると、部屋の中に僅かに花の香りが漂っていました。
(私お花を置いたことなんてなかったはずなんだけど……)
ぼんやりとしたままの意識で部屋を見回すと、テーブルの上にそれらはありました。
花瓶いっぱいの、赤いゼラニウム。
それに隠すように生けられていた、1輪の忘れな草。
封のされた真っ白な手紙。
そっとその手紙を手に取り、封を切りました。真っ白な便箋には、短くこう書かれていました。
『できることなら、もっと傍にいたかった』
赤いゼラニウムの花言葉は「君がいて幸せ」です。
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