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好きなお花は何ですか?

 素敵な花畑でのんびりした後、私はジークに温室に連れてきてもらっていました。

 私たちがいるこの建物(あとで聞いたら植物園だったらしいです)はかなり広いらしく、さっきまでいた花畑のエリアも全体の半分かそれ以下なんだとか。こんなに広い場所は前世でも見たことがないのでびっくりしているんですよ本当に。

 温室も私が頭の中で描いていたビニールハウスのようなこじんまりとしたものではなく、そこそこ大きな建物がすっぽりと入ってしまいそうなぐらいの広さです。


「ねえリア、リアの好きな花って何?」


 手を繋いだまま歩いていると、不意にそんなことを聞かれました。


「私の好きな花、か……あ、これかな」


 そう言って私は、近くにあった鉢植えを指差しました。


「ゼラニウム?」

「うん。この何気ない感じが好き」

「へえ、そっかあ」


 そう短く言ったジークは少しの間口を閉じ、何か考えていたようでした。


「ジークは好きなお花はあるの?」


 しばらくした後私がそう問い掛けると、ジークは顔を上げて、辺りを見回しました。


「えっと……あ、あった。リア、ちょっと来て」


 ジークが私に見せた花は、ユリでした。


「……ユリ?」

「そう。僕はユリが好きかな」

「そう、なんだ……」


 ……私は何も話すことができませんでした。なぜなら、『ユリ』という字は、私にとても関わりの深い字だからです。今世だけでなく、前世にも。

 あ、私まだ皆さんに詳しくはお話していませんでしたね。私の前世のことを。

 私の前世の名前は__


「……ア、リア、どうしたの?」

「え? あ、ごめんね。なんでもないよ」

「やっぱりしんどい? 休憩する?」

「大丈夫。もう少しここにいたいな」

「分かった。何かあったらすぐに言うんだよ?」

「もう、大丈夫だって。ありがとう」


 ごめんなさい。私のことは、また今度落ち着いてから話すことにしましょうか。

 私がずっと静かだとジークが心配してしまいますしね。


 * * * * *


 それから私たちは温室の中を何回も回っていました。何度見ても飽きないし、時間が経つと日の差し込み具合が変わってまた違った感じできれいでした。


「今日はそろそろ帰ろうか。他にもエリアはたくさんあるし、また一緒に来ようか」

「うん!」


 あっという間に一日が過ぎていったけれど、本当に楽しい一日でした。

 植物園を出ようと思い温室を出ると、あまり直視したくない人たちがいました。


「今日はありがとお~ランス!」

「可愛いフィオナを見れてよかったよ」

「もう~。ねえねえランス、フィオナとお花、どっちが可愛かった?」

「どっちか? それはもちろんフィオナだよ! フィオナは世界一可愛いからな」

「ランスったら、ここはお外だよ?」

「いいじゃないか。気にする人なんていないよ」

「そうね~」


 ……いや、現在進行形で気にしてる人がここにいるんですけど。


「……リア、僕たちは、何も見てないよ」

「……うん。何も見てない」

「よし。……帰ろうか」

「そうだね……」


 なんだか今の一瞬ですごく疲れた気がします……ほどほどって大事ですよ本当に。

 今日は大人しく帰りましょう、うん、そうしましょう。


 * * * * *


 それから私とジークは来たときと反対の乗合馬車で『アイリス荘』に帰ってきました。

 1日中外にいたのでちょっとリリーちゃんが拗ねてしまっていました。構ってあげたらすぐ機嫌が直りました。


「今日はありがとう。とても楽しかった」

「僕の方こそ楽しかったよ。予定が空いてたらまたどこかに行かない?」

「うん。なるべく予定が合うようにするよ」

「ありがとう。じゃあ、おやすみリア」

「おやすみなさい、ジーク」






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