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とても気に入りました。

 ジークが今日連れて行ってくれるところはかなり遠いらしいので、街の中を走っている乗合馬車に乗って行くことになりました。

 そうそう、乗合馬車は数少ない私がこの世界で生まれて驚いたものの1つなんです。

 異世界の、それも平民用の馬車なんて質が悪くて当たり前、というようなイメージが少なからずあったのですが、この世界の馬車はとても快適なんです。揺れるのなんて電車やバスと同じかそれよりも揺れないくらいなので、本を読んでいる人や爆睡している人がそこかしこにいます。

 それに利用料金もそれほどかからないので、小さな子を連れている父親や母親もたくさんいます。こんなに素晴らしい乗合馬車を作ってくれた人には感謝しないといけませんね。

 それともう1つ私が乗合馬車が好きな理由があるのですが、それは、貴族用の馬車は乗っている時間が苦痛でしかなかったからです。

 貴族用の馬車はせいぜい2人か3人、4人も乗ることはほぼないので、とても狭いです。さらに貴族は自分専用の馬車をしつらえることが多いのですが、当然1人用なので本当に狭いんです。まるで閉じ込められているみたいでした。

 私も貴族の令嬢として国にいた頃はその例外ではなく、移動の時には必ずと言っていいほど馬車に乗らされました。おかげですっかり馬車が嫌いになってしまいました。

 それに比べて街の乗合馬車は本当に快適です。人がたくさんいますが窮屈さはまったくありません。前世で乗ることはなかったですけれど、もしかすると路面電車に似ているのかもしれませんね。

 そう考えると、絶対に貴族として国に帰りたくないな……と思います。

 そもそもバックパッカーになっていたような私が制約ばかりの身分に収まっていられるはずがないんですよ。私行動を縛られるのは本当に嫌なので。ましてや王族の婚約者なんて、絶対にお断りです。家?頑張ってください。お姉様の代わりはごめんですからね!何が何でも逃げ切ってやります!


「リア、どうしたの?」


 乗合馬車の素晴らしさについて考えていると、心配そうな顔でジークが私の顔を覗き込んでいました。って、顔近い近い!


「何でもないよ。考え事をしていただけ」

「そう、しんどかったら無理しないでね」

「ふふ、ありがとう」

「あ、そろそろ着くよ、リア」

「分かった」


 乗合馬車を降りると、もう太陽が真上に近づいていました。


「さっき食べてきたばかりだけど、その辺で何か買って食べてからにしない?」

「うん。そういえばちょっとお腹すいてきたかも」

「じゃあ少し歩こうか。近くに結構大きい商店街があるんだけど、昨日の市場と違ってまた面白いんだよ」

「へえ、行ってみたい!」

「よし。あ、走っちゃだめだよ。危ないから」


 笑っているジークをせかしながら歩いていると、商店街に着きました。


「ふわあ……!」


 乗合馬車を降りたときから少し街の雰囲気が変わったような気がするとは思っていたのですが、どうやら当たっていたみたいです。その商店街は、前世で一度訪れたことのあるフランスのとある有名な商店街のようでした。少しだけ懐かしいです。


「すごくきれいね。ジークはここにはよく来るの?」

「ときどきかな。フレッドと何回か来たことがあるんだ」

「……?」

「僕と初めて会ったときにいたチャラい奴。覚えてないかな?」

「あ!」

「はは、やっぱり忘れてたし」

「そういえばあれからフレッドさん見てないけど、どうしたの?」

「あいつにさん付けなんてしなくていいよ。フレッドは僕と一緒にこの街に来たけど、1人で行動したいんだってさ。いつもそんな感じだよ」

「そうなんだ。確かに自由な人だった、気がする」

「でしょ? あ、この店僕気に入ってるんだ」

「カフェ?」

「持ち帰りもできるよ。軽食とか結構売ってるんだけどどう?」

「入ってみたい!」

「分かったよ」


 そのカフェは照明に小さなランプをいくつも使っていて、とても落ち着いた雰囲気でした。

 テーブルは温かみのある栗色の木でできていて、繊細なレースのテーブルクロスが敷かれていています。


「きれい……」

「気に入った?」

「うん」

「じゃあ、今度また来よう?」

「え、あ、うん」


 なぜでしょうか、ジークと出掛けるとその度に次のお出掛けの予定が決まっていきます。でもそれが楽しみだと思う自分がいます。本当に訳が分かりません。


「すいません。軽食を何か、2人分ください」

「はい、少々お待ちください」


 ジークが店員さんに注文すると、2、3分で持ってきてくれました。


「お待たせしました」

「ありがとうございます」

「……!いえ、恐縮です」


 ん? 私何か変なこと言いましたっけ?


「ふふ、やっぱりリアはリアだね」

「どういう事?」

「別に? そろそろ行こうか」


 カフェを出たあと、近くのベンチに座って軽食をとることにしました。小さいサンドイッチをいくつかとマフィンを入れてくれていたみたいでした。とても美味しかったです。


「よし。食べ終わったことだし、行こう」

「うん!」






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改善点などありましたら感想で教えて頂けると嬉しいです。

読んでくださりありがとうございました。

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