046:反省
(いっっってええええ!)
激しい空気抵抗を全身に感じながら、デレピグレオは心の中で泣き叫ぶ。
ここまでのダメージを受けたのはリデスカーザの手合わせで〈散弾槍〉を食らって以来の事。正直、完全に油断していた。慢心と言ってもいい。全身を焼く痛みに後悔の念が延々と押し寄せる。
しかしデレピグレオが自身のスキルに自惚れるのも、ある意味仕方ない事かもしれない。
というのも、デレピグレオの古代スキルである〈第六感〉は、危険に反応して視界に映る全てをスローモーションの如く再生させる能力を持つのだ。――厳密に言えば命中率や回避率、急所攻撃発生率等に補正がかかるスキルなのだが――これにより、デレピグレオの危機意識は正直廃れてしまったと言っても良い。
元より地球の日本で不自由なく暮らしてきた泉 宗吾にとって、誰かに襲われる等と不安を抱き過ごしてきた経験など無いのだ。
常に気を張って生活した試しもない。あるとしても信号に気を使う程度で、基本的には安全な環境下で暮らしてきた。つまりは元より危機感地能力など有していないのだ。
それに危険が迫ったらスキルの効果で自動的に世界がゆっくりコマ送りで送られていく、そんな環境下の中で数ヶ月過ごせば危機意識も低下するというものだ。
その油断が命取りとなる。
(……ったく、良い教訓にはなったけどな)
デレピグレオの自信の源である〈第六感〉は、あくまでも回避に長けた能力に過ぎない。しかし回避不可能の状況下に追い込まれた場合に、その効果は何ら役に立つ事はない。むしろゆっくりと危険が迫ってくるのが丸わかりなので無駄に恐怖を覚えてしまう。
(もう二度と食らいたくないな、あれは)
不意にフラッシュバックしそうになる思考を落下の風圧で冷ます。
(次は遠慮なく避けよう、うん。森が燃えても頑張って消火すればいいだけだし)
無責任かもしれないが問題ないはずだ。元々デレピグレオは部外者なのだ。
そこまでこの森林を心配する必要もないはずである。薄情かもしれないが仕方ないだろう。
デレピグレオは〈羽脚〉を発動し、落下によるダメージを完全に無効化させる。そして突き落とされたであろう巨大蔓を見上げ、ぐっと屈んだ。
「さてと……反撃といくか」




