041:マリアナ戦その陸
向かってくる愚か者を冷ややかな声が遇らう。
空を飛ぶ者と空を追う者。機動力の差は絶望的なまでに大きかった。マリアナが少し身体を後ろへ傾けるだけで簡単にフランとの距離を取ってしまう。
空を滑るような優雅な動きだ。
フランの拳は目的地を見失い、大きく空振りしてしまう。
「くそ! 汚ねえぞ!」
着地したフランは早速顔を上げて苛立ちを言葉にする。
宙を飛ぶと言っても、決して手の届かない位置にいるというのが何とも歯痒いところだ。
完全に物理攻撃の届かない位置まで上昇しないのは挑発の為か、向こうから攻撃しやすい位置を保つ為か、はたまたその両方か。
マリアナは再度銃を構え、空から弾丸の雨を降らす。
「チッ」
フランは文句をそこそこに地面を駆ける。
「ダァー! それいい加減ズリーぞ!」
そして再び文句を垂れながら銃撃を避けるが、お行儀良くマリアナがそれを守るはずもない。
引き金を引き続けながら、下に揃っている精鋭達に指令を下す。
「番台、アスタ・バレッジ=ズ・アナスタシアへの攻撃を許可。絶対に逃がさないように。そこにいる男への攻撃も許可するけど、その男には色々聞きたいことがある。殺さないように」
「くっ……⁉︎」
無数の視線が二人を捉える。
だがアスタは見た通り既に満身創痍。何とか立ち上がろうとするが、逃亡するのも戦闘継続するのも困難だろう。
となれば応戦出来るのは一人しかいない。
デレピグレオは押し付けようとしていた役目が返ってきた事に小さく息を吐き、覚悟を決めた。
「まあテストって意味じゃ変わらないんだが……どうしたもんか」
オートマタのパワーは、フランとの腕相撲で十分理解した。やはりこの世界においてもオートマタは完全に脅威だ。デレピグレオと渡り合うだけの腕力。あれと同程度と考えると一撃食らうだけで致命的だろう。
だが攻撃対象が自分一人であれば〈第六感〉がある以上、何とかなるだろうと踏んでいる。回避に専念すれば問題ないだろう。
しかし問題となるのが、今回の戦闘では一人ではないという事だ。デレピグレオはちらりと膝をつく少年に視線をやる。
「……我の事は気にするな。まだ我は戦える」
「強気なのも良いが、せめて立ち上がってから言ってくれるか?」
「う、うるさい!」
「やれやれ。まあアンタがある程度回復するまでは何とかやってみるさ。頼むからあんま動かないでくれよ」




