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古代文明人の生き残り  作者: 十良之 大示
第2章:森林国アハムテヘト
25/58

024:幼き王との対面

どうやって検索したかは覚えていませんが、初めて日間ランキングに載りました……!

とは言っても14ptの51位とまだまだではございますが、作者にとっては感激ものです。

応援してくださった皆様、本当にありがとうございます!

引き続き『古代文明人の生き残り』をお楽しみください!

 翌朝、デレピグレオはバルボロ達と共に王のもとへと向かう。

 王国や帝国と違い、森林国には王城が存在しない。だが代わりとして王の住まう場所は、この国で最も古くからこの地に根付いている大樹の中。森の外からでも見える一番巨大な木だ。

 森林国の象徴と言っても良いだろう。


 500年前からずっと変わらない。

 そう思うと感慨深いものがある。飾り気のないありのままの大樹を前に、デレピグレオは脳裏に浮かぶ記憶を懐かしむ。



「どうかしましたか?」

「……いや、何でもない」

「にしてもすみません、デレピグレオ殿。わざわさ仕事も手伝っていただき」



 バルボロの視線がデレピグレオの背後へと向かう。

 デレピグレオの背に背負っているのはこの国へ届ける物資だ。


 後ろに続く行列も全てが森林国へと運び入れる物資。蔓の上という不安定な道に加え、勾配の激しいこの場所では馬車は役に立たないとはいえ、やはりこれだけの物資の運搬となるとどうしても時間が掛かってしまう。


 だが大量の物資に反比例して運搬する人員は少ない。

 これも一日で終わらなかった原因の一つだろう。


 予定ではあと十往復もしない程度で全ての運搬が完了する見込みだ。とはいえ、時間に換算すれば朝日が頂点に達した後、それなりに沈む頃にはなるだろうが。



「こっちもお願いしている立場だからな。それに俺が手伝うのはこの片道だけ。そう畏まる必要はないさ」



 運搬を手伝っているのも王のもとへ向かうついで程度でしかない。

 と言うより、見知った顔が重たい荷物を運ぶ中、手ぶらで同行させてもらうのは気が引けるというのが本音だった。

 むしろ半ば強引に手伝わせてもらっている事に感謝させてほしいぐらいだ。


 流石にそこまで(へりくだ)るのは族長としての威厳にも関わる事なので自重してはいるが。



「――さて、到着しましたぞ」



 適当にバルボロと会話を交わし、ようやく目的地へと到着する。

 といっても到着した場所は大樹の下層に位置する部分。

 これから王と謁見するために、大樹の中から上を目指す形だ。


 首を九十度曲げても見えない頂上を眺め、デレピグレオは思わず息を漏らす。



「……高いな」

「……そうですな」



 既に何度か足を運んでいるバルボロでさえ、間近で感じる大樹の巨大さに圧倒される。



「では物資の運搬は部下達に任せるとして、我々は向かうとしましょうか」

「勝手に入っても構わないのか?」

「ええ。昨日の内に既に許可は得ていますので」



 そういってバルボロが見せたのは首からぶら下げている木のタグだ。おそらく通行許可証の様な物なのだろう。

 納得し、バルボロの後をついて行く。


 大樹の中は想像以上に広い。

 吹き抜けかと思えば、内側外周部が螺旋階段のように続いており、しっかりといくつかの階層に分けられていた。

 これはゲーム時のままでもあるが、誰かが人工的にこの様にリフォームしたと考えると、その技術力は計り知れない。

 正直、不器用者の多いガリバ族に伝授してほしいぐらいだ。


 それに鼻孔を擽ぐる木の匂いがまたデレピグレオを愉しませてくれる。

 ガリバ族の集落とはまた違った匂いだ。まるで――と言うよりも現実にそうなのだが――木に包まれている様なそんな香り。

 昨夜のストレスが緩やかに消えていくのが分かる。この世界に降り立って初めて訪れる場所だというのに、驚く程リラックスする事が出来た。



(良いな、コレ。集落にも巨大な木が欲しいな)



 そんな事考えている内に、デレピグレオらは王の住まう上階、その部屋の前へと辿り着く。

 そこだけ豪華という事もなく、今まで上ってきた途中にあった部屋と何ら変わらない木製扉。

 強いて言うならば、扉の横に警備の者がいるぐらいだ。

 バルボロはタグを手に取って警備の者に見せる。



「ベルンシュタイン王国のバルボロと申す。陛下にお目通り願いたい」

「ああ、陛下からも聞き及んでおります。どうぞ中へ」



 バルボロのタグを確認し、男はあっさりと扉に手を掛ける。



「アナスタシア陛下。ベルンシュタイン王国よりご来訪されたバルボロ殿でございます」

「うむ。通せ」



 奥から返ってくる幼げな声に、バルボロとデレピグレオは歩を進める。


 余計な造りは一切ない。空洞を出来る限り確保した円形の空間だ。

 上階がまだある為に天窓は設けられていないが、代わりにいくつも掘り開けた窓から光を取り入れており、部屋中から木独特の暖かみが空気に溶け込み伝わってくる。

 素材を活かした良い空間だ。


 絵画や彫刻など風情を壊す物は置いておらず、むしろ物寂しい程に飾り気がない。

 ベルンシュタイン王国の王城でもそうだが、ここは皆無と表現しても良いだろう。通常、それなりの地位にいる者は見くびられない様にある程度の見栄を張るのが一般的だが、ここではそれが全く見られない。


 それを証明するのが奥に置かれた椅子である。

 王都であればどこにでも置いていそうな簡素な木製。それも装飾が成されているとか巨大であるとか、そういった特別感はまるでない。

 ある意味この空間にある唯一の家具なので、特別と表現する事も可能かもしれないが――だが、その椅子に腰掛ける()()は間違いなく特別な人物である――はずなのだが……。


 デレピグレオとバルボロはその背格好に驚きを隠せなかった。


 陛下と呼ばれる人物としてはあまりに矮小。せめて服装で威厳だけでも着飾れば良いものの、その少年の格好はそこらに居そうな平民の軽装と何ら変わらない。しかも幼さに合わせてズボンも七部丈だから余計に青臭さが漂ってしまう。

 幾ら何でも陛下と呼称するにはお粗末過ぎだ。


 他国の王の予想外の姿に唖然とするが、バルボロはすぐに顔面を取り繕い、少年陛下の前で跪く。



「ベルンシュタイン王国、“王国の天秤”ウォルター・リューネットが副官、バルボロでござまいます」

「うむ、よく来たな。バルボロよ。我が森林国アハムテヘトを統べる国王、アスタ・バレッジ=ズ・アナスタシアである」



 薄花色をした触覚の様な髪が三本、ぴょこんと揺れる。

 やはりどう見ても子どもだ。それも生意気そうな。ひょっこりと生えた八重歯が余計にそう思わせる。



「ときに……我の前で跪かぬそいつは何者だ?」



 アスタの視線が仁王立ちしたままのデレピグレオに向けられる。



「こ、この方はベルンシュタイン王国と友好関係を結んだガリバ族という集落の長であるデレピグレオ殿です」

「……ガリバ族? 聞かんな。そのガリバ族の族長とやらを何故同行させたのだ?」

「それは……」

「横から失礼。先程紹介もあったが、俺の名はデレピグレオ。まずは国家間の会合に割り入らせてもらった事を謝罪しよう」

「ふん。ならばとっとと席を外せ。ここから先は国と国との対話だ。関係のない者が出しゃばるなど許さん」



 アスタの瞳に明確な敵意が宿る。

 格好だけで見くびってしまったが、幼い割にそれなりに覇気はある様だ。バルボロもアスタから発せられた重圧に気付いて、思わず息を呑む。



「そう言うな。すぐに済む」



 だがデレピグレオが物怖じする事は一切ない。ムッと眉間に皺を寄せるアスタを無視し、飄々と用件を話し始めた。



「この国にいる“守り神様”とやらに会わせてくれ。俺の用事はそれだけだ」

「断る!」

「……即答だな。理由は?」

「我が国を援助してくれたバルボロらに手を貸すならばいざ知らず、何故我が見ず知らずのお前の頼みを聴かねばならんのだ?」

「まあご(もっと)もだな」

「それに“守り神様”は我が国を護る結界を張ってくれている我が国の至宝。ステライドでは帝国の犬共に(おく)れをとったが、森林国への侵入は結界により完全に阻んでいる。

 万が一にも“守り神様”に何かあってはいけんからな」

(やれやれ。あの筋肉学者の言ってた通りだな。さて、どうするか……)



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