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《もう一人の序章》???→八月十三日→八月十六日→???


私は小さい頃から病弱だった。

病院から出たことは殆ど無く、いつも病室のベッドの上が私の居場所だった。

本を読むことが大好きで特に世界を冒険したり、見た事の無い何かを探し出すようなお話が大好きだった。

本をめくる白いその手が、日に焼けていない真っ白な肌が嫌いだった。

近所のお祭りの喧騒がどこからか聞こえてくる。私は窓から見える花火を毎年楽しみにしていた。

だけど、それを見れるのも今年で最後かも知れない、そう思えるほどに私の身体は年をおうごとに弱くなっていた。


十二歳になった年。

またあの夏祭りの四日前の日、八月十三日。神様は残酷だった。

どこか遠くからお医者さんたちの喧騒の声。ピーっピーっと鳴り響く機械音。

私は意識が遠のく。


そして私は夢を見た。

夢の中のその男の子はいつも元気で

誰とも会えない私の初めての友達になってくれた。

私の知らないモノを沢山知ってて、その得意げな表情に何故だか胸が締め付けられる。

沢山の感情を、気持ちを、モノを教えてくれる彼に対して

私は、恋をした。

でもその恋は実る筈も無い。だって私の存在はもう直ぐ消える。

私の中の「何か」が少しずつ無くなっていくのが解っていたから。

それに彼は、私の事なんとも思ってないみたいだし。

だけど私は・・・。

私は彼を夏祭りに誘った。

彼は元気よく頷いてくれた。


「僕、ここの夏祭り大好きなんだ!ひまわりちゃんと一緒に行けるの楽しみだなぁ!」


って、楽しそうにはにかんでくれた。

その表情に私は、明日には消えてしまうだろう私は胸が痛む。

でも、お願い、どうか好きな彼と、ずっと行きたかった夏祭りに一緒に行かせてください神様。

私はこぼれそうになる涙を上を向いて堪えながら、彼の去った花畑で願っていた。


夏祭りは楽しかった。

大好きな彼の後ろを追いながら、流れていく人ごみに逆らいながら歩く。

やはり彼以外に私の姿は見えていない様だったけれど、私は楽しかった。

この時間がずっと続けばいいのに、何て思っていた。

だけど神様はやっぱり残酷だった。


「おぉ、坊主、そんなに買って食えるのかい?」


「僕一人じゃないよ!ほらひまわりちゃんと一緒に食べるんだ!」


「・・・?何言ってるんだお前一人だろ?」


「え・・・ひまわりちゃんがここに居るよ!ほら、ここに!」


「いや・・・そんな奴おじさんには見えないぞ・・・」


「え・・・?」


彼の視線が私を向く。

私はその目に、耐え切れずに逃げた。

そして辿り付いたのはあの花園。

私は堪えきれずにあふれ出そうになる涙を抑えるため上を向く。


「ひまわりちゃん・・・」


後ろから息を切らして声をかけてくれる彼。

私を呼ぶその震えた声に恐怖の感情が混じっていた。


「待って・・・」


「あのね、りゅーじ君、私ね・・・」


「私、幽霊、なんだ」


そう告げると、彼は小さな悲鳴を上げた。

そしてじりじりと、後ずさりして・・・


「・・・っ」


行って、しまった。


「わかって、たけど、なぁ・・・」


寂しさと苦しさ、そして何よりも


「傷つけて怖がらせちゃった・・・」


押し寄せる後悔が私の瞳からあふれ出る。


「あっ・・・」


それを拭おうとした両手が透けている事に気付いた。

この現実めいた夢もここで終わりなんだ。

あの時私は死んでしまったのだろう。

それが好きな人が出来て、ずっと行きたかった夏祭りにもいけて、

退屈で苦しい人生だったけど、最後にこんな・・・こんな素敵な夢を見せてくれた神様に感謝を・・・


「そんなこと・・・言えないよぉ・・・」


もっと彼と居たかった、もっと彼と話して居たかった。

夏祭りだけじゃなく、他の事も、沢山知りたかった。

それに、それに・・・。


こんな最後、絶対にいやだった・・・。

止まらない後悔に私は再度願った。


「お願いします・・・神様・・・もう一度・・・『もう一度、あの日に戻して』・・・!」


そして私の意識は闇へと溶けていった。




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