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今日から学校と仕事、始まります。①莞

木見潮朱里咲講師の焦る一日

作者: 孤独

◇  古文はだいたい   ◇


「えーっ、ですから」


木見潮朱里咲は、高校で現代文、古文を勤めている女性講師。

ちょっと変わった講師である。しかし、人とはまともなんて事はないだろう。


「…………」

「先生?どうしたんですか?」

「……古文の例文は色恋沙汰ばかりなので、正直やりたくないな。まったく、別の意味でイライラする」

「俺達もやりたくねぇよ!どこで役に立つんだ!?」

「講師が教科書に指摘するのか!?」

「そーいう疑問!?」


年齢は○○歳。婚期を気にしているお年頃。

自分のことは多少、容姿は良いと思っている。だが、人の評価。主に男の意見は聞きたくない。


「むっ」


見た目は細いが、体の中身は良質な筋肉と器用な手先、肉体操作などの身体能力を備えている”超人”。例えば、


「そこ!男女で教科書を見せ合っているな!!」


古文の教科書を瞬時に握り潰し、平面とし、素早く織ったのは一羽の鶴。教科書の折鶴で、女子生徒の額に当てる。


「いたぁっ」

「朝からイチャイチャするとは何事か!?教科書を忘れてるんじゃない!」

「教科書を折鶴にする講師に言われたくない!!」



◇   要約:全員殴れる   ◇


「風紀委員を担当する先生を決めます」

「私がやりましょう」

「木見潮講師。宜しいのですか?割と大変ですよ。校内と校外の見回りとか」


教員会議。

高校生がやる委員会の、責任講師を決める席。木見潮講師は風紀委員の担当に


「恋愛をしている男女にその肩書きを持って、ご指摘して宜しいのですよね?」

「いや、そーいう事項ありますけど」

「ちゃんとラインを引いてくださいね!」

「化粧している子の注意とか」


木見潮講師を警戒する教師の皆さん。そんな不安を


「ともかく、私より若い奴は片っ端から殴れるようにします。粋がってんじゃないよって」

「それ全員殴ります宣言ですよね!?」

「ダメですよ!!」



◇   この苗字は滅亡しろ   ◇



「ババァ」


その言葉を聞いた瞬間。木見潮講師は、発言者に一気に詰め寄る。

廊下ですれ違う程度で聴こえた言葉ですらだ。木見潮講師は男子生徒の1人の、胸倉を掴み、持ち上げ、壁に押し付ける。恐怖の壁ドンに、血走った顔で尋ねる。


「誰がババァだ?お前等とそんなに変わらないからな。周りに同年代多いから調子乗ってるな」

「あ、あの」

「お前等の青春なんか長くても、あと4,5年だからな。就職活動と勉強、バイトで忙しくて、恋愛なんてする余裕ないからな、絶対するなよ。次言ったら、病院送りだからな」


あと少しで病院送りにされそうになる男子生徒。そこへ


「いや、木見潮講師!その人は”馬場”くん。敏感過ぎます!」

「…………紛らわしいな。これから生徒は名前で呼び合いなさい。馬場なんて名前はないだろうし!私も勘違いしない!」


それはそれで、男女同士の仲が良くなりそうだが。

今後、馬場という人とは関わらせないようにした。



◇   慈流格闘術の継承者   ◇



「ボールを蹴ってくださーい」

「ん?」


校庭から飛んできたのはサッカーボール。お花に水をやっているところ、木見潮講師の前に転がって来た。球技にはそれほど詳しくないが、


「蹴ればいいのか。行くぞ」


女性らしい蹴り方をするのかと思えたが、違う。しかし、サッカー選手とも違う。それは武道を携わるものが行なう蹴り。一度目の蹴りでサッカーボールを上げ


「さぁぁっ!!」


上体を捻ってから跳んで回る。


ベギイィィッ


ボールを蹴るというより、動かず抵抗の無い標的を気持ちよく蹴るための動きであったと周りは認識した。それほどアクロバティックな蹴り技。サッカーボールは強力な横スピンが掛かって、校庭を抉っていた。せっかくグラウンド整備したのに……


「ふふっ、動かぬ物を蹴るのは久しぶりだ」


なぜかスカッとした木見潮講師に、別の意味で注意はできなかった。


◇   変な人だから思うんです    ◇



スポーツ万能というよりかは、身体能力の突出。


「朱里咲講師ってモテないんですか?容姿、悪くないじゃないですか」

「そう思っておるんだがな。声を掛けられた事がない」


作ってきたお弁当を食べる。生徒達がするように教員同士でもやったりする。


「家事もできますよね?手作りですよね、そのお弁当」

「うむ。栄養バランスを考えてな。そこそこできると思っているぞ」

「なおさらですよ」


かなり変わっているが。

歳が近い人にはそーいう疑問を持ってもらえたら、望みはあるだろう。

木見潮講師はやや残念に想いながら、


「いちおだが、そのな……。片思いをしている男がいるんだ」

「へーっ!一途なんですね!」

「だが、付き合えん。遠くの世界にいて、すぐには会えないし、別の人と付き合っているのも知っていてな。もどかしいものだ」

「素敵ですね」


一途な想いで出てくる、若さへの八つ当たりもあるんだろう。自分が上手く行かなかったから


「でも、二次元の男性と恋をしているのは大変ですよ?」

「私の想い人は二次元と違うんだが…………」


◇   女性は防護から   ◇



「ホラー、締めが温いぞ!」


木見潮講師は、空手部と柔道部の顧問を勤めている。国語の教員であるが、卓越した身体能力と武術経験があることも含め。この顧問を引き受けている。割かし盛況であるが、


「男子には教えんぞ」

「ええー?柔術のプロなんでしょ」

「寝技とか」


こーいうアホな男子生徒達が多くて困る。そして、なにより


「貴様等馬鹿男子から身を護る術を、女子に教えているだけだからな」

「つまんねぇー」

「絶対、寝技知らないんだよー。この講師はー」

「…………」


木見潮講師は男子生徒の文句に答え、1週間は四肢が動かないように、キツイ寝技を体に叩きこんであげた。



◇   根気がねぇーんだよ    ◇



スポーツ活動にしろ、勉強にしろ。


「あー、もう疲れた」


そーいう声があがるもんだ。女子ならそーいうのは良くある。


「根気がないぞ、お前等!」


激を飛ばすも、講師の仕事。技術より前の、精神も考慮する木見潮講師。


「あ、そ、そのな。私にはまだ婚期があるし!お前等にも婚期が来ると思うぞ。まだ早いだけで!」

「そー思ったのは、木見潮講師だけ!!」




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