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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

そして呼吸は静かにとまる

作者: 伊調 奏

あんた、何になりたいの?

こんな言葉に人は大それた答えを求めてなんかいない。



大概自らを語り出そうとしない謎めいた人間へのうすっぺらい好奇心だったり、話をつなぐためだけの接続詞に似た役割の言葉だったり、答えをわかっていて否定をしてみたり貶してみたり、それと時々本気で応援するよと熱く語り出すためだけの軽い質問でしかない。



応援するよと火がつけばそれはもう、火に油を注ぐならぬ、酒飲みに焼酎のボトルを下ろしてあげて、尚、乾ききったようなやっすいおつまみまで差し出してしまった状況のようなもので

誰も何かになりたいといったその言葉や勇気や抱いてる夢そのものなんかに興味なんかありはしない。


中身のない会話、それを求めてグラス片手に皆は聞くんだ。

あんた、何になりたいの?

そんな口先からでてきた、言葉という空気の振動に、私の漬物石のように微動だにせずただ沈んでゆくのを望み、待っているだけの日々を送る存在の人間にはもちろん答えなんてない。


でも惨めになんか感じなかった。

私に問いかける人間達も皆、漬物石にしかみえないから。



だから笑うんだ。笑って、笑って、笑って目をくしゃっとさせて口角を上げて喉から乾ききった笑い声を出して言うんだ。


ないですよ、何にも。


そう、何度聞かれてもいつ何時聞かれても同じ様にして壊れた電子おもちゃみたいに何度も何度も言うんだ。

ないですよ、何も。

ないですよ、何も。

ないですよ、何も。


ないんですよ、何も。私には、何も、ないんです。




いつから笑うようになりましたか?

そんな質問に答えられる人間なんているだろうか。

答えは同じなんだ、いつからそんな漬物石のような人間になってしまったのか、だなんて。


でも赤子は生まれてすぐに笑ったりする、そんな話を聞いたことがある。

だとしたら私は手を叩いて大きな声で叫んでやりたい!笑いながら叫んでやりたい!私は赤子の時から、うまれたときからずっとずっと漬物石なんだ!と!


しかしそんな奇想天外、意味不明な言葉を笑いながら叫んだところで何にもならないマイナスになろうがプラスになろうがなんて考えじゃない、そんなことはどうでもいい。

私のこの漬物石は変わらない、何にもならない。

漬物石の私は変わらない、何にもならない、変わりたくない、何にもなりたくない、何も望みたくない

ただおもたいだけのちっぽけな人間なのに。


人生は矛盾だらけだ。

心と言葉はきっと喧嘩をしている。

ずっとずっと、長く冷たい喧嘩をしているんだ。


耳と心だって喧嘩をしているんだ。ずっとずっとしているんだ。

だから耳から入る言葉たちは心を傷つけ、それでも耳はそれを止めようとなんかできずに心に流れ込んで行く。


体は1つでもまるで奇妙なほど合わないピースをつめあわせた外国の粗悪なお土産品と同じだ。

ただそのお土産品をみて笑うだろう。

なんだこれは、と数分盛り上がって皆で笑うだろう。


その数分。

その数分のために私はどうしてこのバラバラになった

体たちを、心を、脳をいったいどうすればいいと言うのだろう。

しなければならない権利なんてない

こんなめんどくさいものばかりがつまったものではあるが

紛れもなくこの体は私のものだから。

だから漬物石でいいのよ。


いつからなんて、もううまれたときから私は漬物石。でいいのよ。


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