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プロローグ
「・・・・・・」
(ここはどこだろう。)
頭上には立体交差の歩道橋がかかっている。
前方には信号機と縞模様のスクランブル交差点。
歩道の信号機は赤だった。
その間、何台もの車が僕の前を横切って行った。
(僕は誰だろう・・・)
(何も思い出せない・・)
その時、突然ポケットの携帯電話が鳴り出した。
携帯の画面には如月慶子と表示されていた。
無意識に僕は電話に出ていた。
「たーく。お腹空いた。」
けだるい女性の声だった。
(僕はタクという名前なのか。)
「もしもし、タク?」
「あ。もしもし。」
僕は答えた。
「ねー。タク。お腹空いた。今、どこ?」
(ここはどこだろう。)
「・・・・・・・・・・」
「ねーね。大名のレジーナがいいなぁー。」
「レジーナでご飯を食べよ。」
「それじゃ、レジーナで待っているね。」
そう言って電話は切れた。
(レジーナはどこだろう。)
そんなことを考えていると、信号機が青に変わった。
僕はよく分からないまま、スクランブル交差点を
歩き出していた。