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名無しの物語  作者: こめ
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第九話 赤竜眼



「竜の・・・目?」



自分でも信じられないくらい間の抜けた声。



「ああ。君は竜の血に打ち勝った。そのおかげでドラゴンの力を授かったのさ。君の場合赤竜の目だから赤竜眼っていうんだけどね。」


「ち、ちょっと待ってください!その、赤竜眼とか竜の血とか、いったい・・・!」


「あ、ゴメン。そっか、もっと順を追って説明しないといけないんだったね。」



男になだめられる。・・・そういえば、まだ名を聞いていなかった。



「あの。」


「ん?なんだい?」


「・・・僕は日野トウマって言います。・・・あなたは?」


「しまった。自己紹介もまだだったね。僕の名はライル。ここで守人をしてるんだ。」


「・・・モリビト?」


「ん〜、まあ番人みたいなものさ。さて、どこから話せばいいのやら・・・。」



そう言うとライルさんはこの世界の事と、さっきのドラゴンの事なんかを話してくれた。



要約するとこうだ。まず、今いるこの場所。ここはグランベルドという王国の北に位置する竜神の山、と言う所らしい。この竜神の山は名前からもわかるようにドラゴンが多く生息しているらしく、冒険者などからは死の山、なんて名で呼ばれているらしい。

その所以はやはりドラゴン。この世界ではドラゴンは最強の部類に入り、そのドラゴンと盟約を結んでる、なんて伝説のせいでこの国は他国から攻め込まれる事がほとんど無いそうだ。



「だけどドラゴンには色んな逸話も多くてね。竜の目を喰らえば不老不死になれる、とか、竜の涙には万病を癒す力がある、とか。」



そのためそれを手に入れようとする輩も結構いるらしく、それを防ぐ為にライルさんはここで守人をしているらしい。ちなみに、勝手にドラゴンを殺したり傷つけたりすると国家反逆罪になるらしい。まあ滅多な事では起こらないそうだが。



「で、・・・君の赤竜眼のことなんだけど・・・。」


「やっぱり、まずいんですかね。コレ。」


「まあ、ね。そのままほっとくと国から追われる事になるだろうね。」


「・・・マジスカ。・・・どうにか、なりませんかね?」


「う〜ん、君次第、かな。」


「え!どうにかできるんですか!?」


「うん。そもそも、竜の力を得る事が出来るのは極少数なんだ。」



ライルさんによると、竜の血は本来人間の体には有害だが、、特殊な方法で希釈すれば人の体を癒す薬になるらしい。そのまま摂取すればほとんどの場合死に至る。が、まれに血をそのままでも体内に取り込める人間が存在するそうで、竜の血をそのまま飲んで回復でき、その回復量もハンパではないらしい。



「けど、それは口から飲んだ場合なんだ。血を目に入れるとなると、話は変わってくる。」



竜の血を目に入れると、体質に強烈な変化が起こる。結果から言えば、身体能力が跳ね上がり、身体は凄まじく強靭な物へと生まれ変わる。更に特殊な能力を得る事が出来る場合があるらしい。が、当然それ相応のリスクも付きまとう。まず、血を体内に取り込める体質である事。そして、身体の変化に際して起こる凄まじい苦しみに耐えられる精神を持っている事。たとえ血を取り込める体質だったとしても、この苦行に耐えられずに精神が死んでしまう場合が非常に多いそうだ。



「君は覚えていないかもしれないけど、この二日間君はずっと苦しんでたんだよ。身体は血の力でほとんど回復していたんだけど、ベッドの上でのたうち回って、胸を掻き毟って、暴れてたんだ。妹さんは必死になって押さえ込もうとしてたんだけど・・・。」


「・・・そうだったんですか・・・。すみません。ご迷惑をお掛けして。」


「いやいや。助かったんだからかまわないよ。・・・それにしても、兄思いの妹さんだね。」


「え?」


「二日前、すごい音がしたから何事かと思って家を飛び出して音の方向に向かってみたら、気絶してる赤竜と、もう本当にグシャグシャって表現がぴったり来る状態の君を必死になってゆすってる妹さんがいたんだよ。で、僕に気付くなり『お兄ちゃんを助けてください!』ってね。」


「・・・・・・。」


「それで、分の悪い賭けだとは思ったけど、君に血を飲ませた。・・・結果見事に回復し始めたからとりあえず家に運んだら、今度は苦しみだして・・・。」


「・・・言葉も無いです・・・。」


「あ、ごめんね。別に君を責めている訳じゃないんだ。ほとんどは偶然の産物だしね。ただ、あんなに良い妹さんがいるんだから、あんまり泣かせちゃだめだよって話さ。」


「・・・はい。肝に銘じときます。」



本当に、気をつけなければ。この世界に来てから二日しか経ってないのに、もう何度野々香を泣かせたやら。・・・このままでは兄貴失格だ。



「それにしても・・・運が良いやら悪いやら、だね。君も。」


「・・・へ?」


「君が戦ったドラゴンはね、実はまだ独り立ちもまともに出来ていない竜なんだよ。たぶん、この山全体でも最弱と言って過言じゃないと思うよ。」


「最弱!?あれで!!?」


「ああ。本来は親竜が付いてて守ってるんだけど、縄張り争いで死んでしまってね。どうなるか僕も心配だったんだ。」


「・・・あいつ、死んじゃったんですか?」

「いいや。竜の生命力は半端じゃないからね。あの位では死にはしないよ。」



ほっと胸を撫で下ろす。・・・ドラゴンとはいえそんな雛鳥みたいな奴を殺したとあっては後味が悪い。・・・しかし、アレで雛鳥・・・?



「どんな生物も子供時代は大概可愛らしいもんだがなぁ・・。」



とりあえず可愛らしさの欠片も無かったのは間違いない。



「あと、竜眼の強さは血を受けた竜の強さに比例するから、君の眼も最弱レベルって事だね。」


「そ、そうですか・・・。」


「あ、ただね。若い竜の血を受ける事ができたのは良かったかもね。若い竜の特殊能力は決まって可能性だから。」


「可能性・・・?」


「そう。能力が決まっていない、とも言うべきかな。歳をとって強大になった竜の血はその能力も強大な代わりにそれ以上強くなる事は無い。だけど若い竜の血は最初は弱い代わりにはどんどん鍛えていく事が出来るんだ。場合によっては歳をとった竜の血よりも強力な力を得ることも出来るかもしれない。まあ弱いとは言っても普通の人間からすれば劇的に強くなるんだけどね。」



「それは・・・。」



それは丁度良い。俺は、もっと強くならなければならない。野々香を守るために。まして、こんな訳の解らない世界ならなおさらの事だ。



「・・・とりあえず、僕達はどうすればいいんでしょう?」

「うん。まずは王様に会って、許可を貰ってくるべきだとおもうよ。」

「許可?」

「そう。君の竜眼のね。僕からも推薦状を書いとくから、それを見せれば手続きは出来るはずだよ。」


「・・・ありがとうございます。でも、なんでそんなことができるんです?」

「これでも王宮で働いてた事があったんでね。結構顔が利くんだ。」

「へぇ・・・そうなんですか。」






とりあえず今日はここまでになった。ベッドを貸してもらい、床に就く。




・・・目的は決まった。なんだか妙な事になってきたが、とにかく前に進もう。






色々考えるつもりだったが、思ったより疲れていたらしく、あっさりと夢の中へと沈んでいった・・・





どうもこんにちは。こめです。え〜今回のお話。本当は第八話と合わせて前後編になる予定でした。が、前編って書き忘れてしまった!!!・・・ごめんなさい。まぁ内容に変化があるわけではありませんので気にせず楽しんでいただければ幸いです。では。


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