第八話 竜の目
グォォォォォオオオオオオオオオ・・・・・・・・・・・・
奴が起き上がった。緩慢な動作で。
「ちぃっ・・・!」
「・・・・・・。」
野々香が無言でしがみついてくる。気持ちは解る。いくら規格外とはいえ、腹のど真ん中に突き刺したのに、・・・まだ起き上がるとは。少なくとも無問題と言う事は無いはずだが・・・。
グゥウゥゥゥゥゥゥ・・・
恨みがましそうにこちらを睨む。と、突然。
ガアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!
吼えた。と同時に一直線にこちらへと突っ込んで!
「くっ・・・!!」
「きゃっ!?」
野々香を思い切り突き飛ばす。もう、目の前に、赤竜が。
「うああああああああっ!」
ドゴオオオオオォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオン・・・・・
凄まじい音と、とんでもない衝撃。そして、自分の体が砕ける音。正直、ああコリャいくらなんでも死んだなぁ、と思った。・・・はぁ。また、野々香を泣かせちまうなぁ・・・・・・。
そこで、意識は、途切れた。
・・・・・・・・・暗い。
・・・・・・・・・真っ暗だ。自分以外は誰も居ない。
時間の感覚も無い。自分がどっちを向いてるのかもワカラナイ。
ああ。これが、死。
思ったよりも寒い。
思ったよりも虚無。
・・・思っていたよりもずっと孤独。
別に天国に行きたいとは思っちゃいなかったが、・・・地獄って感じでも無い。
案外皆こんな感じなのかも。
それにしても・・・寒い。寒すぎる。
・・・・・・・・・・・・・・ん?
なんか左手だけ、妙に暖かいような・・・・・・
・・・・・・・・・最初に目に入ったのは木で作られた天井だった。
「・・・?ここは・・・?」
周りを確認する。時間帯は夜。どうも自分はベッドに寝かしつけられている。体は包帯だらけ。ベッドの隣に・・・両手で俺の左手を握り締めた、野々香が眠っていた。
「・・・そっか。」
右手でゆっくり頭を撫でる。よく見ると、目の周りが真っ赤だ。やっぱり、泣かせてしまった。と、あることに気づいた。
「体・・・なんとも、無い?」
そんなはずは無い。あまり思い出したくは無いが、確かに俺の体は致命傷と言っていいほどのダメージを受けた。ちょっとやそっとで直るはずが無い。
「どうなってんだ・・・?」
少しの間思案していると、部屋のドアがぎぃ、と静かに開いた。
「おや。目が覚めたのか?」
入ってきたの細身の男だった。三十歳位だろうか。ん?・・・耳が、長い。十センチ程だろうか。・・・まあ今更その位では驚かないが。
「事情はだいたい妹さんから聞いているよ。・・・もう、動いて大丈夫なのかい?」
「え。あ、まあ。なんとか。」
ベッドから起き上がる。が、左手が強く握られたままだ。
「眠っちゃってるね。無理も無い。ほとんど寝ずに君の看病をしていたからね。」
「え?・・・そうだったんですか。」
「ああ。そのまま寝かせてあげると良い。君とは、少し話をしたいんだが、いいかな?」
「・・・はい。わかりました。」
野々香を抱き上げてベッドに寝かせる。強く握っている指を、一本一本ゆっくりと外す。
「ん・・・。おにい、ちゃん・・・。」
「・・・ありがとな。俺はもう大丈夫だから、・・・ゆっくりおやすみ。」
「んぅ・・・・・・すぅ。」
指を外し終え、軽く頭をなでる。少しくすぐったそうにしたが、起きる気配は無い。
「コーヒーでいいかな?」
「あ、ハイ。今行きます。」
いつの間にかいなくなっていた男が隣部屋から声をかける。・・・色々と聞かねばならない。
隣部屋に入ると、木で作られたテーブルの上に、コーヒーが入ったコップが二つ。男はテーブルの向こう側に座っていた。
「どうぞ。座って。」
「・・・すいません。あー、まず。・・・助けて頂いてありがとうございます。」
「ん?いや、どういたしまして。それにしても大変だったね。竜の巣に落っこちるなんて。」
「ええ、まあ。・・・あの、二、三お伺いしたいことがあるんですが。」
「なんだい?私に答えられる事なら答えてあげよう。」
「あの〜。ここ、どこなんですかね?」
「・・・・・・。」
男はきょとん、としている。・・・質問がストレート過ぎたか。
「あの、え〜っと、ですね。」
「・・・ふむ。どうやら妹さんの言っていたことは本当みたいだね。」
「へ?どういことです?」
「君達が妙な布に包まれて気がついたら竜の巣だった、って話だよ。」
「!何か、知ってるんですか!?」
「いや、残念ながら。そういうものに関しては門外漢でね。」
「・・・そうですか。」
できるなら一刻も早く戻った方が良い。もしやと思ったが、そう簡単にはいかないか・・・。
「すまないね。力になれなくて。」
「いえ、とんでもないです。あ、それから・・・僕はどのくらい眠ってたんですかね?」
「ほぼ二日、だね。見つけたときは凄かったんだけどねぇ。とてもじゃないけど助かるとは思えなかったけど。」
「やっぱり。・・・でも、じゃあなんで・・・。」
「ああ、それはね、たぶん・・・あ、とりあえずコーヒー飲んでみな。」
「は?はぁ・・・。」
コップに手を伸ばし、掴む。と、
パリィン
「へ??って熱っつ!?」
コップを握りつぶしてしまった。普通に掴んだだけなのに。
「う〜ん。やっぱりね。」
「え?え??どういうことなんですか!?」
男に詰め寄る。すると、実にあっさりと答えた。
「君は、竜の目を手に入れたのさ。」
初めましてこんにちは。こめです。いきなりの強敵からなんとか逃げ切り、トウマは力を手にしました。これがどんな能力なのかは次話説明しますが、物語はいよいよファンタズィー(笑)の大海原へ!!・・・何とか頑張って執筆していきますゆえ、ご意見、ご感想お待ちしてます。