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名無しの物語  作者: こめ
30/34

第三十話〜決勝戦、前編〜


『さぁー、今大会もいよいよ大詰め!竜神祭大武闘会、決勝戦を執り行います!!』



アナウンスの声が会場に響くと同時に、観客からもすさまじい歓声が帰ってくる。

たいしたもんだなぁ、とトウマは思った。いくらクレアと結婚できる可能性が出来るとはいえ、この盛り上がりは異常といってなんら差し支えないレベルだ。葉山から聞いた話では、本当は予選の予選、そのまた予選のような物もあったらしい。参加者総数は数えてはいないそうだが、恐らくは千や二千では及ばない数参加しているはずだ。

 


『今大会は15年ぶりの王位継承権争奪戦とあってその盛り上がりたるや凄まじい物がありました。国民の皆様はもちろん、世界中から参加が有ったといっても過言はありません。その幾多の強者達を押しのけ、今この舞台に立つ方々をご紹介しましょう!まずは、全くの無名、完璧にダークホースであったにもかかわらず圧倒的な強さを見せ、ここまで勝ちあがってきました。謎の旅人、ヒノ・トウマ選手―――――っ!!』



名を呼ばれ、トウマが会場に姿を現す。声援、罵声、様々な声に軽く気おされつつも、リング中央へと足を進める。



『続きまして。普段はフリーの運び屋、しかし実はこれ程までの実力を隠していました!もう下っ端人生なんてお別れだ!俺が帝王になってやる!!アイカーワ・バッカティ選手――――!!!』



「・・・は?」


思わずそんな声がでる。結局対戦相手を直接見ることはできなかったが・・・・アイカーワ?それは確か・・・・えっと・・・なんか思い出せないが、とりあえずこんなところまでこれる奴ではなかったはずである。・・・たぶん。


歓声が上がるなか、そのアイカーワという男が姿を現す。その、姿は。


「な・・・・!お前は・・・!」

「やぁ、また会ったね。君なら必ず勝ち残ると確信してたよ。」


ニッコリと微笑む、その男は。断じてなんだか思い出せない男ではない。


「ヨシュア・・・・!」

「そう睨まないでくれ。こうなったのは、本当に只の運と、僕の実力だよ?」


そういってまた、ニッコリと微笑む。こいつは・・・そう、間違いない。服装こそ変わっているが、グランベルドに入る前、戦った・・・ネーリアという国の部隊長だ。


「そうかよ。だが、なんでそんな名で参加してる?お前は」

「僕はアイカーワ。普段は運び屋だけど、運良く予選を勝ち抜いて、何故か本選が始まると同時に戦いに目覚めて決勝まで勝ちあがった・・・、それだけの男だ。」

「・・・・・・・。」


ここで問答しても仕方がない。相手がこの男だというのならば、全力で叩く。それだけの事だ。



『それでは、本大会における決勝戦特別ルールを説明します!と、言っても基本となるルールは同じ。相手が戦意喪失、あるいは場外になった場合、残った選手の勝利となります。戦意を失っている者への過度な追撃は反則と見なします。武器、防具は申請の有ったもののみ使用可能です。それから先の戦いでありましたが、薬物等の使用は禁止です。ここまでよろしいですね?』



二人がこくりと頷く。



『そして決勝戦最大の違いは・・・今までの一対一ではなく、王国の側から推薦された兵が一人参加し、一対一対一となることです!この兵に負けた場合、王位継承権は次回に持ち越しとなります!!当然優勝賞金等も持ち越しになりますのでお二方とも全力で戦ってください!』



観客から更に歓声が上がる。どうやら知らなかったのはトウマだけらしい。



「ちゃんと説明しろよな・・・葉山め・・・。」


予想外の事態に軽く困惑しながらも、とにかく気を引き締める。どの道やることはかわらないのだ。考えても仕方ない。



『それでは!我がグランベルドが誇る王国兵をご紹介しましょう!その名も!ミスターーー!エーーーックス!!』



「・・・・はぁ???」


本日二度目の?マークを浮かべるトウマ。何となく嫌な予感がした直後、その予感が確信に変わる声が会場に響き渡った。


「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーーーンッ!!!天呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!決勝に残って浮かれてる奴らを闇討ちしろと俺を呼ぶ!!闇討ちしようとしたら返り討ちに会いそうだからヤメタのは秘密ダゼ!王国最後の切り札、ミスターX!ここに、参っ上!!」


観客席の一番上にあるグランベルドの国旗がある場所で、紅いマントをたなびかせ、サングラス(っぽいもの)を装着してはいるがほぼ素顔をさらしている葉山がそこに、立っていた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





あれほど歓声に包まれていたはずの会場が一気に静まる。なにやら満足顔で頷いているのは本人だけだった。


「・・・・・・。」

「ん、どうしたトウマ。俺の勇姿に見惚れたか?」

「・・・いや、お前が満足ならそれで良いが・・・・。」




「あー!ハヤマだー!。」

「しっ!二人とも、見ちゃいけません!!」




そういって野々香がユイとムイの眼を塞ぐ。ナイスだ妹よ。


「とぅっ!」


微妙に芝居がかった掛け声と共に、リングへとダイブする葉山。激突するかと思われたが、どういう仕掛けなのか空中で減速し、ふわりと着地した。


「トウマ・・・俺を今までの俺とおもうなよ?」

「なるほど。ファンタジーな世界に来て、頭の中までファンタジーになったのは良く分かった。」

「・・・キミらは知り合いなのかい?」

「いや、マッタク。俺に○○○○な知り合いはいないんでな。」

「酷っ!いくらなんでも酷いぞトウマ!!」



やいのやいのとしゃべり始めた三人を見て、ようやく審判がショックから回復する。



『え、えーと。よろしいですか?少佐?』



「ん?ああ、良いぞ。始めてくれ。」



『えー、ごほん。それでは、気を取り直して・・・。』



大仰な咳払いと共に仕切りなおす。観客は微妙に回復しきれていないが、まぁなんとかなるだろ。



『それではこれより、竜神祭大武闘会、決勝戦を開始します!!!』



審判兼実況の大きな声と、同時に上げられたのろしのドォン、ドォン、という破裂音。


正にそれが合図となり、竜神祭決勝戦の幕は、切って落とされた。




最初に動いたのは葉山だった。マントに隠れてよく判別できてはいなかったが、エモノは刀だ。居合い切りの要領で全く何の躊躇もなくトウマを切りつける。当然ながら真剣だ。

トウマはその一撃を左手の小手で受け止める。刀を直角で受けた腕を斜めにずらして受け流し、そのまま葉山の鼻っ柱に肘打ちを打ち込む。直撃するかに見えた一撃はとっさに反応していた葉山の左手につかまれる。が、当然勢いを殺しきれず、肘は左手ごと顔面にめり込み、葉山を吹き飛ばす。



ヒュン



風切り音。


完全に虚を付かれ、どうにか顔をずらしたものの何かが右頬を掠め、そこから鮮血が舞う。


「ちっ!」


更に二撃、三撃。パァン、パァン!と何かを叩くような音が響く。

二撃目はどうにかかわしたが、全力で飛びずさったが三撃目が鼻先をかすめる。


「っ・・・!」


攻撃してきたのは、間違いなくヨシュアだった。トウマを攻撃した物がヨシュアの手元へと戻る。


「鞭かよ・・・!」

「ご名答。ふむ、どうやらちゃんと利くようだね。」


余裕たっぷり(に、トウマには見える)の笑顔で答える。


「やっぱ一筋縄じゃいかないか。・・・けど、あいにく俺には叩かれて喜ぶ趣味は無いぞ?」

「ああ、心配要らないよ。ま、そっちの方がメジャーなんだろうけどね。これは叩くための武器じゃないから。」


そう言ってヨシュアは空中に鞭を振るう。と、何も無い空間でパァン!と音が鳴った。


「鞭ってのは扱いこなすとかなり変幻自在に使えてね。しかも速い。この音は鞭の先端が音速を超えてる証なんだよ。」


そう言って自分の身長よりも遥かに長い鞭をまるで手足の延長であるかのように振り回すと、次々と恐怖心を煽るような破裂音が辺りに次々と響き渡る。


「どうだい?音速が見切れるかな?・・・君の眼には。」

「・・・・・・。」


正直、見えなかった。腕の動きを見ていけばある程度予測は出来ると思うが、反応が間に合うかどうか・・・。


「ふーん、中々に面白いなそりゃ。」


と、先ほど吹き飛ばした葉山が起き上がってきた。胸元からスペアのサングラスを取り出し装着すると(最初つけていたのは肘鉄で飛んでいった模様)、キリっとヨシュアに向き直る。


「が、だ。そんなに手の内見せちまっていいのかねぇ?どんな不思議現象でもタネを知ってりゃどうにかなるもんだぜ?」


にやりとする葉山に相も変わらずの笑顔でヨシュアが答える。


「ふむ・・・それは道理だね。けどまだまだ引き出しは沢山あるから早々あきさせないよ?それに。タネが分かったところで君にどうにかできるのかい?」

「ふふふ。なめんなよ?少佐ってのはな、脅しと策略だけでなれるものじゃないんだぜ?」

「え。脅しと策略だけじゃないのか。意外だな。」

「黙れ筋肉馬鹿。」

「なんだとぅ!?」


ぎゃいぎゃいと言い争いが始まろうとした瞬間。


ヒュパァッ!!


「!」

「っ!!」


弾かれる様にその場から飛びのく二人。正確に二人の頭部があった位置から破裂音が響く。


「君たち随分余裕だね。まだまだいくよ?」

「ち!」

「ぅお!?」


更にヨシュアの攻撃は続く。上から、右から、左から。たった一本の鞭で何故これほどの

連撃が出来るのか。


「っ!トウマッ!手ぇ貸せ!」

「具体的には!?」

「俺支援+分析!お前突っ込め!文句は!?」

「後で言わせてもらう!」


今まで防戦一方だったトウマが一気に踏み込む。


「む!」


ヨシュアの攻撃がトウマに集中する。倍加した連撃を、驚異的な脚力と反射神経で回避し、防ぎ、ある程度の被弾は無視して一気に懐まで飛び込む!


「取った!」


体を十分に引き絞り、会心の一撃をヨシュアに叩き込もうと、した瞬間。ヨシュアの右手がふ、っとトウマの額に触れた。


「!?」


考えるよりも速く。トウマに電撃のような衝撃が走った。


「『雷神の怒り』!」

「ぐぁぁぁぁああっ!?」


思わず後退するトウマ。と、ヨシュアは左手を後方へ向ける。


「『風神の盾』よ!」

「うぉぉっ!?」


ヨシュアの後ろには、いつの間に移動したのか、葉山が切りかかろうとしていた。だが、それもヨシュアの放った何かに防がれまたも吹き飛ばされる。


「ぐ・・・ぅ・・・!なんだ、今のは!」

「魔法だ・・・!それも、極短詠唱でこの威力・・・てめぇ、ホントに何者だ!?」

「さぁね。ホラホラ、いい加減真面目にやらないと危ないんじゃないかな?」

「ち・・・・!」

「・・・・・・。」




ヨシュアは、明らかに誘っていた。トウマの竜眼の発動を。奴の目的を考えれば当然だろう。が、トウマは悩んだ。コイツは、確かに強い。今まで戦った奴の中でもトップクラスの戦闘能力だろう。あるいは竜眼の底を見極められるかもしれない。だが、・・・その時自分にこの能力を制御しきれるのだろうか?


先程の準決勝の時。


トウマは竜眼を解き放った。ホンの一瞬ではあったが、とてつもない力がほとばしるのが解った。それでもたった数瞬、言ってしまえばまるで全力ではなかったのだ。自分には過ぎた力のように思える。実際その通りなのだろう。それを開放して、もし万が一、暴走したりでもしたら・・・。野々香や、ユイ、ムイに危険が及んだら。クレアや、この国の人間に被害がでたら。考えればネガティブな想像は止まらない。そんなリスクを犯してまで、この力を振るうべきなのだろうか?


「・・・・・俺は・・・・。」

「・・・へ。へっへっへっへっへ。ふぁーはっはっはっはっはぁ!!」


唐突に。葉山が気味の悪い笑いを漏らした。


「・・・は、葉山?」

「分かったぜ。・・・てめぇ、他国のスパイだろう?」


これまた唐突に。葉山はヨシュアをビシィ!と指差して宣言した。


「・・・!」


葉山の宣言に、ヨシュアの眉が動く。当然だ。今までの会話のどこにヨシュアの正体に感づく部分があっただろう?


「・・・ほう。どうして、そう思うんだい?」

「しらばっくれんなよ。本気を出せ、なんてよ。・・・アレが見たいんだろ?」

「!!」


今度はこっちが驚く。アレ?・・・こいつまさか、俺の竜眼を知っているのか・・・?



「本当なら極秘なんだけどな〜。仕方ないよなぁ!だってこのままじゃ負けそうだしなぁ!やっちゃうしかないよなぁ!」

「あ、いやその・・・葉山?出来ればその・・・俺の意見も・・・。」

「よし、トウマ!!」


ばしぃ!っと肩を叩く。・・・あぁ、いい笑顔だ。凄く良い笑顔だ。相手の拒否を許さない、というか拒否なんて端っから考えてない笑顔だ。


「あー、いやその。」

「下がってろ!」

「・・・ハイ?」


もう本日何度目かも忘れてしまった?マークがトウマの上に浮かぶ。


「・・・何故?」

「当然、危ないからだ!」

「いや、それだと下がってるのはお前の方じゃないのか?」

「なぁーんでだよ!いいから下がってろって!」


困惑するトウマを押しやり、ヨシュアの真正面に立つ葉山。当たり前だが、ヨシュアも困惑気味だ。


「どこで情報仕入れたのかは知らないが、大したもんだ。」

「あ〜、・・・ミスターエックス殿?僕は君には・・・。」

「だが!」


人の話など全く聞かず、葉山はマントを翻す。


「兵器部を脅し・・・じゃない、強請って俺専用に開発させた愛刀村正宗だけでは飽き足らず!まだ試作品だけど強奪してきた専用強化装甲が見たいとは不届き千万!!」


「「・・・・は?」」


余りにも予想外な展開にセリフがハモってしまった。・・・て言うかお前、もうすこし穏やかにやれんのか。


「まぁ言われたからには見せないわけにもいくまい!」


そう言って懐から勢いよく取り出したのは・・・・なんだ?黒い・・・玉?


「それが・・・どうしたと?」

「くっくっくっくっく・・・。見せてやろう!」


と、大仰なポーズを2、3回とると、その黒い玉を真上に放り投げた。そのポーズに、どことな〜く見覚えがあるなぁと思うトウマ。


「イクぜ・・・・!!」

「まさか・・・。」


そのまさかだった。


「着装!!」


その声に呼応するように黒い玉が弾け、液体のようになったかと思うと一気に葉山の全身に絡み付く。そして液体は次々と硬質可し、そのフォルムを整えていく。黒く、鋭く、強い、専用の鎧へと。


「装着・・・完了・・・!」

「「・・・・・・・・・・・。」」



そこには。



黒き鎧を身に纏い、新たに生まれ変わった葉山の姿があった・・・・!













「・・・おい。どうすんだこれ・・・・。」



理解を超えるあんまりな展開に、トウマは帰りたくなっていた。


・・・・・バトルパートって、難しいよね(切実)


なんていうか自分の表現力の無さを痛感している今日この頃。みなさんこんにちは。こめです。

名無しの物語武闘大会編もいよいよ大詰めの決勝戦です。すこしでもお楽しみいただけたでしょうか。ちなみに大会は後1〜2話で終了します。そしてそこから物語りは一気に加速・・・します。たぶん^^;

書くのが遅いので&あんま長く書ける訳でもないのでスピード感はサッパリなんですが;;

まぁとにかく。これからもチマチマと進んで参ります故、なにとぞよろしくお願い申し上げます_(._.)_


あ、アドバイス等ありましたら、ガンガンコメントください。激しく待ってます( iдi )


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