第二十九話〜武闘祭閑話2〜
「あ〜、・・・ようやく痺れがとれてきたなぁ・・・・。」
「・・・・・。」
ぶらぶらと手を振りながら隣に座っている妹の様子を伺う。準決勝を終えたトウマ達は再び観客席に戻ってきていた。決勝で戦う相手のことくらい見ておくべきだろうと思っての事ではあったのだが、
「あのー、野々香さん?」
「・・・お兄ちゃんのバカ・・・。」
「・・・むぅ・・・。」
このとおり、野々香がすっかりぶすくれてしまい、非常に居心地の悪い空間が出来上がっていた。まぁいくらワザとではないとはいえ、仮にも女の子を押し倒してしまったのだ。野々香の心境はとても計れたものではないし、ひたすらに謝り倒しても許してもらえないかもしれない。それは仕方ない。仕方ないのだが・・・。
「トウマ。お主はもっと人格者だと思っておったのだがのぅ・・・。やはり男は皆ケダモノだというのは揺ぎ無い事実のようだの。」
「あ〜〜〜も〜〜〜おーまーえーはー。火に油を注ぐ発言をするな。って言うかさっき散々説明したろ。わざとじゃないの!事故なの!わかった?ドゥーユーアンダスタン!?」
偶然にもその現場を目撃したクレアがさっきから執拗にからかってくる。説明は一通りしたし、恐らくは本人もわかっているはずである。が、やはりこの年頃の女の子にはこの手の話題は格好のエサなのだろう。
「気にするなトウマ。お主のような健全な若者であればそういう欲求が沸くのも至極当然の事。しかし幾らなんでも実の妹に欲情するのはいかがなものかと・・・。」
「聞けよ人の話を!」
「ねーねーごしゅじんさまー。よくじょーって何?」
「いいから、聞かなかったことにしなさいムイ。」
ほうっておくと周りの無関係な人間にききかねない好奇心の塊であるムイに釘を打っておく。下手すると収集が付かなくなりそうな予感がするからだ。
「むー。は〜い。」
「ん。エライエライ。ムイは良い子だな。」
素直に聞き入れてくれたムイの頭をなでなでと
「欲情というのはだな、生き物が異性に対して抱く感情の事でな。こう、ガバーっっと抱きつきたくなったり、ムラムラーとすることなのじゃ!」
「コラ!人の努力を無駄にするな!!」
即座に突っ込む。が、時既に遅し。
「ほぇ?じゃ、ボク、ごしゅじんさまによくじょーしてるの?」
「ぶ!!」
「だってボクごしゅじんさまにガバーって飛びついたりするよ?」
天然で純粋であるが故の爆弾発言。そしてその破壊力たるや言うまでもない。
『ひそひそ・・・あの人、女なら見境無いのかしら・・・』
『そういえばあの人のまわり女の子ばっかりね・・・』
『今日も一人女の子を毒牙にかけたって。ほらそこでうつむいてる子・・・!』
『女の敵ね・・・!!』
「・・・うううぅぅ・・・。」
泣きたかった。もはや噂は尾ひれ背ひれどころか一回りも二回りも大きくなって会場を駆け巡っていることだろう。力なく席に腰掛ける。
「ごしゅじんさま、どうしたの?元気ないよ?」
「あぁ・・・いや、大丈夫。なんでもないよ・・・・。」
「ご主人様・・・。元気出してください。」
「ほんとにだいじょうぶ?」
ユイとムイが心配そうにこちらを見ている。と、何を思ったのか、二人して俺の目の前までやってくると、頭を撫でてくれた。
「いーこいーこ。えへへ。」
「おわ。お、おい。ちょっと・・・。」
にこにこと笑いながら、静かに主人を気遣いながら。きっといつも自分たちが元気が出ることを実行してくれているのだろう。ああ、この子達は本当に良い子だなぁ、としみじみ思っていると。
「大丈夫です。僕たちはご主人様がどんな人になってもでもずっと付いていきますから。」
ぐさ。
トドメの一撃が無垢に放たれた。
「あ、あれ?ごしゅじんさまどうしたの?なんで泣いてるの??」
「ご主人様!?」
「あー、その、なんじゃ、そっとしておいて上げたほうがいいのぅ・・・。」
「ってお前が元凶だろぅがぁぁぁぁ!」
「・・・・・・・・てへ☆」
「てへじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
こうやってひたすらにやかましく準決勝第二試合の間を過ごしてし、言うまでもなくまともに試合を見ることも出来ずにトウマは控え室に向かうことになってしまった。
「それじゃぁ行ってくるけど・・・。」
「うん!がんばってね〜!」
「信じて待ってます。頑張ってください。」
「まぁ、最善を尽くすのじゃぞ?」
三人それぞれに応援してくれる。だが・・。
「・・・・・・。」
野々香は相変わらずだった。
「あー・・・、その。」
どうしたものかと言いよどんでいると。
「お兄ちゃん。」
「へ?」
唐突に野々香から切り出してきた。
「怪我・・・しないでね。」
「お・・・おう。」
「ふぅ・・・。大丈夫、さっきの事は許してあげるから。」
「え。いいのか?」
「良くないよ!でも、いいの。」
「む・・・分かった。アリガトな。」
「うん。行ってらっしゃい。」
「おう!行ってくる!」
大手を振って駆け出す。どういう心境の変化かはわからないが、これで試合に集中できる。
仮にも決勝だ。一筋縄ではいかないだろう。全力を尽くせるのは有難い。
「クレアさん、そろそろ戻らなくていいんですか?」
トウマをしっかりと見送ってから、野々香がそう言った。
「うむ。そうじゃな。妾はそろそろ戻る。・・・野々香よ。」
「?」
振り返ると、何故か、クレアは面白くて仕方ないような、憐れむような顔をしていて。
「お主も、大変じゃのぅ。」
「・・・ええ、まぁ。でももう慣れちゃいました。」
「そうか。・・・では、また後でな。」
ムイのまたねー、という声に答えながら一国の王女は去っていった。そう、すっかり忘れそうになっていたが、彼女は王女なのだ。この王国の。
「やっぱり・・・難しいかな・・・。」
「ののかちゃーん。どうしたの?」
「ん?・・・ううん。なんでもないよ。あ、ホラ!試合が始まるよ!」
その声にあわせたかのように起こる場内アナウンスと、大きな歓声。竜神祭大武闘大会、決勝戦が今正に始まろうとしていた。
こんにちはこんばんわおはようございます。始めましての方始めまして。お久しぶりの方本当にお久しぶりですすいませんでしたぁ!(iдi)
コメです。
えーと。うーと。・・・ここで再び再開していいのか軽く疑問すら覚える今日この頃ですが(ぇ
ひたすらに書けない状態が続き、もう書くのやめようかと結構本気で悩んでたりしましたが、再び細々とはじめることにしました。7月にメッセくれた方ありがとう&ごめんよー( iдi )メッセに2ヶ月気が付かないとか・・・orz
えー、頑張ります。とにかく頑張ります(汗)
そいではまた!^^ノシ