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名無しの物語  作者: こめ
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第十三話 外伝 その頃


「日野は・・・また欠席、か。おおい、誰か何か聞いていたりしないのか?」



担任教師が生徒たちに問いただす。だが、やはり誰も彼の欠席理由を知る者はいない。



「葉山。お前も何か聞いていないか?」

「・・・いーえ。僕が聞きたいぐらいです。」

「そうか・・・。」



そう言って、朝のホームルームが始まる。葉山はため息を吐きながら毒づいた。



「あのヤロウ、マジでどこ行きやがった。」









事の発端は昨日だった。朝学校に来てバス停のの前で待つこと数十分。これに乗っていなければ遅刻確定のバスが過ぎても、目当ての人物は現れなかった。目当ての人物とは、親友(と本人は思っている)の妹の野々香ちゃんだ。昨日久しぶりに会ったのだが、なかなかどうして。あれは絶対にいい嫁さんになる、と直感が告げた。スタイル・見た目・ひとあたり、どれをとっても平均以上。聞けば料理も上手いらしい。性格に少し難あり・・・というか、・・・一応過去の事件のことも知ってはいるので、多少のことには目をつぶるが・・・ぶっちゃけブラコンなのをどうにかすれば学園一も夢じゃない。ランキングトップも時間の問題だ。で、兄貴の親友という立場を利用して、アピールを始めようと思った矢先。



「休み・・・か?しかも二人揃って。」



後で聞いた話だと、休みます的な連絡も無かったらしい。更に今日も無断欠席。この状態が続けばあらぬ噂でも流れるんじゃなかろうか。っていうか俺が流すんだが。



「ふぅむ・・・。」



一応昨日、見舞いと称して家に行って見たんだが、鍵が閉まっていた。チャイムを鳴らしてみても反応無し。出かけているのかと思いその時はあきらめたが・・・



「これはちょっと、本格的に調べてみますかね・・・。」



この男の探究心がうずいてしまった。このことが結果として、彼の人生を捻じ曲げることになるとは、当然知る由も無かった・・・。









「ん〜。やっぱり知らない、か。」



昼休み。とりあえず同学年から何か知らないか、と聞いて回ってみたが、成果無し。昼飯の焼きそばパンを放り込み、牛乳で流し込む。とりあえず次は・・・



「一年、か。」



校舎の三階へと駆け上がる。確か妹さんのクラスはB組だったはずだ。・・・ここだ。



「お〜い、そこの君。そうそう君君。ちょ〜っといいかな?」



その辺にいた男子を呼び寄せる。



「なんすか?」

「いやいや、大した用じゃないんだけどね。日野野々香さん、ってこのクラスだよね?」

「日野?・・・あ〜はい。そうっすよ。でも今日は休んでるみたいっすけど。」

「あ〜いや、いいんだ。僕が知りたいのは、その理由でね。君、何か知らないかい?」

「は?いや・・・。知らないっすわ。あんまり話すわけでもないし。」

「そうか・・・なんでもいいんだけど。もしくは知ってそうな人とか。」

「だから知らないって言ってんじゃないすか。なんなんですか?アンタ。もしかして日野のストーカーとか?まじヤメテくださいよ気持ち悪ぃ。」



ピシィッ



あ、空気が凍った。



「ほぉう・・・。君、僕の事知らないの?一年も半分くらい終わったから、割と知られてると

思ってたんだけどなぁ。」



にっこりと、笑顔で。だが言葉の端に怒りが見え隠れする。



「はぁ?知るわけ無いじゃないですか。あ、いや。そういえば何度か教室に来てましたよね。もしかしてあれも日野のリサーチっすか?」



うわマジヤベェ、と一年が笑う。・・・彼は、気付かない。自分の目の前にいる男が何なのか。自分は虎どころかナンバーオブビーストの尻尾を踏んでいることに・・・!!!

が、そこで助け舟がやってきた。



「お、おい馬鹿!何やってんだ!」



同じ一年なのか。坊主頭の男の子がやって来た。



「おう黒田。」

「おうじゃない!お前誰に対して口聞いてると思ってんだ!!」

「誰って。このストーカー?」



ケラケラと笑う一年。対してさぁーっ、と血の気が引いていく黒田君。どうやらこのコは俺のことを知っているようだ。



「こ、この馬鹿!!この方を誰だと心得る!恐れ多くも影の生徒会長、葉山巧閣下にあらせられるぞ!!?」

「なんだよ影のって。しかも閣下て。印籠でも持ってんのかよ?」

「あ〜あいにく印籠は持ってないんだけどね。・・・こんな物なら持ってるよ?」



と言って、左の胸ポケットからすぅ・・・と黒く分厚い手帳を取り出した。それをパラパラとめくる。



「?」

「で、ででで死の手帳デス・ノート・・・!!!」



そう。葉山が取り出したのは通称死の手帳デス・ノート。といっても別に名前を書き込んだ人間が心臓麻痺で死んだりするような物騒な手帳ではない。・・・いや、ある意味それよりもタチが悪い。何より問題なのはその書き込んである内容だった。



「え〜っと。あ、あったあった。一年B組小島直人君。十二月四日生まれ。血液型はA型。○○県××市在住。家族構成は祖父・父・母・姉が二人・自分。」

「は?な、何でアンタがそんなこと」

「趣味は表向きは野球とゲーム。特に格闘物とスポーツ物が得意。人には言えないものとしては可愛い物を集めるのが好きで女の子向けのファンシーなものとかを家の押入れの上にある屋根裏部屋に隠している。そこで集めた可愛い系の物に囲まれている時間は何者にも変えがたい、と。」

「え。ええええ!!!な、なんで、」

「さ、こっから先は二人で話そうか。」



そう言って角の方へと引きずられる小島君。顔面はすでに蒼白だ。が、角に行ったとたん顔面が本当に白くなり、髪の毛、服へと伝播していく。最終的にはどこぞのボクサーよろしく、真っ白に燃え尽きた状態で保健室へと運ばれていった。ちなみに彼はうわ言のように「終わった・・・何もかも終わった・・・。」と繰り返していたらしい。

そう、死の手帳と呼ばれるこの手帳には、葉山があらゆる手を尽くして調べた、様々な個人情報や学校の機密情報など、ありとあらゆる情報が記されている。このおかげで校長でさえも葉山には頭が上がらないらしい。裏では「情報王葉山」とか「死神の力を持つ男」とか「敵にしたら恐ろしい、味方にしても厄介な世紀末覇者」などと呼ばれているらしい。











「ふぅ。結局手がかりゼロか。」



その後も色々聞いてみたものの(皆やけに協力的だった)、結局誰一人欠席の理由を知る者はいなかった。



「こうなったらやっぱり・・・。」



直接乗り込む。それしかなさそうだった。










午後八時過ぎ。最後に目撃された商店街のはずれの骨董屋で話を聞いていたため、少々遅くなってしまった。バスの運転手にも話を聞いた。あの二人は俺と会った日は、少なくとも帰りのバスには乗っていた。それは間違いない。



「なら、一直線に家に帰るはずだ・・・。」



バス停から家まで、コンビニすらない。まず間違いなく家に帰るはずなのだ。・・・とりあえず、チャイムを押してみる。・・・・・・反応ナシ。



「ちっ。どっか、開いてないか?」



どこか窓が開いたりしないか探す。と、・・・開いた。換気用の小さな窓だ。が、入れないことは無い。



「失礼しま〜す。」



一応断って入る。何度か来たことがあるからなんとなく間取りは分かるが・・・暗いと少し薄気味悪かった。



しばらく手がかりは無いかと探していると、ある異変に気が付いた。



「・・・?二階が、明るい・・・?」



外から見たときは明るい物なんて無かったのに。神経を尖らせながら、二階へと上っていく。






「Nonoka’s room」というネームプレートがある部屋の前までやって来た。光源は間違いなくここだ。意を決して、ドアを開け放つ!





「なんだよ・・・これ・・・。」



そこには、摩訶不思議な空間が広がっていた。窓の間から差し込む月の光。そしてそれに照らされて光る、黒い布地に描かれた魔法陣。



「・・・・・・。」



葉山は、知らず、手を伸ばしていた。その輝く魔法陣が、あまりにも美しかったから。本来いるべき人間がここにおらず、本来あるべきではない物がここにある。それがつまりどういうことか、彼が冷静であれば気付けたはずなのに。






                   バチッ






魔法陣が、発動する。



どうも。こめです。今回は本編はちょっとお休みして、外伝〜その頃葉山君は〜をお送りいたしました。もちろん彼もこの後話にかかわってきます。ていうか登場する頃にはえらいことになってるかもです。彼が登場するのはまだ先なので、葉山君が気に入った!と言う方は気長に待ってやってくださいです。

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