表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名無しの物語  作者: こめ
1/34

第1話 日常

まだ日も昇りきっていない早朝。薄暗い建物の中で一人、自己鍛錬に励む男がいた。



「ふっ・・・・・・・・ぬっ・・・・・・・・んっ・・・・・・。」



彼が今やっている事、それは俗にけんすい、と呼ばれるトレーニングだった。自分より高いところにある柱に捕まり、持ち上げてはおろす。単純な作業だが連続でやり続けると中々につらい。



「くっ・・・・・・・・とっ・・・・・・・・せいっ・・・・・・・。」



ちなみに彼は数を数えていない。自己の限界だと思われるところまでひたすらに繰り返すのだ。

彼の比較まじめな性格もあいまって、少しづつではあるが限界は伸びてきている。はじめた当初は二十秒と続かなかったが、今では十五分近く続けられるようになっていた。


彼の名は日野トウマ。市内にある高校の三年生で、二つ年下の妹と二人暮しで生活している。彼の両親は八年ほど前事故で他界してしまっていた。以来祖父の家に預けられていたのだが、その祖父も三年前に老衰で亡くなってしまった。祖父は結構な資産家だったらしく、彼は普段の生活からはとても考えられない額に、本気で面食らっていた。同時に、祖父に対しもう一度深く感謝していた。


「ぐっ・・・・・・・・だぁ、っと。今日はこの辺にしとくか。いい加減、空も白んできたしなぁ。」


そう言って、柱から手を離す。そろそろ朝食の準備をしなければならない。普段掃除洗濯食事等は妹がこなし、彼は手伝う程度なのだが、こと朝に関しては彼に一任されていた。と言うのも、彼女は朝はまともに活動する事が出来ないのである。すさまじいほどに寝起きが悪いのだ。一時期は彼女を起こすのにフライパンとお玉を使うべきかと、本気で悩んだ程である。

台所へ行く前に風呂場に向かい、軽く汗を流す。それから朝食の準備へと取り掛かる。作るものはといえば、トーストと目玉焼き、サラダと夕食の残りのコーンスープと非常にシンプルな物ではあるが。


慣れた手つきで朝食を作ってゆく。時計を見れば六時まで後十五分、というところであった。彼らの朝は早い。と言うのも、この家は山の中腹に建てられているため、最低でも六時半には家を出なければ学校に間に合う交通機関が無いのである。


「うし。それじゃあ最大の難関の攻略に向かいますかね。」


朝食を一通り作り終え、二階へと向かう。そして「Nonoka’s room」と書かれた部屋の前へとやって来た。扉をノックする。


「お〜い。野々香〜、朝だぞ〜。」


返事はナシ。無論このぐらいいつもの事だ。ドアノブをひねり中に入る。すると案の定、妹は幸せそうな顔で眠っていた。体をゆすってみる。


「おいこら野々香。朝だぞ。遅刻しちまうぞ。」


無反応。いや、「む〜。」とかうなりながら、寝返りをうってしまった。


「ぬ。・・・あんまり時間もないしなぁ・・・。」


こうなれば強行手段。掛け布団を力ずくでひっぺがした。


「ひあぁっ!・・・・・・・・・くー。」

「・・・・・・・だめか。」


時折寒そうに身じろぎしているが、起きる気配はない。少し前まではこれで起きていたのだが、すっかり対性がついてしまったらしい。その後も頬をぺちぺちとたたいたり、がくがくとゆすったりしたものの、効果なし。それどころかうるさそうに手で払おうとする始末である。時計を見れば時刻は六時。もう本気で時間が無い。


「しかたない。怒るからこれはあんまりやりたくないんだがなぁ・・・」


と、人差し指をたてると、ぶすっ、と野々香のわき腹を突いた。


「ひゃぐぅ!?っっっ〜〜〜っつ。」

「お、起きた起きた。おはよう、野々香。」

「うぅ〜、おはようじゃないよ!!わき腹を突くのはやめてってあれほど・・・」

「はいストップ。とりあえず本気で時間が無い。恨み言は後で聞いてやるから、早く着替えてくれ。」


そう言って部屋を出る。部屋からはキャー、と言う悲鳴と、慌ただしく準備をはじめる音が聞こえてくる。彼もさっさと着替えて朝食をいただく事にした。



「野々香、早くしろって。」

「ああ、お兄ちゃん、もうちょっと待ってよ!」

「俺は待ってるけど、バスは待ってくれんぞ。」


「ごめん、おまたせ!」

「よし、急ごう。後十分も無い。」

駆け出す二人。学校に向かうバスのバス停まで、トウマ一人なら走って五分。正直、微妙なところである。


「ほれ、急げ急げ!」

「お兄ちゃん、速いよー!」


バタバタと走っていく。結果バスの時間には間に合わなかったが、なじみの運転手さんは二人のことを待っていてくれた。






・・・これが日野家のいつもの朝の風景。兄妹二人暮しは決して楽しい事ばかりではないが、それでも十分楽しい毎日。明日も明後日もずっと続く。・・・が、彼らの毎日が決定的に変わる瞬間は、少しづつ少しづつ、だが確実にせまってきていた・・・。


どうもはじめまして。こめと申します。米じゃありませんのであしからず(笑)。

なにぶん初めてなのでつたない文章だっつたとは思いますが、読んでいただいてありがとうございます。

これから頑張って楽しんで頂けるものを書いていこうと思いますので、ご意見、ご感想などを(作者がヘコまない程度にw)よろしくおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ